俳優の板垣李光人が、主演映画『口に関するアンケート』を引っさげ、韓国・プチョン(富川)で開催中の「第30回プチョン国際ファンタスティック映画祭(BIFAN)」に参加。自身初の海外映画祭で、流ちょうな韓国語あいさつを披露し、上映後のQ&Aでは観客から質問が相次ぐなど、大きな盛り上がりを見せた。


 本作は、映画祭30周年を記念して新設されたSignature(シグネチャー)部門に正式招待。現地時間7日にインターナショナルプレミアが行われ、板垣と佐藤孝樹プロデューサーが登壇した。

 上映前、板垣は「韓国の皆さんこんにちは。『THE MOUTHS』で主演の翔太を演じました板垣李光人です。僕は初めて海外の映画祭に来たのですが、この映画で、この映画祭に来ることができて本当に嬉しいです。今日はよろしくお願いします」と韓国語であいさつ。会場から大きな拍手が送られた。

 上映後には500人を超える観客が拍手喝采で再び2人を迎えた。板垣は「皆さんご覧いただいたと思いますが、生きております」と劇中の展開を踏まえたジョークで笑いを誘い、「この映画が皆さんにどう伝わったのか楽しみです」と呼びかけた。

 MCから本作の原作者である背筋の小説は、韓国でも非常に高い知名度と人気があることが紹介され、本作の映画化のきっかけについて質問が寄せられた。

 佐藤プロデューサーは、「昨今の日本でホラー映画のブームが起きている中で、自分自身もホラーを作りたいと思っていたところ、原作を書店で見つけた」と回想。一度見たら忘れられない手のひらサイズの装丁とたった60ページという短い物語にもかかわらず、「恐怖が極限まで凝縮された圧倒的な面白さがあり、すぐに出版社へ映画化を打診したが、その時点ですでにほかのプロデューサー陣からも問い合わせが殺到していた」と裏話を告白。
「最終的には一緒に作ろうという話になり、このように大人気の原作を映像化できたことは本当にありがたいことだなと思っています」と経緯を語った。

 Q&Aでは司会者が驚くほど客席中から多数手が挙がった。主演起用の理由を問われた佐藤プロデューサーは、「プロデュースチームの第一希望が板垣さんだった」と明かし、「気弱に見えながら、とんでもない本性を見せていく翔太という役は、板垣さんの新たな魅力を引き出せると確信していた」と語った。

 これを受け、板垣は本作で最も過酷だった撮影秘話を打ち明けた。「この作品で一番大変だったのは、作品の大半を占める独白(証言)のシーン。何もない環境の中で、人ではなくカメラに対してあれだけの莫大な感情をぶつけ続けなければならないのは非常にお芝居として大変でした。しかも、その最も力を使う重要なシーンを、撮影全体の初日に丸一日かけてすべて撮り切ったんです」と明かし会場を驚かせた。

 「そこを乗り越えてからは、あとは綱(啓永)さんや吉川(愛)さん、MOMONAさんといった同世代の素晴らしいキャスト陣とのセッションを純粋に楽しむことに重点を置いて撮影に臨むことができました」と、キャスト同士のチームワークの良さも語った。

 さらに、観客から作中に登場する「セミ」が持つ、地中で長年じっと耐えてから一瞬で地上に出てくる性質が、思わず衝動的に言葉を発してしまう「口」という相反する概念のメタファーなのではないか、という非常にディープな考察が飛び出す場面も。

 これに対し板垣は深く感銘を受けた様子で、「自分自身、言葉を発するときは思考の土の中でしっかりと育ててから口にするように意識しています。しかし言葉というものは、セミの短い命とは違って、良くも悪くも一生誰かの中に残り続けて生き続けてしまうものだったりする。相反する部分というのは非常にあるなと思いました」と、自身の言葉への向き合い方を交えて真摯(しんし)に回答した。


 また、別の観客から「映画のラストに登場する“アンケート”に対して、製作陣なら何と答えるか」という質問が飛ぶと、佐藤プロデューサーは「何のためにあの録音が存在していたのか、登場人物の“杏”は何だったのかについて、制作チームとしては明確な答えを持って作っています。ただ、ここでそれを明かしてしまうのは…。ぜひ皆さんの中で何が答えなのかを話し合っていただけたらうれしいです」とアピールした。

 後半では、佐藤プロデューサーが本作について「ホラーでありながらミステリーとしての完成度も高め、エンターテインメントとして映画館のど真ん中に行ける作品にしたいという強い挑戦があった」と熱弁。

 板垣も「映像ならではのギミックや面白さを最大限に生かせた映像化になったと思っています。暗い密室の中で、映像、音楽、セミの声、人の声を浴びられるのは映画館で観る醍醐味であると思うので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたら」と呼びかけた。

 最後は「ホラーでありながら、人間のドロドロとした部分も丁寧に描いた作品です。今日をきっかけに、世界中で愛され、恐れられる作品になったらうれしい」と締めくくり、鳴りやまない拍手に包まれながら初の海外映画祭を締めくくった。

 心霊スポットとして知られる墓地に肝だめしに向かった大学生たちの“不可解な証言”から始まる『口に関するアンケート』は、全国で公開中。
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