人間は他の動物を愛おしく思い、ペットとして飼うこともある。他の動物に対するこの思いはサルにも備わっていたようだ。
オックスフォード大学を中心とする国際研究チームが世界中から記録を集めたところ、サルが種のちがう動物を抱いたり撫でたり、ときには養子として育てていた姿が次々と見つかった。
サルが人間と同じようにほかの種をかわいがるのなら、その性質は両者が枝分かれする前からあった可能性があり、共通の祖先から受け継いだものなのかもしれない。
この研究成果は『Primates[https://link.springer.com/article/10.1007/s10329-026-01281-0]』誌(2026年7月21日付)に掲載された。
サルも人間のように他の動物をかわいがる
オックスフォード大学のシリル・グルーター准教授が中国の上海動物園を訪れたとき、キタホオジロテナガザルのメスが、囲いの中に迷いこんだネズミをそっと抱き、優しく撫でているのを目にした。
サルは他の種の動物をこんなふうにかわいがるのは一般的なことなのだろうか?
そこでグルーター氏を中心とする国際研究チームは、人間を除いた霊長類が他の種の動物と友好的にかかわった記録を調べることにした。
霊長類は、ニホンザルやヒヒなどのサル、チンパンジーやゴリラなどの類人猿、キツネザルの仲間、そして人間が含まれる哺乳類の総称で、生物の中で「最も優れた(霊長な)もの」という意味を持つ。
研究チームはこれまでに発表された学術論文を調べ、写真や動画の記録を集め、さらに霊長類の研究者およそ250人に聞き取り調査を行った。
集まった記録は427件にのぼり、この種の調査としては初めての本格的なものとなった。
その結果、やはり霊長類は他の動物を偶然ではなくかわいがっていたことがわかった。
かかわっていたのは88種の霊長類で、対象となった動物は127種にのぼった。
そのうちの55種は同じ霊長類ではなく、イヌやブタ、シカ、リス、鳥まで含まれていた。
サルたちの異種の動物に対する行動
もっとも多かったのは一緒に遊ぶ行動で139件、次いで毛づくろいが136件だった。
毛づくろいは、相手の毛をかき分けてゴミや虫を取ってやる行動で、霊長類にとっては仲良くなるための大切なやりとりでもある。
タイの寺院ではベニガオザルが飼い犬の毛づくろいをし、スリランカではカンムリラングールがシモフリオオリスの背中を撫でていた。
屋久島では、ニホンザルがニホンジカの背に乗る様子が記録されている。
なかでも研究チームがもっとも注目したのは、2006年にブラジルで報告された例だ。
野生のホオヒゲオマキザルの群れが、種のちがうコモンマーモセットの赤ちゃんを受け入れ、10か月以上も育てていた。
2頭のメスが順番に母親役を務め、群れの他のメンバーもこの赤ちゃんを受け入れていたという。
特に子供とメスが異種の動物と接触を持っていた
だれがかわいがるかにも、はっきりした傾向があった。
子どもは一緒に遊ぶことが多く、大人のメスは毛づくろいをすることが多かった。
一方で大人のオスは、他の種と親しくすることは少なかった。
もっとも、いつも上手に接することができたわけではなく、相手をかまいすぎて死なせてしまった例も13件あった。
研究チームはこれを、獲物として襲ったのではなく、異種の動物の扱い方が分からず、やりすぎた行動の結果だと説明している。
人間のペット飼育は、サルと共通の祖先から受け継いだ可能性
人間と他の霊長類は、遠い昔に同じ祖先から枝分かれした仲間だ。
他の種の動物をかわいがる性質は、共通の先祖だった時代からあった可能性があると研究チームは考えている。
ただし霊長類が他の種をかわいがることと、人間がペットを飼うことは同じではない。
人間のペット飼育は何年も一緒に暮らす長い関係だが、霊長類の場合は一時的なつきあいで終わることが多いからだ。
グルーター氏もそこには線を引いている。
「これらの行動は、私たちが知っているペット飼育そのものではありません。ただ、人間と動物の結びつきがやがて生まれてくるもとになった、進化上の要素の一部なのかもしれません」
研究チーム自身、今回の成果は答えではなく、これから確かめていくための最初の1歩だとしている。
異種の動物を抱いて、撫でて、そばで眠る。時には子育てもする。人間が生まれるより前から霊長類の中にあった行動なのかもしれない。
References: Monkey friendships with dogs, deer, and pigs offer clues to the evolutionary origins of pet-keeping | Oxford University[https://www.ox.ac.uk/news/2026-07-29-monkey-friendships-with-dogs-deer-and-pigs-offer-clues-to-the-evolutionary-origins] / DOI : 10.1007/s10329-026-01281-0[https://link.springer.com/article/10.1007/s10329-026-01281-0]











