頭だけが透明で中身がぱっくり透けて見える魅惑の深海魚「デメニギス」をカラパイアで初めて紹介したのは2009年。新たな情報が出るたびに追いかけ続けてきたが、ついに別種が登場だ。
実はデメニギスの仲間は十数種も確認されている。
そのうち標本でしか知られていなかったクロデメニギスの生きた姿を、アメリカのシュミット海洋研究所が大西洋の深海、水深710mで初めて撮影することに成功した。
私たちの知っているデメニギスとどこがどう違うのか?じっくりと吟味していこう。
デメニギスは1種ではない。実は十数種の仲間がいる
一度見たら忘れられない、中身が完全に透けて見える頭の中に、2つの大きな球体が浮かんでいるように見えるのが特徴の深海魚デメニギス。
実はデメニギスは「デメニギス科(Opisthoproctidae)」というグループの総称で、これまでに十数種が確認されている(資料によって数が異なり、19種[https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0159762]とも21種[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%A1%E3%83%8B%E3%82%AE%E3%82%B9%E7%A7%91]とも言われている)。
これまでカラパイアで紹介していたデメニギスは、Macropinna microstoma(マクロピンナ・ミクロストマ)と呼ばれる種だ。
今回撮影されたのは、デメニギス科の1種であるクロデメニギス(Winteria telescopa:ウィンテリア・テレスコパ)だ。
標本としては古くから知られていたものの、深海で生きて泳ぐ姿はこれまで一度も撮影されたことがなかった。
大西洋の深海調査でクロデメニギスの泳ぐ姿の撮影に成功
アメリカのシュミット海洋研究所(SOI)による深海探査チームは、調査船「ファルコー・トゥー(Falkor (too))」に乗り込み、35日間かけて大西洋の深海を調べた。
チームが探査したのは、ブラジル北東の沖合およそ1,290km(800マイル)に広がる「ドルドラムス断裂帯」だ。
断裂帯とは、地球の表面をおおうプレートがずれてできた、海底の巨大な裂け目のある場所である。
ドルドラムス断裂帯は世界最長の海底山脈である大西洋中央海嶺を横切っていて、地形の変化が激しいうえに人がなかなか近づけない深海にあるため、詳しい姿はほとんど分かっていなかった。
チームは、遠隔操作で動かす無人探査機「スバスティアン(SuBastian)」と、自律して動く新型の無人探査機「ザ・チャイルドライク・エンプレス(The Childlike Empress)」を使って海底をくわしく調べた。
水深710m付近を探っていたとき、透明な頭を持つクロデメニギスがカメラの前に現れたのだ。
おなじみのデメニギスと、どこが違うのか
クロデメニギスは、デメニギス(Macropinna microstoma)とよく似ているが、いくつかの違いがある。
共通点は、望遠鏡のように筒状に発達した眼「管状眼」を持つことだ。
管状眼の先には大きなレンズ(水晶体)があり、外から目立って見えるのはこのレンズの部分だ。
この目は、わずかな光しか届かない深海で、上方から差し込む光や頭上を通る生き物が放つ光をとらえ、獲物の姿を見分けることができる。
体の大きさもよく似ていて、デメニギスもクロデメニギスも最大で15cmほど。
いっぽうで違いもある。
まず目の向きだ。デメニギスはふだん黄緑色のレンズ(水晶体)を真上に向けて、上を通る獲物の影をとらえる。
クロデメニギスの目は、仲間の中では珍しくやや前方を向いている。また、レンズの色も黒っぽい。
ただし、どちらも目を回転させて向きを変えられる点は同じで、この性質を持つのはデメニギスの仲間の中でこの2種だけだ。
生息する海も違う。
デメニギスは太平洋の北部、日本では岩手県より北の冷たい海の水深400~800mに分布する。
クロデメニギスは大西洋やインド洋、太平洋と世界中の海に広く分布し、水深は400~2,500mにおよぶ。
デメニギスやクロデメニギスの透明なぱっくり透けて見える頭は、とても壊れやすく、網でとらえて海面まで引き上げると途中でつぶれてしまう。
傷つけずに深海で観察して初めて、前を向いた筒状の目や透明なドームが生きた状態でどう働いているのかを確かめることができる。
そのため、今回クロデメニギスの生きた姿をとらえることができたのは大きな成果となった。
他にも深海のユニークな生物との出会いが続出
今回の探査の本来の目的は、ドルドラムス断裂帯の海底地形や、熱水がわき出す場所の調査だった。
チームは水深およそ4,000mの海底で、これまで知られていなかった熱水の噴き出し口を2カ所見つけている。
深海探査では、ほかにも珍しい生き物との出会いがあった。
水深3,634mでは、糸のように細長い触手を持つミズヒキイカ属に2度遭遇している。触手は最長で8mにもなり、世界でもっとも深い場所にすむイカとして知られている。
他のユニークな生物たちは以下の動画で見ることができる。
深海は多くの謎に包まれていて、宇宙に匹敵するほど未知の世界が残されている。
今回初めて撮影されたクロデメニギスは、存在こそ確認されていたものの、人知れず暗い海を泳ぎ続けてきた魚だ。
探査チームを率いたモントレー湾水族館研究所のアーロン・ミカレフ氏は、何十年も研究されてきた大西洋ですら、探査するたびに新たな発見があると語っている。
References: The Doldrums Fracture Zone is Anything but Dull - Schmidt Ocean Institute[https://schmidtocean.org/the-doldrums-fracture-zone-is-anything-but-dull/]











