※本稿は、にぐ先生(谷口達也)『10歳の子どもには毎週1000円渡しなさい』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■「おこづかい=金融教育」という常識
「子どものくらしとお金に関する調査 第3回・2015年度」によると、小学生のおこづかいをもらう頻度と金額で最も多かった回答は、すべての学年で月1回、500円というものでした(※1)。
※1:「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」(2015、知るぽると)https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/kodomo_chosa/2015/
たとえば、シンガポール、香港などでは、おこづかいの金額が日本の相場より高く、おこづかいを渡す頻度も調査した世帯の半分以上が週1回でした、
それはシンガポールや香港の家庭が裕福だからというよりも、おこづかいで子どもに金融教育をするのが一般的なためです。
欧米も含め、海外の小学校では金融教育として予算管理の授業もあります。日本で多い「月1回、最低限のおこづかいを渡す」というパターンは自分でよく考えて使うという道徳的な意図はあっても、世界から見ると「子供に金融教育をしていない」とわかるレアケースかもしれません。
■シンガポールでは13歳に2万円以上
図表1に世界各国のおこづかいの平均額を載せています。
物価の違いもあるとはいえ、日本のおこづかいはかなり少ないと感じませんか?
インターネットが普及し、パソコン、スマートフォン、AIなどを誰もが使っているデジタル時代。ひと昔前とはお金の常識も変わり、これからはお金のセンスがあるとないとでは、資産形成にも大きな差ができます。
おこづかいで子どもの金融教育をするためには、親の中にある「渡しすぎてはいけない」という思い込みを一新して、おこづかい制度=金融教育という意識を変えてみることが大事です。
子どもの日常生活や環境に合わせ、このあとご紹介する「年齢」を基準にしたおこづかいの金額を目安にして、子どもに渡す金額を決めましょう。
■12歳であれば「週1200円」がベスト
おこづかい制度をスタートするにあたり、まずは子どもに渡す金額を決めます。
子どもの年齢×100円/週(低学年の場合は年齢×50円)
いきなりいわれても、子どものおこづかいとしては「高い!」「毎週⁉」「多すぎない?」など、驚かれる方がいると思います。一般的なおこづかいの相場よりも、多めと感じる方が多いでしょう。週1回という頻度にも驚かれたと思いますが、まずはこの金額がおすすめの理由をあげていきます。
金融教育のためにはおこづかいを渡したあと、子ども自身が予算別に分ける作業が大切になります。この「予算分け」のとき、分けやすい金額のほうが作業もスムーズ。特に、子どもが小さいうちはおこづかいの金額が少ないこともあり、数えやすい硬貨で渡すとベストです。そこで、少なすぎず、多くなりすぎない【100円玉】を使える金額にしました。
予算分けのしやすさを重視しているので、もし面倒でなければ90円でも、110円でも、150円でも、そこは家庭ごとに変えてOKです。また、おこづかいの金額が子どもの「年齢」を基準に増えていくこともポイントです。
■毎週お金を渡すことで芽生える意識
なぜなら、年齢が上がるにつれて、子ども自身が予算を分けて管理できる金額が増えていくので、自然と求められる予算管理能力が上がってゆき、子どもに責任感や達成感が芽生えやすくなるからです。
子どもが成長して社会人になり、たとえば大卒で初任給が23万円とします。家賃や光熱費などの固定費を引いて、残りが大体13万円だとすると、週に3万2500円で、貯蓄や投資も含めてやりくりしなければなりません。
そう考えると、このおこづかい制度は【子どもの年齢×100円/週】という小さなスケールで「大人になったときの予算管理の練習」をしていることになるのです。小学生の頃から、中高生まで習慣で続けていれば、大学生や社会人になり、アルバイト代や給料をもらうようになっても、自然と管理方法がわかっている状態になります。
続いて、この【年齢×100円/週】のおこづかいを、どのような費目で予算分けしていくかを解説します。
■5つの予算分けと予算額を決める方法
毎週、新たなおこづかいを渡したら、子どもは親の見守りのもと、その場でおこづかいを費目ごとに「予算分け」します。まずは小学校高学年から、中高校生になるまで使える、スタンダードな5つの費目を、予算額を決める優先順位に沿ってご紹介します。
一つ目は、NEEDS(ニーズ)。これは、学校で使う文房具代や、習い事への交通費など、「必要」なお金です。
二つ目は、GIVE(ギブ)。寄付に使うお金です。
三つ目は、SAVE(セーブ)。
四つ目は、INVEST(インヴェスト)。投資に回すお金です。
そして五つ目が、WANTS(ウォンツ)。やっと、浪費に使えるお金です。
子どものおこづかいといっても、大人になったときの練習が目的のため、予算分けの費目はあえて一般社会で通用するように大人と同様にします。
さて、小学校高学年以上の子どもはすべて、このNEEDS、GIVE、SAVE、INVEST、WANTSという5つの目的で、毎週のおこづかいを予算分けしていきます。このとき、①NEEDS、②GIVE、③SAVE、④INVEST、⑤WANTSの順に沿って、予算を決めていきましょう。
■大人になってもお金に困らない予算管理方法
最優先で予算額を決めるべきは、NEEDSと呼んでいる「必要なお金」です。NEEDSは学校で使う文房具代や習い事への交通費といった、子どもの日常生活で実際に必要な、教育現場などにまつわる費用です。
