探査機「はやぶさ2」が小惑星「トリフネ」にフライバイ、がれきが集まってできた可能性
<a target="_blank" href="https://commons.wikimedia.org/wiki/File:%E3%81%AF%E3%82%84%E3%81%B6%E3%81%952.jpg">Go Miyazaki</a>, <a target="_blank" href="https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0">CC BY-SA 4.0</a>, via Wikimedia Commons

探査機「はやぶさ2」が小惑星「トリフネ」にフライバイ、がれき...の画像はこちら >>

 日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が、2026年7月5日、小惑星「トリフネ」のフライバイ観測に成功した。

 はっきりと捉えられた「トリフネ」は、くびれのあるピーナッツ型の形状をしており、2つの天体が合体してできた「コンタクトバイナリー」の可能性が浮上した。

 また、その構造は巨大で強固な一個の岩ではなく、宇宙のがれきが集まってできた「ラブルパイル」である可能性も示唆された。

 そして今も「はやぶさ2」は、2031年に到達予定の最終目的地「1998 KY26」に向け、孤独な旅を続けている。 

「トリフネ」の内部はがれきの寄せ集めだった?

 JAXAがはやぶさ2のミッション成功を公表した翌日の7月6日、Xに投稿された1本の映像が話題を呼んだ。

 投稿したのは、アマチュア天文学者のトニー・ダン氏。彼は「トリフネを地球に持ってきたらどうなるのか」という発想を、シミュレーション映像にしてしまったのだ。

小惑星「トリフネ」が、日本の探査機「はやぶさ2」によって撮影されました。この小惑星は「ラブルパイル(瓦礫の山)」です。もしこれを駐車場の真ん中にそっと置いたら、こんな感じになるかもしれません

 その映像がこちらである。

[画像を見る]

 ここでいう「ラブルパイル」とは、巨大な一枚岩ではなく、多数の岩石や砂礫が主に自らの重力で集まってできた天体構造を指す。

 初代「はやぶさ」が探査したイトカワや、「はやぶさ2」が試料を持ち帰ったリュウグウは、いずれもラブルパイル構造を持つ小惑星と考えられている。

 ただし、ここではっきりしておきたいのは、「トリフネ」の構成が本当にこんな「ラブルパイル」なのか、実際にはまだ判明していないということだ。

 ミッション成功後の説明会で、「はやぶさ2」のミッションマネージャを務める吉川真博士は、「トリフネ」の印象について確かにこう話していた。

本当に見た目なんですけど、パッと見て、表面の様子が「イトカワ」に近いなと思いました。



表面にたくさん岩が見えますので、「ラブルパイル構造」、つまりがれきの寄せ集め構造になっているんじゃないかという気がします。ですが、これにはもっと詳しい研究が必要です

 今後の研究次第では、「トリフネ」も「ラブルパイル構造」の小惑星ということが判明するかもしれないが、今の段階ではまだ何とも言えないのだ。

 動画を投稿したダン氏自身も、コメントの中でこう付け加えている。

このAI動画を事実だと思わないでください。説明文を入力して作った、あくまで私の想像によるものです。しかもAIは、本来の25%ほどの大きさで作ってしまいました。

それにしても、この天体はどうやって自分の形を維持するために十分な重力を保っているのでしょう

拡張ミッションに挑む「はやぶさ2」

 2014年12月3日、「はやぶさ2」はH-IIAロケット26号機で、種子島宇宙センターから打ち上げられた。

 2018年6月に小惑星リュウグウに到着し、2019年には複数回の試料採取と、世界初となる「小天体表面への人工クレーター形成」といったミッションをクリア。

 そして2020年12月6日、「はやぶさ2」は長い旅を終えて地球に戻り、リュウグウの試料を収めたカプセルを無事届けることに成功したのだ。

 だが、その後もはやぶさ2の旅は続く。カプセルを射出した後、探査機本体は地球を離れ、そのまま拡張ミッションへ移行することになった。

 拡張ミッションの最終目的地は、小惑星「1998 KY26」である。「はやぶさ2」は2027年と2028年に地球でのスイングバイを行った後、2031年に「1998 KY26」へ到着し、世界初となる超小型・高速自転小惑星へのランデブー探査を目指している。

 今回、フライバイ観測が行われた「トリフネ」は、その旅の途中で探査できる天体として選ばれたものだ。

 下は「はやぶさ2」の拡張ミッションを説明したもの。

[画像を見る]

