恒星間天体3I/ATLASは太陽系で観測された最古の天体かもしれない
3I/ATLASの想像図 Image credit: NSF/AUI/NSF NRAO/M.Weiss

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 宇宙の彼方から太陽系にやってきた恒星間天体「3I/ATLAS」は、太陽系で観測された中で最古の天体かもしれない。

 太陽系そのものよりも3倍も古く、最大120億年前に生まれた天体である可能性がNASAの研究チームによって明らかになった。

 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が検出した3I/ATLASの重水素と炭素の同位体比は、太陽系のどの天体とも異なる異質な化学組成を示していた。

 太陽も地球もまだ存在しなかった時代に生まれ、銀河を旅し続けている3I/ATLASは、2026年6月28日現在、木星軌道を越えて土星軌道へ向かって移動中だ。

 この研究成果は『Nature[https://www.nature.com/articles/s41586-026-10771-6]』誌(2026年6月22日付)に掲載された。

観測史上3例目の恒星間天体 3I/ATLAS

 2025年7月1日、チリにある観測システム「ATLAS(小惑星地球衝突最終警報システム)」が、太陽系の外から猛スピードで飛んできた天体を発見した。

 恒星間天体「3I/ATLAS」は、2017年発見のオウムアムア、2019年発見のボリソフ彗星に続く、観測史上3例目の恒星間天体だ。 

 3I/ATLASは秒速約60kmという猛烈なスピードで太陽系内を駆け抜け、2025年10月に太陽に最接近した後、現在も太陽系の外へ向かって移動を続けている。

 2026年6月28日現在、木星軌道を越えて土星軌道へ向かって移動中で、現在位置はNASA「Eyes on the Solar System[https://eyes.nasa.gov/apps/solar-system/#/c_2025_n1]」でリアルタイムに確認できる。

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 3I/ATLASは2026年7月に土星軌道を、2027年4月に天王星軌道を、2028年頃に海王星軌道を通過する予定で、その後オールトの雲を抜けて恒星間空間へと去っていくとみられている。

 NASAもESAも公式に「彗星」と分類しているが、従来の彗星にはない特徴を数多く持ち合わせており、現在も世界中の天文ファンや研究者の興味を引き続けている。

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重水素と炭素が示した異質な素性

 3I/ATLASが太陽のそばを通り過ぎた後の2025年12月、NASAゴダード宇宙飛行センターのマーティン・コーディナー博士率いる研究チームが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のNIRSpec(近赤外線分光器)を使って3I/ATLASの化学組成を詳細に分析した。

 3I/ATLASに含まれる重水素の量は太陽系の彗星と比べて10倍以上多かった。

 重水素とは通常の水素より重い水素の一種で、重水素が多い水を重水と呼ぶ。コーディナー博士はその高い重水素の存在量について、天体化学の理解によると非常に冷たい環境でしか生じえないと説明した。

 チリのアルマ望遠鏡(ALMA)との共同観測では、炭素の同位体比も分析した。

 同位体とは同じ元素でも中性子の数が異なる原子のことで、炭素には軽い炭素12と重い炭素13がある。

 3I/ATLASでは炭素13が極めて少なく、研究チームはこれらの測定値が太陽系のいかなる天体とも異なる元素組成を示していると述べた。

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太陽系の3倍古い120億年前の天体の可能性

 重水素が多いということは、3I/ATLASが非常に冷たい環境で形成されたことを示す。同位体の証拠は形成環境の温度が-243℃という極寒だったことを示唆している。

 炭素13は星が生まれては死ぬを繰り返すことで宇宙に少しずつ蓄積されていく。

 約45億年前に形成された私たちの太陽系では炭素13が比較的多いが、3I/ATLASでは極めて少ない。3I/ATLASが、まだ宇宙に炭素13が少なかった非常に古い時代に形成されたことを意味する。

 研究チームはこれらの証拠から、3I/ATLASが最大120億年前に形成された可能性があるという。

 太陽系の年齢が約45億年であることを考えると、その約3倍に相当する。

 コーディナー博士は、もしかすると3I/ATLASは太陽系内で観測された最古の天体かもしれないと語った。

 3I/ATLASが生まれたのは、約100億年前に宇宙で星の形成が最も活発だった「宇宙の正午」と呼ばれる時代だった可能性がある。

 地球も太陽もまだ生まれていなかったその時代に誕生し、どの恒星にも縛られることなく数十億年にわたって銀河を旅し続け、太陽系にたどり着いたとみられている。

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恒星間天体研究は始まったばかり

 今回の研究が可能になったのは、3I/ATLASが過去の恒星間天体より明るかったからだ。

 オウムアムアもボリソフ彗星も、同位体比を分析できるほどの明るさを持っていなかった。

 3I/ATLASはすでに太陽系の外へ向かっており、観測の機会は残り少ない。

 国際天文学連合の小惑星センターでこの彗星の同定に関わったペーター・ヴェレシュ氏は、彗星は今太陽系を去りつつあり二度と戻らないため今後の観測はますます困難になると語った。

 天文学者たちは今後さらに多くの恒星間天体が発見されると期待している。

 チリに建設中の大型望遠鏡「ルービン天文台(Vera C. Rubin Observatory)」が稼働すれば、同様の天体が次々と見つかる可能性がある。

 コーディナー博士は、これは刺激的な新分野の始まりにすぎないと語り、恒星間天体の研究が銀河の歴史や生命の起源の解明につながる可能性を示した。

References: DOI: 10.1038/s41586-026-10771-6[https://www.nature.com/articles/s41586-026-10771-6] / NASA’s Webb Finds Clues to Ancient, Distant Origin of Comet 3I/ATLAS - NASA Science[https://science.nasa.gov/missions/webb/nasas-webb-finds-clues-to-ancient-distant-origin-of-comet-3i-atlas/]

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