■気づけば「4つも5つも」の銀行口座
ボーナスシーズンの到来だ。この時期になると、夏のボーナス特別金利と銘打って、各銀行が金利高めの預金を競い合う。2026年夏は1年物定期預金で年1.2%を出すネット銀行が相次いでおり、人気を集めそうだ。誰だって金利は高い方がいい。しかし、高金利目当てに新しく口座を開くつもりなら、慎重になったほうがいい。
日本は銀行口座を開くハードルが低いと言われる。クレジットカードのように収入証明や審査が必要なく、未成年でも口座を持てる。最近ではスマホ経由の口座開設も当たり前になり、ハードルがより下がった。
それに、社会人生活が長くなるほど、口座数は増えていくものだ。勤務先の指定で、家賃の振込先として、住宅ローンを借りた銀行への返済用に、NISA積み立て用資金のプール先として、ポイント還元を高めるために……など、気づくと4つも5つも使っていたりする。加えて女性に多いのが、結婚前の旧姓口座をそのままにしているというパターンだ。
■放置口座に「年1000円超の手数料」
多すぎる銀行口座は、のちのち厄介の種になりかねない。まず、稼働していない口座に手数料をかける銀行が増えている。2年以上入出金や振り込み等がない口座に対し、年間1000円超えの手数料を取るというメガバンクもある。今のところ残高1万円以上あれば手数料の対象にならない場合が多いが、それより少ないと年々お金が削られていくことになる。
そもそも、10年以上など長期間出し入れがない口座は休眠状態になっており、残高を引き出すにも手続きが必要になる。通帳や印鑑、本人確認書類を揃えたり、結婚して姓が変わっている場合は通帳やカードを再発行したりと、何かと煩雑なのだ。
また、近年はスマホアプリでの取引が推奨されるため、気軽に口座を増やしてしまうとその数だけIDやパスワード等を管理しなくてはならない。各金融機関は不正利用対策としてセキュリティを高めており、利用者にも対応を求めてくる。
若いうちは苦にならないことも、年齢とともに億劫になるものだ。口座数を増やし続けるより、徐々に減らしていくとの意識に切り替えていきたい。
■「使う・貯める・増やす」3口座がベスト
複数ある銀行を見直すには、まず役割ごとに整理するといい。
① 生活費として「使う」口座
② 短期的な資金を「貯める」口座
③ 長期的に資産を「増やす」口座
最初の「使う」口座は、給料や年金などの収入を受け取り、そこからさまざまな支払いをするハブとなる存在だ。生活費を引き出すほか、公共料金や各種保険料、クレジットカードやサブスクの利用料金が引き落とされたり、別口座への振り替えなどもここから行う。
多額の資金が滞留することはないので、金利にこだわる必要はなく、それよりも利用できるATMが多いとか、振込手数料が安いなどの使い勝手を重視したほうがいい。また、給料もしくは年金受け取り口座に指定することで、引き出し手数料の無料回数が増えるといった優遇をしている銀行が多いので、それも確認しておきたい。
次の「貯める口座」は、車の買い替えやマイホーム資金など、使う時期と用途がある程度決まっている資金を作るためのもの。基本的に引き出すことはなく、積立残高が増えていくので、金利の高い銀行を選ぶべきだ。金利で選ぶとネット銀行が候補になるだろう。ただし、冒頭に書いたように、魅力的な金利というだけでつまみ食いのように口座を増やすのはよくない。ネット銀行はせいぜい2行程度にしておきたい。
■年金生活前に見直したい「経済圏」
「増やす口座」は、老後資金など長期にわたって資産形成を行うための口座で、今どきでいえば投信積立用の買い付け資金の置き所や、クレカ積立の決済元にあたる。NISA利用者には証券口座と連携すると預金金利が優遇されるネット銀行などが人気だ。
本来は、短期で「貯める」、長期で「増やす」お金は別にしたほうがいいのだが、最近は共通ポイントを横ぐしに顧客を囲い込む「経済圏」方式の人気が高い。日ごろからキャッシュレス決済を使い、ポイントを積極的に貯めたい人は、「ポイント経済圏」重視で、「使う」「貯める」「増やす」口座を併用するのもいい。
同じポイントが貯まる金融グループで固める方法は、まだ資産形成の途中という年代ならメリットは大きいだろう。ただし、年金生活が近づいてくると、別の視点が必要だ。
■70代までに口座は「2つ」が目安
現役時代も終盤となり、人生の後半戦に突入すると、人は終活を意識し始める。同じく、銀行口座の終活も視野に入ってくる。
先にも書いたが、金融取引もオンライン化が進み、口座が多ければ多いほどIDやパスワード等の数も増える。管理も煩雑になる一方だ。また、年金生活に入ればライフスタイルも変わり、お金の使い方も変わってくる。老後に合わせて口座を取捨選択し、トータルの数を減らしていきたい。
まずは、保有している口座を一覧にして、残高も確認しよう。大事なお金があちこち散らばっていると、うっかり忘れたまま休眠化になりやすい。