想定外のフライバイ観測ミッションが大成功

 さて、この「はやぶさ2」による「トリフネ」へのフライバイ観測の成功で、いったいどんな成果が得られたのだろうか。

 まず、最大の成果はこのフライバイの成功そのものである。もともと「はやぶさ2」は、リュウグウへのミッションが終われば任務終了となるはずだった。

 上の動画にもあるように、本来は小惑星へのランデブー探査用に設計された探査機であり、高速フライバイは想定されていなかったのだ。

 宇宙探査における「フライバイ(近接通過)」とは、探査機が天体に衝突したり周回軌道に入ったりせず、そのすぐ近くを通過しながら観測を行う飛行のこと。

 スピードを落としたり、天体の周りを周回したりする必要がないため、限られた燃料で複数の天体を観測するのに向いた方法である。

 フライバイ時の「トリフネ」と「はやぶさ2」との相対速度は、秒速で約5.3km。「トリフネ」の直径は約500mしかなく、ほんの一瞬で通り過ぎてしまった。

 それでも「はやぶさ2」はLiDAR(レーザー高度計)やONC-T(光学航法望遠カメラ)などを駆使し、「トリフネ」の観測データ取得に成功したのだ。

 こちらはフライバイ成功を喜ぶJAXAの面々。本当にうれしそうである。

[動画を見る]

「トリフネ」は2つの天体が合体してできていた?

 今回、近距離から「トリフネ」を観測できたことで、その形状や表面の様子を目で直接観察することができた。

 特にその形状に関しては、2つの天体が接触して一体化した「コンタクトバイナリー」である可能性が高いことがわかった。

 画像でははっきりとしたくびれが見えており、どうやら「トリフネ」は2つの天体がくっついてから、まだそれほど時間が経っていない状態らしい。

 そのうちにこのくびれ部分に岩石などが溜まっていき、初代「はやぶさ」が観測した、「イトカワ」に似た形状になるのではないかと推測されている。

 実は小惑星のコンタクトバイナリーは意外とよく見られるようで、こうした知見は、小惑星全体の形成や進化を理解する上でも、重要な手がかりとなりそうだ。

[画像を見る]

接近する小惑星を把握することが地球防衛につながる

 今回の「はやぶさ2」の成果は、将来の「プラネタリーディフェンス(地球防衛)」にもつながるものとして期待されている。

 プラネタリーディフェンスとは、地球へ衝突する恐れのある小惑星を発見し、必要に応じて軌道を変えるなどして被害を防ぐ取り組みである。

 実は小さな天体が地球のすぐそばを通過するのは、決して珍しいことではない。2025年10月、国際宇宙ステーションよりも近い場所を小惑星が通過したらしい。

[動画を見る]

 こうした天体は「地球近傍天体(NEO:Near Earth Object)」と呼ばれており、現在確認されているだけで約4万3000個もあるという。

 NEOの大半は危険のない軌道を回っているが、一部は地球の軌道に接近し、ニアミスを起こす可能性もゼロではない。

 2026年5月10日、アリゾナ州の天文台が、未知の小惑星を発見した。「2026 JH2[https://ja.wikipedia.org/wiki/2026_JH2]」と命名されたこの天体は、発見からわずか8日後に地球に最接近。

 日本時間の5月19日朝、なんとこの天体は、地球と月の距離の4分の1にあたる場所を通過していったのだ。

[動画を見る]

 2026年6月27日にも、「1997 NC1[https://ja.wikipedia.org/wiki/(152637)_1997_NC1]」という小惑星が、月の軌道の約7倍の距離にあたる約250万kmの距離を通過していったらしい。

 これは最大で直径が約1.6kmと推定されるかなり大きな天体であり、万一地球に衝突した場合、衝突地点周辺が壊滅するだけでなく、地球規模で気候に影響が及ぶ可能性もあった。

 NASAやJAXAをはじめとする各国の宇宙機関や天文台は、こうした天体を早期に発見し、軌道を正確に把握するための監視を続けているのである。

 現在、「はやぶさ2」は2031年の「1998 KY26」到達を目指し、さらなる旅を続けている。その旅路はJAXAチーム[https://x.com/haya2_jaxa]や「はやぶさ2」自身[https://x.com/haya2kun]のXなどで、逐次共有されているので、興味のある人はフォローしておこう。

 なお、少々長いがJAXAによる説明会の映像も公開されている。今回の快挙についてもっと知りたいという人は、ぜひこちらも見てみてほしい。

[動画を見る]

References: JAXA[https://www.jaxa.jp/press/2026/07/20260706-3_j.html]

編集部おすすめ