インド西部マハーラーシュトラ州の州都、大都会ムンバイ・メトロの地下鉄駅に、とびきりかわいい「最高責任者」が誕生した。
新たに役職を与えられたのは、スーツ姿の人間ではなく、グンダヴァリ駅に以前から姿を見せていた1匹の茶トラ猫だ。
その肩書は「CFO(Chief Feline Officer)」、日本語にするなら「最高猫責任者」といったところだろうか。
駅の点検に利用客の監視、そして何よりも「誰からもよく見える場所に座ること」が、この猫の主な仕事だそうだ。
ムンバイの地下鉄駅に現れる茶トラ猫
この猫が姿を見せるのは、ムンバイを走るメトロ7号線のグンダヴァリ駅だ。メトロ7号線は、アンデリ・イーストとダヒサル・イーストを結ぶ全長16.5km、13駅の高架路線で、グンダヴァリ駅を含む区間は2023年1月19日に営業を開始した。
この路線を運営するマハ・ムンバイ・メトロ・オペレーション・コーポレーション(MMMOCL)は、マハーラーシュトラ州政府傘下のムンバイ都市圏開発庁(MMRDA)が設立したメトロ運営会社である。
そんなグンダヴァリ駅で、利用客の間ですっかりおなじみになっていたのが、白っぽい胸元が特徴的な茶トラ猫だ。
この猫は駅構内でのんびりくつろいだり、周辺を歩き回ったりする姿をたびたび目撃されていた。
メトロのい利用客の中には、毎朝駅へ来ると、この猫を探すのが習慣になっていたという人もいるほどだった。
この猫は、別に駅や鉄道会社が面倒を見ているわけではない。駅に住んでいるのではなく、気ままにふらっとやって来ては、再びどこかへ去っていくのだという。
だからMMMOCL側も、猫の名前や年齢、性別など何ひとつ把握していないという。この駅にいつから姿を見せるようになったのかすら、よくわからないそうだ。
「この子に正式な役職をあげてください」
そんな猫の運命が大きく動いたのは、2026年8月21日のことだった。
グンダヴァリ駅を利用していたサンデシュ・サマントさんが、駅にいる茶トラの写真をXに投稿し、MMMOCLへこんなお願いをした。
MMMOCLさん、グンダヴァリ駅にいるこの純粋な子に、ぜひ正式な役職を与えてあげてください。この子は今のところタダ働きをしています
もちろんサンデシュさんとしては、いつも見かける猫をネタにした、ちょっとした冗談のつもりだったのだろう。
ところがなんと、MMMOCL公式はこのお願いを無視するどころか、全力で乗っかってきたのである。同日、公式はサンデシュさんの投稿を引リツ。
次のようなコメントを添えて、この猫に新たな役職を与えたのだ。
こちらが我々の「Chief Feline Officer」です。職務は駅構内の点検、利用客の観察、そしてみんなから眺めてもらえる絶好の場所に座ること。
今のところ勤務成績は「purrfect」です
ちょっと説明しておくと、これは企業の財務部門を統括する「Chief Financial Officer(CFO、最高財務責任者)」に引っかけたジョークだ。
CFOの真ん中の「Financial」を、英語で猫を意味する「Feline」に置き換えた言葉遊びなのだ。
さらに「purrfect」は、完璧を意味する「perfect(パーフェクト)」に、英語で猫がゴロゴロと喉を鳴らすことを意味する「purr」をかけたもの。
要するに、最高猫責任者の仕事ぶりは「ニャンペキ」というわけだ。
駅の点検に利用客の監視、そして「見られる」のも仕事
こうしてこの茶トラには、晴れて立派な役職と職務内容まで用意された。
駅構内を歩けば「駅の点検」、通行人をニャルソックしていれば「利用客の観察」、何もせず座っていても、「みんなから見てもらえる場所に座る」という重要任務を遂行していることになる。
つまりこの猫がこれまで駅でやっていたことが、そのまますべて「業務」として正式に認められたのだ。
このやり取りはSNSで注目を集め、「グンダヴァリ(Gundavali)駅を『Meowdavli(にゃあダヴァリ)』駅に改名しよう」と提案する人も現れた。
- 毎朝グンダヴァリに着くと、この子を探しているよ
- 「Chief Mouse Catcher(最高ネズミ捕獲責任者)」にも任命しようぜ!
