■女性が交際を終了した“たった一つの理由”
前回の記事で、婚活において「目に見えないリスク」である“におい”の引き算マネジメントがいかに重要かをお伝えしました。
しかし、清潔感を作り出すのは、当然ながら、においだけではありません。本稿でお話ししたいのは、「目に見えるリスク」である服装についてです。
においが相手の「嗅覚」を破るための関門だったとすれば、服装は「視覚」の審査です。ここでも多くの男性が、自分では「まともで清潔な格好をしている」と思い込んでいる身だしなみのラインと、女性側が実際に見ているポイントとの間に、大きなズレを引き起こしています。
結婚相談所でのある事例をご紹介します。
ある日突然お相手から「交際終了」を告げられた男性会員のお話です。
「なぜ断られたのか、まったくわかりませんでした。デートも数回行ったし、順調だと思っていました」
仲人との面談で、男性会員は振り返ります。
個人の特定を避けるため詳細は伏せますが、条件面においては女性が求める水準をクリアしており、ファッションにも人並み以上に気を遣っていた男性でした。
後日、女性側から仲人に伝えられた理由は、シャツの襟の黄ばみでした。特別にすごく距離が近づいたわけでも、じっくり観察したわけでもない。ごく普通のデートの距離感で、何度か目に入るうちに、気になって仕方なくなってしまったのだといいます。
男性にとっては、まさに青天の霹靂でした。
■婚活の現場では「あるある」の現象
「そんなことで?」と思う読者もいるかもしれません。
しかしこれは決して特別な例ではなく、婚活の現場では「あるある」の現象です。
結婚相談所ではマッチング後、まずはお見合いとなります。その場合は明らかに大多数がNGをつけるような外見の乱れが致命傷となりますが、本当にシビアな審査が始まるのはその先、無事に交際がスタートした段階です。
一般的な関係でいえば「友達へ」と進むこのタイミングで、お見合いの席では見過ごされていた細部が、改めて気になり始める女性が一定数出てきます。
そして、女性側の心理を想像すると、その感覚は決して理不尽ではないのです。
「結婚したら、シャツのシワにアイロンをかけたり、襟の汚れをチェックしたりするのを、全部私がやってあげるの?」
共働き、共家事が当たり前の現代において、こう思う女性がいても決しておかしくはありません。大人なのだから「それくらい自分でやってよ」という感覚は、生活者としてごく自然なものです。
相談所の仲人としても、そうした女性側の思いに深く共感しつつも、一方で「それ以外の魅力もあるのだから、この細部さえクリアしていれば……」と、ご縁が消えていくもどかしさに頭を抱える場面も少なくないそうです。
だからこそ、プロとして多くのご縁を見守ってきた仲人の口から出た、次の一言が深く印象に残りました。
「まあ、最後は本人がどこまで努力するかですね」
小さなほころびが、結果として大切なご縁を逃す。もちろん、努力すれば必ず結果が出るとは言い切れません。しかし、努力しなければ確実に縁を逃す。その厳しい現実を、婚活の現場は静かに示しています。
■重要なのは「マイナス」を潰すこと
お見合いやデートの現場において、女性が男性の服装に対して静かに判断する基準は、決して着ている服のセンスといった「加点」の要素ではありません。
それよりも、シャツのシワ、襟袖のヨレ、服装の黄ばみ、サイズが合っておらずダボついているといった、「マイナス」の要素です。
どれほどお洒落なアウターや小物を身につけていようとも、ベースであるシャツにシワが目立ったり、襟が黄ばんだりしていれば、それだけで全体の印象は一気に崩れてしまいます。
第1回でも触れた通り、男性は「加点(足し算)」にばかり気を奪われがちです。しかし、男性が「格好いいアウター」を足そうと必死になっている背後で、女性は「ベースの綻び」を自然と引き算(減点)しています。婚活における服装対策とは、自分を格好良く見せるためのファッションショーではなく、「事前にマイナス要素を徹底的に潰しておく、徹底的なリスク管理」の場なのです。
■「清潔感へのハードルが上がった」のか
条件や性格に問題がなくても、関係が進んでも、シャツの細部一つでダメになってしまう。
なぜ、ここまで見た目における細部が見られる時代になったのでしょうか。
「女性の清潔感へのハードルが近年急激に上がったのか」というと、実はそうではありません。結婚相談所の現場を見続けてきた仲人たちは口を揃えて「女性は昔からずっと、清潔感を重要視している」と言います。変わったのは、求める側ではなく「環境」です。
SNSや映像メディアの普及によって、私たちは日常生活の中で「徹底的に整えられたビジュアル」を目にする機会がはるかに増えました。芸能人やインフルエンサーだけでなく、恋愛リアリティーショーに出演する一般人も、プロによってスタイリングされた状態で画面に映し出されます。そうした美しい映像が日常に溢れたことで、女性が昔から抱いていた「理想の清潔感」がくっきりと具現化され、言語化されるようになったのではないでしょうか。
国立社会保障・人口問題研究所の調査によれば、結婚相手に「容姿」を重視・考慮すると回答した女性の割合は、1992年の67.6%から最新調査では81.3%まで上昇し、過去最高の数値となりました。
