恐竜を絶滅させた小惑星、衝突時に発生した熱が地上を焼き尽くしていた可能性
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 恐竜を絶滅させたのは、小惑星衝突そのものではなかった可能性がある。

 6600万年前、直径10kmほどの小惑星がメキシコのユカタン半島に衝突すると、地表から噴き上がった岩の粒が地球を取り巻き、やがて一斉に落ちてきた。

 落ちてくる粒が上空で強い熱を放ち、その熱を細かな塵がふさいだため、地上には人間が一瞬で焼け死ぬほどの高熱が降りそそいだ。

 アメリカのパデュー大学の研究チームによると、隠れる場所を持たなかった恐竜たちは、逃げる間もなく1~2時間で息絶えたという。

 この研究成果は学術誌『JGR Biogeosciences[https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2026JG009837]』(7月28日付)に掲載された。

恐竜が滅亡した本当の理由は熱かもしれない

 恐竜が滅びた理由についてはこれまでいくつもの説が唱えられてきた。

 最も広く語られてきたのは、衝突で舞い上がった煤や塵が太陽の光をさえぎり、何年も続く寒い冬が地球を覆ったという説だ。

 ベルギー王立天文台などの研究チームが2023年に発表[https://www.nature.com/articles/s41561-023-01290-4]したシミュレーションでは、細かな塵が最長15年も大気に残り、地表の気温を最大15℃下げ、2年近く光合成を止めたという結果が出ている。

 植物が育たなくなって草食恐竜が飢え、肉食恐竜も後を追うように消えていったとされる。

 だが今回、アメリカのパデュー大学の研究チームは2026年7月28日、恐竜を殺したのは寒さではなく熱だったとする研究結果を報告した。 

地球を取り巻いた岩の粒が空を熱源に変えた

 6600万年前、直径10kmほどの小惑星がメキシコのユカタン半島に衝突し、1000km³を超える地表の岩を一瞬で蒸発させた。

 気体になった岩は上空へ噴き上がり、冷えながら0.25mmほどの小さなガラスの粒に固まった。

 粒は大気の外まで届いて地球をぐるりと取り巻き、やがて秒速数kmという猛烈な速さで各地の空へ落ちてきた。

 落ちてくる粒は空気とぶつかって減速し、摩擦で高温になった。流れ星が燃えるのと同じ現象が、地球中の空で一斉に起きたことになる。

 高温になった無数の粒が上空を埋め尽くし、地上に向かって強い赤外線を放った。

 恐竜を焼いたのは、粒が体に当たったからではなく、空一面が巨大な熱源に変わったからだった。

 これまでの計算では、地上はオーブンの上火であぶられる程度で、皮の薄い動物には危険でも、植物に火をつけるほどの強さはないとされていた。

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細かな塵が熱のふたになっていた

 これまでの研究は、蒸発した岩の行方を最後まで追っていなかった。

 気体になった岩のすべてが粒に固まったわけではない。固まりきらずに残った分は、赤血球ほどの大きさしかない細かな塵となって、上空にとどまり続けた。

 寒い冬を招いたとされてきた塵が、その前に何をしていたのかを、パデュー大学の惑星科学者ブランドン・ジョンソン氏は調べ直した。

 上空をおおった塵の層は、鍋のふたと同じはたらきをした。粒が放った熱が宇宙へ逃げるのをさえぎり、行き場を失った熱を地上へ押し返したのである。

人間が焼け死ぬ強さの17倍の熱が降りそそいだ

 塵を計算に入れると、地上が受けた熱の強さはこれまでの3.5倍になった。

 火災の安全を調べる分野では、1m²あたり10kWの熱を150秒浴び続けると人間は全員死ぬとされている。白亜紀末の地上に降りそそいだ熱は、その17倍の強さだった。

 熱は太い木の幹に火をつけるほどではなかったが、草や松葉、岩に張りついた地衣類が燃え出す温度は軽く超えていた。

 乾いた植物が一斉に燃え上がり、火はやがて大きな山火事へ広がっていった。

 「最初の1~2時間で、ほぼすべてを死なせてしまう領域に入っています」とジョンソン氏は述べた。

 身を隠す場所を持たない恐竜たちは、逃げる間もなく焼かれて息絶えたことになる。

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生き延びたのは身を隠せた動物だけだった

 衝突直後の高温地獄の中、生き延びることができたのは身を隠せた動物だけだった。熱をさえぎることができれば助かったのだ。

 土に潜っていた小さな哺乳類や、水の中にいた動物は、最初の1~2時間をやり過ごすことができた。

 恐竜のなかにも、生き残ることができたものがいる。のちに鳥へとつながるグループは生き残ることができた。

 このグループには、穴に巣を作る種と水に潜る種がいたからだ。

 研究チームは、隠れる手段を持っていたグループだけが生き残ったのは偶然ではないと指摘する。ほかの恐竜たちは身を隠す方法を持たず、そのまま全滅した。

 地上を焼いた塵は、そのあと役割を変えた。

 何年にもわたって太陽の光をさえぎり、恐竜絶滅の原因として長く語られてきた寒い冬を引き起こしたのである。

 ジョンソン氏は、熱い飲み物も冷たい飲み物も同じように保つ魔法瓶にたとえている。

塵は次に熱を閉じ込め、更に光を閉め出した。

 この説を裏づける痕跡は、今のところ北アメリカでしか見つかっていない。

 研究に加わっていないロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの古生物学者アルフィオ・アレッサンドロ・キアレンツァ氏は、世界中で火事が起きた記録がいずれ見つかる可能性はあるが、現時点ではまだないと話している。

 恐竜が長い冬を待たずに息絶えたのかどうかは、今後の発見で明らかになることだろう。

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References: Chicxulub impact dust set the dinosaurs’ world on fire - AGU Newsroom[https://news.agu.org/press-release/chicxulub-impact-dust-set-the-dinosaurs-world-on-fire/]

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