暑い日でもさわやかで清潔感を保てる人は何が違うのか。スタイリストの森井良行さんは「『生活感』というノイズを取り除くことが大切だ。
たとえば夏はノージャケットになる機会が多いので、『隠れていたアイテム』が悪目立ちする」という――。
■ビジネスで求められる「清潔感」とは
「夏に清潔感を保つには、どんなことに気をつければ良いですか?」
最近クライアントから、そんな質問をいただく機会が増えています。清潔感の重要性については誰もが知るところですが、「どう身につけるか」について論理的に説明できる方は、あまりいないようです。これでは工夫のしようもありません。
まず清潔感の輪郭をあきらかにするため、「対義語」を考えてみましょう。たとえば清潔の対義語は不潔ですが、不潔感という言葉は聞きませんよね。私は、清潔感の対義語は「生活感」だと捉えています。
つまり夏の清潔感を印象づけるには、薄着における「生活感をゼロにする」こと。そして夏は、身につける衣服の枚数が減るからこそ、隠れていた生活感が露わになりやすいのです。たとえばクールビズの代名詞ともいえるワイシャツ姿は、ノージャケットになるため「それまで隠れていたアイテム」が悪目立ちします。
その代表格が「ベルト」です。
ベルトは「ズボンを留める道具」だからこそ、千切れていなければ「機能としては十分使える」という考えは合理的かもしれません。
ですがノージャケットのワイシャツ姿では、ベルトが丸見えになるため、その劣化具合は想像以上に悪目立ちします。
■ノージャケットで「一発アウト」アイテム
ちなみに5つある孔(あな)のうち、「真ん中の3つ目で締める」というベルトの着こなしルールをご存じですか。さすがに「真ん中でなければNG」というほど厳格ではありませんが、体形変化によって以前締めていた位置と変わり、古い孔の「跡がクッキリ浮き上がっている」ならば、話は変わります。また「ベルト革のヨレ」や、「コーティングが剥げている」という状態は、あきらかなNGです。
普段から身なりに気を配っている方でも、「ベルトについては10年選手の愛着あるものを使用している」という話をよく伺います。そもそもベルトを買い替えるタイミングがわからないという方も多いはず。ごまかしが効かなくなるノージャケットの夏場こそ、ベルトを新調する最適な時期です。
夏の清潔感といえば、9割近い方が「汗対策」を想像するかもしれません。にもかかわらずベルトの話を冒頭にもってきた理由は、一流ホテルにお勤めのクライアントから伺ったエピソードが関係しています。
■一流ホテルマンが厳守する「教え」
ホテルマンがピシッと清潔感があるように見える背景には、「清潔感は、先端に宿る」という教えがあるようです。人の視線は、無意識のうちに「端(先端)」に集まる性質があります。だからこそ彼らは、毛先、爪先、そして靴のつま先と、身体のあらゆる「先端」のお手入れに意識を集中させているのです。