こうした時代の変化に無頓着でいることは、それだけで致命的な不利になりかねません。これは決して「背伸びをして特別な美容をしろ」という話ではなく、「自分が思っている以上に、最低限を整えないと戦えない時代になった」という冷厳な現実なのです。
■「仕事では気を付けている」人ほど要注意
ここまで読んで、「仕事をするうえで服装には気をつけているし、挙げたようなことはしっかりとやっている」という方は多いかもしれません。
なぜなら、仕事におけるそれと婚活におけるそれは、見られている「解像度」が異なるからです。
ビジネスシーンにおける身だしなみは、相手に「不快感を与えない」ためのマナーであり、たとえノーネクタイやノージャケットの軽装であっても、「オフィスカジュアル」という仕事用のドレスコード(型)に守られています。対面する距離も、会議室の机を挟んで1メートル以上離れていることが大半です。いわば、「遠目から見てまとも(引きの視点)」であれば通用する空間なのです。
しかし、婚活の場、特にお見合いやデートでの距離感は「パーソナルスペース」になります。カフェの小さなテーブルで向き合う空間では、ビジネス仕様の引きの視点では足りません。婚活では「日常の距離感で、心地よく一緒にいられるかどうか(寄りの視点)」という、相手の呼吸圏にまで踏み込んだ生々しくシビアなフィルターで審査されているのです。
「なぜか2回目のデートに繋がらない」という男性は、ビジネスマンとしての合格ラインで安心し、婚活特有の解像度に追いついていないのかもしれません。
■「ズレ」はどう解消すればいいのか
第1回で挙げた「目に見えないにおい」も、今回の「目に見える服装」も、共通する最大の障壁は「自分自身の感覚のズレ」にあります。
とはいえ、こうした「ズレ」を自分一人で修正するのは、想像以上に困難です。
なぜなら、自分の部屋のにおいに鼻が慣れてしまうのと同じように、自分自身の服装のシワや、無意識の仕草といった日常の細部は、本人は毎日見慣れてしまっているため、「自分では本当に気づけない」からです。
また、大人の社会において、こうした身だしなみの死角を「わざわざ指摘してくれる他人は誰もいない」という現実があります。
お見合いやデートの相手である女性も、「シャツの襟がヨレていますよ」「サイズが合っていませんよ」などと教えてはくれません。何も言わずに、ただ静かに「お断り」のボタンを押すだけです。
だからこそ、客観的な視点からフィードバックをもらうことが何よりのブレイクスルーになります。耳の痛い指摘をしてくれる第三者の存在は、自分では気づけない死角を照らす、婚活における最大のセーフティネットなのです。
■清潔感の正体とは…
この2回にわたってお伝えしてきた、婚活における「清潔感」の正体とは、決してお洒落さを競う加点ゲームではなく、自分の見えない死角に真摯に向き合い、マイナスを徹底的に排除するセルフマネジメントの試験に他なりません。
そして、この婚活で培った「徹底的にノイズを整える意識(=寄りの視点)」は、最終的にビジネスの場へも大きなプラスとして還元されます。
「不快ではない人」と「清潔感がある人」との間には大きな差があります。
多くのビジネスパーソンが「型」に甘んじて「引きの視点(遠目から見てまとも)」で留まっているからこそ、この至近距離の解像度を仕事に逆輸入するだけで、周囲に圧倒的な信頼感の差をつけることができるからです。
実際、婚活を通じて自分の見た目に真剣に向き合うようになった人が、結果として仕事でも周囲からの評価や見られ方が劇的に変わったというケースは、結婚相談所の現場でも実際に耳にする話です。
清潔感とは、特別な努力やお金をかけることではありません。
シャツの汚れを落とし、しっかり乾かし、アイロンをかける。
そのどれもが、自分でできることです。選ばれるための努力というと、少し気後れしてしまうかもしれません。しかし、目に見える細部を抜かりなく整えることは、相手の時間を尊重するという意思表示でもあります。
婚活が「本気で隣にいてほしい人」を探す活動だからこそ、そうした細部への配慮の有無に、これほど厳しい審査が入るのです。
婚活という限られた機会の中で、自分でも気づいていない「死角」がないか。まずは信頼できる第三者の目を借りて、一度鏡の前で確認してみる価値はあるはずです。
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平田 恵(ひらた・めぐみ)
タメニー 広報
立命館大学卒業。新卒で人材派遣会社に入社し、入社後わずか7カ月で課長に昇進。その後約5年間、高校野球のリポーターなどフリーランスとしてさまざまなメディアの現場を経験。再び人材業界の勤務を経て、2016年9月にタメニー(旧パートナーエージェント)に未経験広報として入社。2019年8月に人事部マネジャーへ異動(広報も兼任)、2020年10月からグループ広報の立ち上げをひとりで行う。2023年第1子を出産し、産後8週で仕事へ復帰。結婚式や婚活のプロとして数多くのメディアへ出演中。
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(タメニー 広報 平田 恵)

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