※本稿は、西森栄太『2型糖尿病は寛解する!』(新星出版社)の一部を再編集したものです。
■糖尿病寛解を意識して摂るべき食材
糖尿病は一度なったら治らない病気と思われています。しかし現在では、2型糖尿病は適切な減量と生活習慣の改善によって、薬を使わず正常血糖を維持できる「寛解」が十分に期待できる時代になりました。
では私たちの身近にある食材を使って、糖尿病の寛解を目指すにはどうすればよいのでしょうか。
ここでは、私の外来に通ってくださっている患者さんたちの工夫も交えながら、ご紹介していきます。
まず、大切なポイントは「野菜をしっかり摂ること」、そして「たんぱく質を意識すること」です。
野菜は、1食で生野菜の場合は両手山盛り1杯(生で約150~200g)、ゆでた(加熱した)野菜の場合は片手一杯(約100g)を摂ること、たんぱく質は、毎食「自分の手のひら1枚分(たんぱく質量約20g)」を目安に摂ることです。
この分量の野菜とたんぱく質を摂るのに特におすすめしたいのは、「具沢山の味噌汁」や「たんぱく質入り野菜スープ」です。これらは手軽に野菜をたくさん取り入れることができ、なおかつ満足感も得られます。
また、豆腐(高野豆腐を含む)やきのこも積極的に活用していただきたい食品です。
さらに、納豆や卵など、一品でたんぱく質を補える食材も、日々の食事にうまく取り入れるとよいでしょう。
ただし、ここで注意が必要です。あれこれとメニューにこだわりすぎると、かえって食事量が増えてしまう危険があります。
私は患者さんに「No Doubt(迷わない食事)」を意識してくださいとお伝えしています。これは英国の糖尿病寛解研究でも実践された考え方で、食べるものをある程度決めて、迷わず続ける方法です」
実際に糖尿病の寛解を達成した方々は、寛解に至るまでの間、1日800~1200kcal程度にエネルギー摂取量を抑え、自分で決めた食材やメニューをローテーションしながら、食事のシンプル化を工夫していました。
では、具体的にどのような工夫をしていたのでしょうか。
ここからは、ふだんの食事を変えることで寛解を達成された方を2名ご紹介します。
■退院後は、ヤクルトなどの加糖飲料は中止に
加糖乳酸菌飲料や間食をやめ、週2日の休肝日も!
食後の運動習慣で高血糖を防ぎ、寛解!
● Dさん(男性)62歳→66歳で寛解
身長158cm
体重61.7kg→57.0kg
BMI 24.7→22.8
HbA1c 11.5%→5.3%
62歳の健診時にヘモグロビンA1c6.5%、空腹時血糖値104mg/dLも網膜症があり糖尿病の診断。かかりつけ医外来では定期フォローも糖尿病薬なし。
65歳時に口渇、多尿、体重減少で来院し、ヘモグロビンA1c11.5%、随時血糖値692mg/dLと高値のため、当科紹介となる。
今までの食事としては、ヤクルトやR-1を毎朝飲んでいた。朝食はご飯茶碗2杯、昼食はそばやうどんが多かった。
血糖コントロール入院にて、ライゾデグおよびビクトーザを注射、ミグリトールの内服を開始。
退院後の食事は、ヤクルトなどの加糖飲料は中止、野菜をメインにして間食を減らし、飲酒も週2日を休肝日とした。
退院1カ月後、ヘモグロビンA1c10.3%も血糖値安定(CGM)にてライゾデグ中止(体重61.4kg)。4カ月後ヘモグロビンA1c5.3%、ビクトーザ漸減中止(体重55.6kg)。
9カ月後ミグリトール中止(ヘモグロビンA1c5.3%、体重57.0kg)。以後、糖尿病薬なしでヘモグロビンA1c6.5%未満を継続。
■9カ月間で糖尿病寛解の3つの柱
Dさんの具体的な1日メニュー
Dさんは65歳で当科を受診した際、ヘモグロビンA1cは11.5%、随時血糖値は692mg/dLと非常に高く、明らかな糖尿病症状(口渇・多尿・体重減少)を呈していました。
もともとは朝にヤクルトやR-1などの加糖乳酸菌飲料、ご飯を茶碗2杯、昼はうどん・そば中心、間食にまんじゅうやせんべいという、糖質に偏った食生活でした。
入院での血糖コントロールを経て、Dさんは退院後、図表1のような食事パターンを取り入れました。
Dさんの食事を含めた生活のポイントは、以下の3点が挙げられます。
1 加糖飲料と間食を完全に中止し、余分な糖質の摂取源をカット
毎朝飲んでいたヤクルトやR-1、せんべい・まんじゅうなどの習慣的な甘い間食をすべてやめ、水分補給は水やお茶に限定。これにより、血糖値の急上昇を防ぎ、安定した血糖コントロールの土台が築かれました。
2 主食量を見直しつつ、たんぱく質と野菜をしっかり摂る構成に変更
朝食のご飯を茶碗2杯から1杯に減らし、夕食では主食を抜く一方で、納豆、冷ややっこ、魚、鶏肉、サラダや味噌汁などをバランスよく摂取。
3 毎日2回のウォーキングを習慣化し、食後高血糖を防止
朝食後・夕食後に20~30分のウォーキングを継続。高齢でも無理なく始められる運動を「日課」として取り入れたことで、代謝の改善と体重減少につながりました。
このようにして、Dさんは「糖質カット」「食事バランスの再構成」「日常的な運動」の3つを柱に、9か月間で薬をすべて中止し、以降もヘモグロビンA1c6.5%未満を安定して維持。体重も約5kg減少し、糖尿病寛解の状態となりました。
■4カ月で体重約20kg減少した方法
ホットスナックの間食をやめ、1日2食から3食へ。
苦手な野菜も毎食摂って、寛解!
