腎臓の機能を維持するには、どんな食生活を心がけるといいか。腎臓の老化と強く関係する「リン」を含む食材の食べ過ぎには要注意だという。
内科医の工藤孝文さんが監修した『「腎臓にいいこと」、ぜんぶ集めました。』(青春出版社)より、紹介する――。
※本稿は、工藤孝文(監修)、ホームライフ取材班(編)『「腎臓にいいこと」、ぜんぶ集めました。』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■腎臓の機能低下を招く栄養素
腎臓の老化と強く関係している栄養素が「リン」。ミネラルの一種で、カルシウムと結びついて骨や歯の材料になったり、神経や筋肉を正常に保つために働いたりする。
大事な栄養素ではあるが、積極的に摂取する必要はない。リンは非常に多くの食品に含まれているので、ごく普通の食生活をおくっていれば、必要量を無理なく摂取できる。問題なのは、逆に摂り過ぎてしまいがちなことだ。
リンが体内に過剰に入ってくると、腎臓の大きな仕事であるろ過機能が働き、いらない分はすみやかに排出される。ところが、普段の食事からリンを摂り過ぎていると、その処理のために腎臓の負担が大きくなって機能が低下する。
腎臓の機能が下がると、排出し切れなくなったリンが体にたまっていく。
増え過ぎたリンは、形を変えて毒性を持つようになる。
その処理を担う腎臓はさらに弱り、リンの排出にますます手間取る。そして、血液中のリンが多過ぎる高リン血症を招き、過剰なリンが腎臓の元気を一層失わせるという悪循環に陥ってしまう。
■心臓病や脳卒中のリスクが高まる
高リン血症になると、骨からカルシウムが流れ出て骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を招く。骨ではないところに、カルシウムがくっつきやすくなるのも問題だ。この現象が血管で発生すれば、動脈硬化が起こって心臓病や脳卒中のリスクが高まってしまう。
リンを摂り過ぎて、腎臓の調子が悪くなると、全身が大きなトラブルに見舞われるわけだ。こうした体のメカニズムから、必要以上にリンを摂取し続けると、寿命が短くなるという考え方もされている。
ある実験では、リンを排出しにくい遺伝子を持つマウスは、スムーズに排出できる遺伝子を持つマウスと比べて、早く老化して寿命も短いという結果になった。
腎臓とリンの関連性は強く、慢性腎臓病を発症すると、早い段階からリンの摂取を制限しなければならない。ある程度の年代になったら、腎臓を弱らせないために、リンを摂り過ぎないことがとても重要だ。
本稿では、食生活でいかにリンを抑えたらいいのか、基本の対策から裏ワザまで紹介していこう。

■リン摂取を抑えるために控えたい食材
腎臓を弱らせ、ひいては寿命を短くしてしまう厄介なリン。摂り過ぎには十分な注意が必要だが、肉や魚、ごはん、パン、野菜など、普段食べているもののほとんどに含まれている。日本人は必要量の3倍、あるいは5倍ものリンを毎日摂取しているという見方もあるほどだ。
だったら、注意のしようがないじゃないか。こう思うかもしれないが、じつはリンには体内に吸収されにくい「有機リン」と、非常に吸収されやすい「無機リン」がある。
有機リンが含まれているのは、肉や魚、穀物、野菜といった一般的な食品。これに対して、無機リンは食品添加物として多くの加工食品に使われている。
加工食品をできるだけ控えれば、それだけでリンの吸収を大幅に減らすのは可能だ。これが最も効果的なリン摂取の抑え方だと覚えておこう。
■買う前にチェックすべき食品表示欄
食品中のリンでも要注意なのが、さまざまな加工食品に含まれている無機リン。では、どのような食品添加物を避ければいいのか。
最もわかりやすいのは「リン酸塩」という添加物だ。
食品の風味や食感を良くし、保存性をアップさせる作用があるとして、非常に多くの加工食品に使われている。ただ、このリン酸塩はまだわかりやすい。大きな問題は「リン」の表記がないにもかかわらず、実際には含まれているものが少なくないことだ。
たとえば、ほとんどのラーメンで、麺のコシを出すのに使われる「かんすい」。これは主に炭酸カリウムと炭酸ナトリウムの混合物で、リン酸塩が加えられているケースも多い。このためラーメンを食べると、そうとは知らずに、吸収率の高い無機リンを摂ることになるわけだ。
ほかに、「酸味料」「香料」「PH調整剤」「結着剤」「乳化剤」などの食品添加物にも、リンが混じっている場合が少なくない。
なぜ、こんなあやふやな表記が許されているのかというと、国が定めた「食品表示法」に、「一括名表示」という決め事があるからだ。
かんすいの場合なら、「炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸塩」ではなく、ひとまとめに「かんすい」と表記してもかまわないという仕組みだ。
同じように酸味料や香料も、成分を明らかにしないで、一括名で表示されている。また、パッケージが小さければ表記しなくてもいい、という別の“抜け道”もある。食品添加物にどのような成分が使われているのか、消費者にはわからないのだ。

では、無機リンから身を守るにはどうすればいいのか。まずは加工食品を食べる機会を減らすことだが、まったく食べないというわけにもいかない。
そこで、買う前に食品表示欄を必ずチェック。食品添加物の記載が多いほど、リンも多く含まれている可能性が高いので、添加物らしき物質名がずらりと並んでいる食品は避ける。これで、ある程度は無機リンの摂取を減らせるはずだ。
■決めておくべきコンビニ利用のルール
無機リンが使われた加工食品は腎臓の負担を大きくし、長い目で見ると寿命にもかかわってくる。この事実を知ると、食品添加物なんか絶対に口にしたくない、と思う人がいるかもしれない。
しかし、いまの時代、完全にシャットアウトするのは無理だ。ハムやベーコンといった加工肉をはじめ、魚肉の練り物、カップ麺、各種レトルト食品、スナック菓子など、コンビニやスーパーの棚に並んでいる加工食品のほとんど、さらに総菜や弁当にも無機リン入りの食品添加物が使われている可能性がある。
もうこんな状況なのだから、ある程度、目をつぶるしかない。
たとえば、コンビニの総菜や弁当も食べるけれども、週に1回、あるいは2回までというルールを決めておく。こうして柔軟に対応し、少しでも無機リンの摂取を抑えるのが現実的だ。


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工藤 孝文(くどう・たかふみ)

内科医

工藤内科院長。福岡県みやま市の同医院で地域医療を行う。糖尿病内科、ダイエット外来、漢方医療を専門として、テレビや雑誌などでも活躍。著書に『痩せグセの法則』(枻出版社)ほか多数。

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(内科医 工藤 孝文)
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