「一部を見て、全体を把握しよう」とする人間の性質を踏まえた、このエピソードはビジネスファッションにも当てはまります。服における先端、すなわち「アイテム同士の境界線」や「アイテムの端」を的確に管理することこそ、夏の生活感を払拭する最短ルートです。私はこれを「先端の法則」と呼んでいます。
具体的に、我々ビジネスパーソンが夏場に意識すべき「服の先端」は3つあります。ここでいう先端には、シルエットの端のみならず「アイテム同士が交わる境界線」も含まれることをお忘れなく。
■夏に意識したい「3つのポイント」
①ウエストという境界線(中央の先端)
先ほど挙げたベルトは、上半身と下半身を分ける「中央の先端(境界線)」です。劣化したベルトが丸見えだとNGな理由は、この先端の法則に基づいています。同様に、ウエストまわりに寄った「シャツのシワ」や「ダブつき」も、生活感を生む原因になります。
ワイシャツがパツパツでは、お腹まわりのボディーラインが悪目立ちすることはイメージできるはず。同じくやせ型の方の生地のダブつきもNGですので、シャツの身幅をお直しすることをおすすめしています。
ベルトは状態の良いものに新調し、シャツはダブつきのない適度なサイズを選ぶことが第一の鉄則です。
②足元の先端(スラックスの裾)
スラックスの「裾(すそ)の長さ」も見落としがちです。
靴の甲に生地がダブついて余っている状態(溜まり)は、足元の先端が乱れていると受け取られかねません。裾が長すぎると、視覚的に重心が下がり、ルーズで重たい印象を与えてしまいます。
ジャケットなどの上着を着ている状態ならまだしも、夏は足元のパンツ丈についても、他の季節以上に目立つのです。具体的な目安として、靴の甲に軽く触れるか、触れないか程度の「ハーフクッション」を推奨しています。
もし手持ちのスラックスが長すぎる場合は、再度の裾上げ(お直し)をすることで、足元の先端が整い、驚くほどスマートで洗練された印象に変わるでしょう。
■白インナーに漂う「生活感」
③トップスの先端(着丈の黄金律)
近年主流になりつつある夏のオフィスカジュアルについても、ワイシャツ姿とは異なる留意点が求められます。
ポロシャツやビジネスTシャツ単体のコーディネートにおいては、スラックスにタックイン(裾入れ)しないため、「トップスの着丈」が、そのままシルエットの先端となります。ここで着丈が長すぎると、一気に「休日の手抜き着」のようなイメージに直結してしまうから。
理想は、肩幅と着丈のバランスが「縦長の長方形」になる黄金律を保つこと。もし手持ちスラックスのポケットが8割程度隠れているならば、それは長すぎるサインです。具体的目安として「スラックスのポケットが半分隠れる程度」を意識してみてください。スッキリとした清潔感が担保されます。

服の3つの先端を管理できたら、次に着手すべきが、夏特有の最大の悩み「汗対策」です。高温多湿の日本で、ワイシャツの下に着用するインナーが汗対策として必須であることはご存じのとおり。
ここでも「先端の法則」が顔を出します。多くの方が陥りがちなのが、「白いワイシャツに合わせて、インナーも色を揃えよう」という誤解です。白いワイシャツに白インナーを合わせると、肌との色のコントラストによって、肌着の袖口や襟元の境界線がクッキリと透けて見えてしまいます。この「透けたインナーの境界線(先端)」が、相手に下着を意識させてしまう生々しい生活感の正体です。
■必要なのはセンスではなく「知識」
これを一発で解消する肌着は、ユニクロなどで手に入る「ベージュ色のインナー」です。ちなみに私は、ユニクロの「エアリズム」のなかでも「シームレス(縫い目がない)」タイプの「Vネック」を強く推奨します。
なぜベージュなのか。それは肌の色と同化するため、白いワイシャツを着ても、インナーの境界線(先端)が完全に消滅するからです。テレビに出演する男性アナウンサーたちも、強い照明下で白シャツからインナーが透けるのを防ぐため、ベージュの肌着を愛用している方が多いそうです。
ちなみに縫い目がないシームレスのVネックを選ぶことには、別のメリットもあります。
近年主流の「ビジネスTシャツ」の下に着たときにも、肌着に凹凸感がないため、首元で響くことはありません。
夏の清潔感は、「生活感」というノイズを取り除くことで得られる雰囲気であることをお伝えしてきました。もちろん汗対策も重要ですが、それは表面的な工夫でしかありません。
薄着の清潔感の前提となる「先端の法則」を実践してみてください。そして本稿でお伝えした「ベルトの見直し」「スラックス丈をハーフクッションに整える」「トップス着丈の黄金律を守る」ことは、すべてセンスではなく、知識の問題です。つまり誰でも再現できるということ。
この合理的なルールの実践は、ノーネクタイ・ノージャケットの季節であっても、あなたの印象に清潔感をもたらします。ぜひ明日からのビジネスシーンに取り入れてみてください。

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森井 良行(もりい・よしゆき)

スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事

1979年千葉県生まれ。日本大学卒業後、一般企業を経て2007年に独立。これまでのべ5500人を超えるビジネスパーソンの買い物に同行し、スタイリングを手がける。感性で語られがちなファッションを独自のロジックで言語化し、戦略的にビジネスパーソンの魅力を引き出す着こなしのメソッドに定評がある。
MENSA会員。著書に『38歳からのビジネスコーデ図鑑』(日本実業出版社)、『男の服選びがわかる本』(池田書店)などがある。

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(スタイリスト、服のコンサルタント協会代表理事 森井 良行)
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