イギリスのストーンヘンジには、置かれた石の数だけ謎がある。
グレートブリテン島南西部のイングランドに建つこの遺跡の中央には、6トンの祭壇石が横たわっている。
ところがこの石、はるか700km以上も離れた同じ島の北東部、スコットランドの産であることがわかっている。
問題は、車輪も家畜もなかった5000年前に、どうやってこの巨石を島の北から南まで運んだのかだ。
これまで様々な説が出ていたが、今回、オーストラリアのカーティン大学を中心とする研究チームが新説を打ち出した。
自然の氷河と人間の合わせ技で運搬したというものだ。
この研究成果は『Journal of Quaternary Science[https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jqs.70080]』誌(2026年6月公開)に掲載された。
祭壇石は氷河が運んだものなのか?
ストーンヘンジはグレートブリテン島南西部、イングランドのソールズベリー平原に建つ世界文化遺産で、建設が始まったのはおよそ5000年前とされる。
中央にある祭壇石は青みがかった砂岩で、過去の地質分析によってスコットランド北東部のオルカディアン盆地が起源だとわかっていた。
これほど重い石がどうやって700km以上もの距離を移動したのか。これまで、自然に氷河が運んだという説と、人が運んだという説が長く議論されてきた。
オーストラリア・カーティン大学地球惑星科学部のアンソニー・クラーク博士らの研究チームは、これら2つの説の検証を行った。
まずは、石に含まれる鉱物粒子の年代測定と、過去の氷河の動きを再現する氷床モデリングを組み合わせることで、氷河が祭壇石を南へ運べたのかどうかを確かめていった。
氷河が運べたのは北海の途中まで
モデリングの結果、氷河には限界があることがはっきりした。
クラーク博士によれば、最終氷期のあいだに氷河が岩を運べた可能性があるのは、北海にあるドガーバンクあたりまでで、南イングランドまでは届かなかった。
ドガーバンクは今でこそ北海の海底に沈んでいるが、氷期にはブリテン島と大陸ヨーロッパをつないでいた広大な陸地ドガーランドの一部だった。
研究チームは、起源となったスコットランドの地域とストーンヘンジを直接つなぐ氷河の経路は存在しなかったと結論づけている。
つまり氷河は旅の前半を担えても、ゴールまでは運べない。残りの数百kmは、人の手で動かすしかなかったことになる。
氷河で運ばれた後、残り数百kmは新石器時代の人々が運搬
クラーク博士は、祭壇石が一度に運ばれたのではなく、段階的に動かされた可能性を指摘する。
可能な場所では陸路で曳き、川や海岸沿いでは水運を使う。区間ごとに手段を変えながら、巨石は少しずつ南へ進んだとみられる。
氷河という自然の走者が前半区間を走り、人間という走者が後半区間を走るリレーのようなものだ。
これを成し遂げるには、各地に暮らす新石器時代の人々の計画と連携、そして地形への深い理解が欠かせなかった。
クラーク博士は、これほどの石をこれほど遠くへ運ぶには、並外れた決意も必要だったはずだと語る。
今回の成果は、新石器時代の社会がこれまで考えられてきた以上に高い組織力と協力の仕組みを持っていたことを示している。
まとめ
この研究でわかったこと
- 6トンの祭壇石は700km離れたスコットランド北東部から運ばれた
- 氷河は北海のドガーバンク付近までしか石を運べなかった
- 石の産地からストーンヘンジを直接つなぐ氷河の経路はなかった
- 残りの数百kmは新石器時代の人々が陸路と水路で運んだとみられる
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References: doi.org/10.1002/jqs.70080Digital Object Identifier (DOI)[https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jqs.70080] / Study details epic transportation of Stonehenge stone across ancient Britain | EurekAlert![https://www.eurekalert.org/news-releases/1130656]