● Bさん(男性)
43歳→45歳で寛解
身長175.1cm
体重112.3kg→92.7kg
BMI 36.6→30.23
HbA1c 11.4%→6.1%
43歳のときに、吐き気にて自宅近くのクリニックを受診し、ヘモグロビンA1c11.4%、随時血糖値265mg/dLのため糖尿病診断となり、当院に紹介。食事はご飯の量が多く、生野菜が嫌いで野菜が少なく、コンビニでの間食が多かった。
また、夜食も時々あり、早食いであった。当院受診後、食事は1日2食だったのを3食にして、コンビニのホットスナック(揚げ物などの温かい軽食)はやめ、朝は食パン8枚切り1枚とチーズ、野菜やたんぱく質(肉・魚・大豆製品)のおかずを増やした。
メトホルミンの内服、ビクトーザの注射を開始。次第に血糖値、体重が改善し、4カ月後にはヘモグロビンA1c6.2%、体重104.8kgとなった。
体重は92.7kgに。以後、糖尿病薬なしでヘモグロビンA1cが6.5%未満の糖尿病の寛解を維持している。
■どうしても間食したいときに選んだおやつ
【糖尿病寛解への具体的なアプローチ】
Bさんは、体重112.3kg、BMIが36.6という状況で糖尿病と診断されました。最初の診察では、血糖値が非常に高く、食生活もご飯の量が多く野菜が苦手な上、コンビニでの間食も頻繁でした。食事回数も昼と夜の1日2食で、夜食を摂ることもありました。
彼が寛解へ向けて最初に取り組んだのは、「間食をやめる」ということでした。それまで配達などの仕事中にコンビニに立ち寄り、菓子パンやおにぎり、ホットスナックを食べる習慣がありましたが、まずはコンビニ自体に立ち寄らないように意識しました。
それでもどうしても間食したいときは、ナッツや個包装の小さなおやつを選ぶようにしました。
次に取り組んだのは、食事の改善です。
野菜のなかでも特に生野菜が苦手だったので、カット野菜や海藻サラダ、乾燥ワカメ、もずく、めかぶなどをうまく取り入れて、3食すべてに少しずつ野菜を加える工夫をしました。
また、朝食もしっかり摂るようにし、食パン1枚にチーズやおかず(前日の夕食の残り、味噌汁など)を添え、全体的に栄養バランスを改善しました。
こうした具体的な取り組みを継続することで、徐々に体重と血糖値が改善しました。診療開始から4カ月後には体重が約7.5kg減り、血糖値も大きく改善したのです。
その後、薬も段階的に減らし、1年半後には約20kgの減量を達成し、完全に薬をやめることができました。薬に頼らずヘモグロビンA1cを6.5%未満に維持し続けています。
Bさんの成功例は、特別なことをしなくても、間食をコントロールし、少しの工夫で食生活を整えることで、糖尿病の寛解が可能であることを示しています。
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西森 栄太(にしもり・えいた)
佐久市立国保浅間総合病院 内科部長(糖尿病内科)、糖尿病センター長、地域医療部長
1997年 東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。2005年 琉球大学医学部医学科卒業。沖縄県立中部病院での研修を経て、2008年より沖縄県立南部医療センター・こども医療センター附属粟国診療所に勤務。粟国島あぐにじまの島医者としてプライマリ・ケアに従事。
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(佐久市立国保浅間総合病院 内科部長(糖尿病内科)、糖尿病センター長、地域医療部長 西森 栄太)

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