- 首輪に名札を付けて、駅にも看板を設置してくれないかな? それから、駅に入っているテナントも参加できるような企画を作ってほしい
- この子のことはもう3年くらい前から見かけているよ。一時期は仲間の猫も一緒にいたんだけど、今はどうしているのかな
- こういう投稿に出てくるニャンとも完璧な職員たちを見たら、きっと足を止めて笑顔になるよ。嫌なことも忘れられるし、血圧だって下がりそう
- この子のために、箱の付いたかわいいキャットタワーを買ってあげて。そこで自分のおうちみたいに眠れるように
- 水と餌も用意してね
- ムンバイ・メトロの制服も用意してあげてください
- この子には肉球スタンプ入りIDカードが必要だと思う
- 会社の出世競争なんてどうでもいい。私は猫になりたい。眠って起きて、ご飯を食べて、昼寝して、かわいがってもらって、無条件に愛されて、また繰り返す。なんて最高の人生なんだ
下は任命の3日後に投稿された、サンデシュさんと茶トラのツーショット。
今朝はすごく誇らしげな顔をしてたよ。きっと有名になって、注目を浴びるのを楽しんでるんだろうね
一度きりの冗談では終わらなかった
さらにMMMOCLは、CFO任命の投稿だけでは終わらせなかった。8月25日には公式SNSで「最高猫責任者」のその後を動画で紹介した。
ネットで有名になったことは、我らがCFOこと最高猫責任者も認識しています。
セルフィーや抱っこ、おやつなど、ファンとの交流も急増しています。
サインまではお約束できませんが、次にムンバイ・メトロをご利用の際には、運がよければCFOと面会できるかもしれません
この動画では、すっかり人気者となった茶トラの姿が紹介されている。
我らのCFOこと最高猫責任者、ただいま勤務中。駅構内の点検は順調そのもの。鋭い視線から逃れられる者はいない。
もちろん、CFOは定期的な休憩も欠かさない。この仕事の特典は、利用客から好きなだけ可愛がってもらえること。そしてインド中から愛されること。
マハ・ムンバイ・メトロのCFOから、みんなにニャンとも素敵な旅を!
駅で「公式に」仕事をする猫たちは他にもいる
鉄道の駅で公式な地位を与えられた猫といえば、我が日本には世界的に知られる大先輩たちがいる。
その代表格が、和歌山電鐵貴志川線の貴志駅で2007年に駅長に就任した、かの有名な三毛猫の「たま」だ。
たまは民間鉄道会社から正式に「ねこ駅長」[https://wakayama-dentetsu.co.jp/cat-stationmaster/]に任命された全国初の猫で、その人気は国内外に広がり、貴志川線の存続と再生にも大きく貢献した。
たまはその後、スーパー駅長、執行役員、常務執行役員と異例の出世を重ね、2013年にはついに社長代理にまで昇進。
2015年に虹の橋へと旅立った後も、後輩たちがその仕事を引き継ぎ、2026年現在は「よんたま」が貴志駅長を務めている。
また、福島県の会津鉄道・芦ノ牧温泉駅[https://aizutetsudo.jp/station/ashinomaki/]にも猫駅長の系譜があり、2008年に初代「ばす」が名誉駅長に就任。
2代目「らぶ」を経て、現在は3代目「さくら」が利用客を見送る仕事を受け継いでいるそうだ。
海外に目を向けてみると、イギリスのハダースフィールド駅にも、鉄道会社から「上級害獣駆除担当」という肩書を与えられた猫の「フェリックス[https://mediacentre.tpexpress.co.uk/news/tpe-mourns-the-loss-of-its-beloved-station-cat]」がいた。
2011年、生後わずか6週間で駅にやって来て以来、利用客や職員に親しまれ、2023年に12歳で亡くなるまで駅の人気者として活躍したそうだ。
インドの鉄道駅というと、超激混みの通勤列車や、屋根の上まで鈴なりになっている乗客なんかの絵面を想浮かべる人が多いと思う。
しかし最近はムンバイやニューデリー、コルカタなどの大都市を中心にメトロの路線が急速に拡大しつつある。
日本など海外からの援助を受けて建設されたメトロは、冷房完備でとても清潔。これがインドか?とビックリしてしまう快適さなのだ。
なお、ムンバイのみならず他の都市のメトロの駅にも、マスコットとなって愛されている猫たちはいるらしい。
インドを訪れる機会があったら、ぜひメトロの猫を探してみてはどうだろうか。
References: Mumbai Metro's resident ginger cat gets a job title after months of 'patrolling'[https://www.indiatoday.in/trending-news/story/mumbai-metros-resident-ginger-cat-gets-a-job-title-after-months-of-patrolling-2977844-2026-08-23]











