「暗号資産」「確定申告」「ふるさと納税」に関する税制改正をチ...の画像はこちら >>


2026年3月に国会で成立した「令和8年度税制改正」では、個人投資家にも影響するであろう改正内容も盛り込まれている。具体的には「暗号資産」に関する改正と、「確定申告」に関する改正だ。



改正内容について、トランス税理士法人の代表税理士・中山慎吾さんに解説してもらった。

暗号資産の課税方式が「分離課税」に

■暗号資産の分離課税
これまで暗号資産によって生じた利益は「総合課税」の対象となり、給与や事業所得、不動産所得などと合算して所得税額が計算され、最大55.945%の税率がかけられていた。

しかし、今回の改正によって、給与や事業所得とは分離して所得税を計算する「分離課税」の対象となる。既に「分離課税」となっている株式や投資信託によって生じた利益と同様に、一律20.315%の税率で課税される。

「『分離課税』は、暗号資産で運用を行っている投資家の方々にとって、待望の改正といえるでしょう。税率が最大55.945%だったところから20.315%に引き下げられるので、暗号資産での利益が大きい人ほど税負担が減ることになります」(中山さん・以下同)

ただし、今年度からすぐに適用されるわけではなく、2028年1月1日以降の取引からの適用となる予定だ。

「青色申告特別控除」の上限が「75万円」にUP

■青色申告特別控除の見直し
個人事業主が青色申告で確定申告を行う際に受けられる「青色申告特別控除」が見直される。

「これまでは帳簿の付け方や申告方法によって、最大『65万円』の控除を受けることができましたが、改正により最大『75万円』の控除を受けられるようになります」

事業所得または事業的規模の不動産所得を得ている人が正規の簿記の原則に従って帳簿を作成し、「e-Tax」を用いて電子申告した場合、控除額が「65万円」となる。

今回の改正では、さらに「優良な電子帳簿」を作成・保存している場合は控除額が「75万円」となる。「優良な電子帳簿」とは、訂正・削除・追加の履歴が残るなどの一定の要件を満たした会計ソフトや請求書データなどとの自動連携システムを用いて作成した帳簿のこと。

一方、「e-Tax」を使わずに書面で申告する場合、これまでは「55万円」が控除されたが、今後は控除額が「10万円」に縮小される。

●青色申告特別控除の見直し

「暗号資産」「確定申告」「ふるさと納税」に関する税制改正をチェック!


簡易な簿記の方法で帳簿を作成している場合、控除額は「10万円」が上限となっていたが、改正により、前々年分の事業所得または不動産所得に係る収入金額が1000万円を超える人に関しては「青色申告特別控除」の対象から外れることになる。

●「10万円控除」の対象の制限

「暗号資産」「確定申告」「ふるさと納税」に関する税制改正をチェック!


「改正後の『青色申告特別控除』は2027年分の確定申告から適用される予定なので、今年度は関係ありません。ただし、帳簿の付け方や申告方法によって、控除額がいままで以上に差が出るようになったので、今年度中に会計ソフトや『e-Tax』にチャレンジして慣れておくといいでしょう」

インボイス制度の「2割特例」が「3割特例」になって延長

■インボイス制度導入に係る経過措置の見直し
インボイス制度が導入された2023年10月から2026年9月までの3年間、インボイス発行事業者の登録を受けたことによって課税事業者になった個人事業者に関しては、期間内の消費税の納税額を売上税額の2割にできる「2割特例」が適用されていた。

2026年10月以降は「2割特例」が終了するため、その後の消費税に関しては一般課税または簡易課税の計算方法に基づいて支払うこととなる予定だった。



「しかし、今回の改正で『2割特例』が2026年いっぱいまで延長となり、さらに2027~2028年の2年間は納税額を売上税額の3割にできる『3割特例』が新たに適用されます」

これまでと比べて1割負担が増えるものの、当初の予定より軽減されるため、個人事業者にとっては朗報といえるだろう。

「さらに、『3割特例』を受けた場合は、2029年から簡易課税制度への移行を行いやすくなる仕組みも導入されます」

本来、簡易課税制度の適用を受けるには、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要がある。つまり、2029年分から適用を受けるには、2028年12月31日までに提出する必要があるということ。

しかし、今回の改正で、『3割特例』を受けた人に限っては、適用を受けようとする課税期間の申告期限となる2029年4月1日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することで、2029年分から簡易課税制度の適用を受けることができるようになった。

ふるさと納税」の特例控除額に上限を設定

■個人住民税における寄附金税額控除限度額(ふるさと納税制度)の見直し

「これまでふるさと納税において、特例控除額に上限はありませんでしたが、2026年度以降は『193万円』という上限が設けられます」

●ふるさと納税の特例控除額の見直し

「暗号資産」「確定申告」「ふるさと納税」に関する税制改正をチェック!


道府県民税と市町村民税の上限を合計すると「193万円」となる。これ以上の額のふるさと納税を行うと、税額控除の対象外になってしまうというわけだ。

「ただ、193万円もふるさと納税して控除を受けられるのは、年収が数千万~数億円にのぼるような人に限られます。一般的な収入の人であれば、今回の改正の影響は受けないので、いままで通りにふるさと納税を行って問題ありません」

確定申告の際に関係しそうな改正もいくつかあった「令和8年度税制改正」。投資やふるさと納税をしている人、フリーランスで働いている人は、いま一度確認しておこう。

(取材・文/有竹亮介)

編集部おすすめ