台風が近づいている。雲研究者の荒木健太郎さんは「温暖化の影響で台風が太平洋側の地域に接近する数が増え、強い台風の接近頻度が高まっているという研究結果もあるので、きちんと備えてほしい」という――。

※本稿は、荒木健太郎『すごすぎる天気の図鑑 防災の超図鑑』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■地球温暖化により強い台風が発生
台風による大雨や暴風で、日本では毎年のように被害が起こっています。スーパー台風という言葉も聞きますが、これは何なのでしょうか。
台風は、温かい海上で発達した積乱雲が集まった熱帯低気圧で、最大風速が17.2m毎秒以上になったものです。強さにも階級があり、気象庁の定義では最大風速が54m毎秒以上だと猛烈な台風です。スーパー台風は米軍合同台風警報センターが決めた台風の階級のいちばん強いレベルで、最大風速67m毎秒(※)以上のものを指しています。
日本は台風の通り道で、夏には太平洋高気圧の風の流れに乗って台風が北上し、日本付近の上空を吹く西風(偏西風)に乗って日本列島の真上を進みやすくなります。地球温暖化が進むと、日本の南の海上で猛烈な台風の発生する割合が増え、さらに日本付近を通る台風の移動が遅くなるという研究結果があります。
つまり、より強い台風の影響が長期化する可能性があるのです。台風により一層、備えていきましょう。
※1 この最大風速は、1分間の平均風速の最大値のこと。
■台風の進路のどこで何が危険なのか
台風の接近が予想されているとき、いつ・何に気をつけたらいいでしょうか。
台風の進路と起こりやすい災害について考えます。
まず、台風が遠く離れていても影響があるのが高波です。また、前線などの影響で台風が接近する前から大雨になることがあります。だんだん台風が近づいてきて、台風に伴う雨雲がかかるようになってくると、台風の進路の右前方で竜巻が発生しやすくなります。台風は中心に近いほど風も雨も強く、暴風に警戒が必要です。とくに台風の進路のすぐ右側では、台風自身の反時計回りの流れに台風の移動速度が重なるので、最も風が強まります。ここでは高潮も発生しやすく、とくに沿岸部では警戒が必要です。
台風の進路は台風進路予報で伝えられ、誰でも気象庁ウェブサイトなどで確認することができます。台風の接近が予想されるとき、自分の住まいの地域が進路のどこにあたりそうか、いつどんな影響がありそうかなどを確認して備えましょう。
■台風から離れたところの「遠隔豪雨」
台風がやってくると、台風本体に伴う発達した雨雲によって大雨がもたらされます。しかし、台風から離れた場所でも大雨が起こることがあります。
台風は非常に多くの水蒸気を伴っており、台風本体の雨雲がかかっていない地域でも、南から多量の水蒸気が流入して山地の斜面で持ち上げられ、雨雲が発達して大雨になることがあります。
さらに、台風の中心から1000km以上離れた場所でも、梅雨前線や秋雨前線などの停滞前線があると、大雨が発生することがあります。これは遠隔豪雨(遠隔降水)といい、「前線が台風に刺激されて活動が活発化」と表現されることがありますが、正確には台風由来の多量の水蒸気が流入して前線の近くで雨雲が発達するのが主な要因です。
遠隔豪雨のあとに台風の本体がやってくると、さらに雨量が増えて大規模な水害が発生することも。台風が日本付近にあるときは、中心から離れていても気象情報を確認して天気の変化に気をつけましょう。
■どのくらいの風速で何が起こるのか
さて、台風がくると風も強くなります。ただ、ひと口に風が強いといっても、どのくらいの強さの風で何が起こるのでしょうか。
風の強さは、風速で表わされます。日本では10分間平均の風速が用いられており、風速20m毎秒以上の風は予報用語では非常に強い風と呼ばれ、人は歩けず何かにつかまらないと立てなくなります。風速が30m毎秒以上では猛烈な風と呼ばれ、トラックが横転するようになり、40m毎秒以上では家屋が倒壊することも。
猛烈な台風では中心付近の最大瞬間風速(3秒間平均風速の最大値)が85m毎秒に達することがあり、これを時速にするとなんと時速306km! 新幹線の最高速度と同じくらいで、電柱や街灯も倒れるような危険な暴風です。
台風に伴う暴風でとくに気をつけたいのは、飛散物です。暴風に乗って重い看板や植木鉢などが飛んでくるので、屋外は極めて危険です。
台風の接近前に外にある飛びやすいものを家のなかにしまうのは、なくなることを防ぐだけでなく、誰かを傷つけないためでもあるのです。
■海の近くでは高潮や高波に要注意
一方、発達した台風や低気圧の接近時は海面の水位(潮位)が高まる高潮や、海の波が高まる高波が起こります。そのしくみに迫ります。
高潮は、台風の接近などで気圧が低下して海面が上昇する「吸い上げ効果」と、強い風で海水が吹き寄せられて海岸の海面が上昇する「吹き寄せ効果」によって生まれます。台風の中心の進路右側では両方の効果があるため、危険な高潮が起こりやすいです。
一方、波にはその場で吹く風でできる風浪と、離れた場所でできた風浪が伝わってきたうねりがあり、まとめて波浪(はろう)といいます。台風のように風が強く規模の大きい現象では、うねりを伴う高波が起こります。
ということは、台風の中心の進路右側では、高潮も高波もより高まりやすく、これらが重なって深刻な浸水害が起こることがあるのです。とくに太平洋側など南側に開いている海の湾やその沿岸地域のすぐ西側を台風が北上する場合は、極めて危険。最新の台風情報で台風の進路を確認し、沿岸地域では早めに避難するのがベストです。
■台風の前に確認したい自宅の備え
台風による風水害はこれまでも多く発生していますが、地球温暖化の影響で日本にやってくる猛烈な台風の割合が今後増えるといわれています。台風接近が予想されるときの自宅の備えを考えてみます。

まず風が強まる前の備えです。マンション住まいの人は、ベランダの物干し竿を降ろし、窓にひび割れやがたつきがないか確認を。窓に飛散防止フィルムを貼るとガラスが割れたときに飛散を防げます。一軒家ではテレビアンテナ、屋根瓦、雨どいなどを点検して、庭木は固定し、植木鉢などは家のなかにしまいましょう。
雨が強まる前には、水があふれないよう事前に側溝や排水溝を掃除しましょう。また、住まいの入口などへの浸水防止に、土のうを積むのが有効です。家のなかではトイレや排水溝からの下水の逆流防止に、ビニール袋に水を入れた水のうの設置を。
自宅のものが飛ばされると、ほかの人や家を傷つけてしまうこともあります。自宅でどんな備えが必要か、要チェック!

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荒木 健太郎(あらき・けんたろう)

雲研究者、気象庁気象研究所主任研究官、学術博士

1984年生まれ。慶應義塾大学経済学部を経て気象庁気象大学校卒業。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために災害をもたらす雲のしくみを研究している。
映画『天気の子』(新海誠監督)気象監修、NHK『おかえりモネ』気象資料提供。著書に『雲を愛する技術』(光文社)、『世界でいちばん素敵な雲の教室』(三才ブックス)、『雲の中では何が起こっているのか』(ベレ出版)、『せきらんうんのいっしょう』(ジャムハウス)など多数。

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(雲研究者、気象庁気象研究所主任研究官、学術博士 荒木 健太郎)
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