本来は親が負担する費用の一部で、使ってしまうと子ども自身も困るお金と考えましょう。このNEEDSをおこづかいに入れて渡すことで、子どもに「使ってはいけない必要なお金」は分けておく習慣がつき、大人になってもお金に困らない予算管理能力を身につけるのです。
子ども自身で支払いができると理想的なので、支払いやすい交通費だけをあてたり、月謝などは4で割って毎週渡す分割方式にしても。
初めは文房具代などの小さな額から始めて、慣れてきたら習い事の月謝など金額を徐々に増やし、もし子どもがしっかり管理できるのであれば、あらかじめ予定されている習い事の遠征費や大会費の積み立てなど、長期にわたる管理にシフトする手もあります。たとえば、毎週500円ずつNEEDSとする場合、1カ月で2000円、1年で2万4000円になります。
遠征や大会の実行予定日から逆算することも、大人になって必要になる大事な力です。子どもに預ける金額が大きくなりすぎると不安なら、交通費だけなど、家庭で相談して決めましょう。どの程度大きな額を子どもに任せるか、親子で一番話し合いが必要なポイントです。
■投資よりもまずは「貯金優先」
NEEDSの費用は、子どもがすすんで実行したいことのほうが、「それだけのお金が必要」と、子どもが実感しやすくなるというメリットもあります。次に優先したいのは、GIVE、「寄付」です。寄付は、本来なくてもいい費目かもしれませんが、「余ったら寄付する」ではなく、あらかじめ予算分けに入れておくことがGIVEのポイントです。
割合でいえば、おこづかいの1%ほどでいいと思います。たとえば、10歳の子どもが毎週1000円をもらっているとしたら、寄付の予算額は10円になります。毎回募金箱に入れてもいいのですが、寄付を募っている団体を親子で探し、貯まったら寄付する形がおすすめです。
続いて、SAVEの「貯金」とINVESTの「投資」です。インフレの時代は投資のほうが重視されますが、貯金も子どもの金融教育として大切。とりあえずは「貯金優先」で予算額を決め、投資の資金を貯めながら、子どもが投資をできるようになるまで待つのがおすすめです。
割合でいえば、私のアカデミーではSAVE+INVESTで合わせて、おこづかいのトータル額の25%を目安としています。これは、本多清六という江戸末期から昭和中期にかけて活躍した学者の、「月給4分の1天引き法」という考え方に基づくものです。収入の4分の1を貯蓄に、という提言ですね。
投資はすぐに始めなくても、資金を貯めていくことが金融教育として大事になります。
■予算管理をすることで起こるおもしろい変化
そして、最後に残った金額が、WANTS。いわゆる「浪費」の予算額になります。この浪費分が実質、一般的な子どものおこづかいにあたります。必要な額を差し引いて残った分なので、「思ったほど多くない」と感じる方が多いも思いのではないでしょうか。
子ども自身が予算管理を始めると、好きな飲料やお菓子をコンビニよりも安いスーパーやドラッグストアで買ったり、お金にシビアになったりなど、おもしろい変化が見られるかもしれません。
ここまで高学年の話をしてきましたが、低学年のうちは、お金を「使う」「貯める」を覚えられればOKなので、費目の種類は3つのみにしています。低学年のうちは、もしかしたらおこづかいを渡さないという家庭もあるかもしれませんが、金融教育のためには、お金を使う機会が少ない年齢だからこそ、お金を扱う経験をすることが大切だと思います。低学年での予算分けは、次の3種でOKです。
■金融教育によって物の価値を判断できる
1つ目は、GIVE。高学年同様、寄付のためのお金です。2つ目は、SAVE。こちらも高学年同様、貯金のためのお金です。そして3つ目が、SPEND(スペンド)。高学年と違い、「必要経費」と「浪費」には分けず、とにかく「使う」分になります。
たとえば、学校で使う鉛筆が必要なら、高学年になったらNEEDSから出しますが、低学年のうちはSPENDの予算から買っておこづかい帳に記録しておけばOKです。
実際には、親が子どもの財布から支払うことも多いかもしれませんが、欲しい物があればまだ親に相談する年齢。管理そのものは、大変ではないと思います。
子どもによっては、お金を使う機会があまりないかもしれませんが、低学年のうちは「お金を使う、貯める」を経験し、お釣りなどのお金の概念を深めていく段階です。まだ親のサポートが必須の年齢ですが、小さいうちに金融教育を始めると、物の価値を考えるなどメリットも多いはずです。
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谷口 達也(たにぐち・たつや)
株式会社マネーシフト代表取締役・ファイナンシャルプランナー
「なにも売らないFP」。1985年、岐阜県生まれ。株式会社マネーシフト代表取締役。大手証券会社を2社経て独立後、現在のFP法人を設立。主に金融教育事業を行っており、大人向けだけではなく、小中学生向けにも「おやこde資産形成アカデミー」という金融教育事業を展開中。全国規模の教育委員会から後援を受けたイベントとなり、オンライン授業で全国を対象に開催。受講者はのべ1万3千人(2024.12)。これまで後援を受けた教育委員会は120自治体を超える。YouTubeチャンネル『【大人のためのFP教室】教えて!にぐ先生!』の登録者は10万人。
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(株式会社マネーシフト代表取締役・ファイナンシャルプランナー 谷口 達也)

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