そして、今後は使用しないと決めた口座は解約を。ネット銀行は、パスワード管理やセキュリティ対応への負担を減らすため、できれば1つまでに減らしたい。「貯める」口座として金利が高めだったり、ポイ活にメリットがある等の銀行を優先して残すといいだろう。
なお、有人店舗を持つ銀行の口座は必ず残しておきたい。高齢になるとオンライン上で問い合わせや手続きをするのが難しいと感じてくる。「わからないことは直接銀行に出向いて手続きしたい」と思うもの。いずれ有人店舗は消滅してしまうかもしれないが、高齢者にとって「人間が顔を見て対応してくれる」価値はプライスレスだ。
同じく、デジタル通帳ではなく紙の通帳が選べるのなら、やはり紙をお勧めしたい。いちいちアプリを開いて小さな画面で確認するのが負担になるからだ。
まだ住宅ローン返済が残っていたり、証券会社と連携させている口座だったり、子どもへの送金用になど、家庭ごとに必要な口座数は変わるが、せめて70代になったら2つ程度にまとめたい。ただし、解約の前にカードや保険料などの引き落とし先になっていないかは確認しよう。
■引き落とし統一で家族の負担を減らす
次に、毎月支払う公共料金や通信費、サブスク利用料などの引き落とし口座を統一する。毎月いくら入ってきて、いくら出ていくかを一つの口座にまとめれば、お金の流れがすっきり見えて、家計管理が楽になる。
引き落とし口座が分散されていると、万が一の時に家族がどの口座で何が支払われているのかわからず、大変な苦労をかけてしまう。その意味では、第三者でもパッと見て確認できるように、紙の通帳を発行してくれる店舗型銀行で引き落としをまとめたほうがいいだろう。
なお、現役時代から「ポイント経済圏」をフル活用し、銀行、決済、証券、保険、通信などを連携させてきた人も、この先どんどんシニア生活に入ってくる。自分自身できちんと管理できる自信があるうちはもちろんそのままでいいが、ログインのために必要なIDやパスワードをメモしておくことは大事になる。
そのものずばりを書くのはセキュリティ上避けたいので、自分や家族しかわからないようなヒント(例えば「○○の記念日」「推しの野球選手の名前と背番号」等)で書いておくと安心だろう。
■銀行は“開設は簡単・解約は地獄”
銀行口座を開設するのは容易だが、それに比べて閉じるのは大変だ。オンライン上で手続きできない銀行の場合は窓口が開いている平日の営業時間に出向かなくてはならないし、加えて窓口は事前予約が優先という銀行も増えている。
加えて、有人支店自体が減ってきているので、わざわざ支店のある地域まで出かけなくてはいけない。先にも書いたが、休眠状態の預金がある場合は、それを引き出すための手続きも発生する。
旧姓で作った古い口座では、預金を引き出したのちに解約となるため、本人確認書類を用意して結婚後の名前に口座名を変更したり、印鑑を再登録したりという煩雑な作業が発生する。
ネット銀行ではオンライン上で解約が可能だが、こちらもログインIDやパスワードが必要なので、ずっと放置していた口座の場合、それを覚えていないことも多いだろう。パスワードの再設定をするにも、登録したメールアドレスを思い出せない……なんてことになれば、なかなか先に進まない。そういう意味でも、金利の高さに惹かれてむやみやたらに新規口座を開かないことだ。
■証券・クレカも含めた「お金の終活」を
悲しいかな、人間は年齢とともに確実に衰えていく。体力も気力も、記憶力もだ。モノはえいっと捨てればよいが、お金の手続きはそうもいかない。1歳でも2歳でも若いうちに手を付け、面倒事は減らしておくに限る。
なお、解約するのは銀行だけとは限らない。証券会社の口座、保有しているクレジットカード、スマホの決済アプリ……etc. 知らないうちに増えているものはまだまだある。気合が続くうちに身の回りを片付けて、シンプルにしておきたいものだ。
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松崎 のり子(まつざき・のりこ)
消費経済ジャーナリスト
『レタスクラブ』『ESSE』など生活情報誌の編集者として20年以上、節約・マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析してきた経験から、「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。著書に『定年後でもちゃっかり増えるお金術』『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない 』(以上、講談社)ほか。
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(消費経済ジャーナリスト 松崎 のり子)

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