慢性的な疲労や疲れは、どうすればとれるのか。内科医の本間良子さんは「日中がんばれないのは、副腎が疲労を起こしているからだ。
副腎の負担を減らすために抜いたほうがいい食材を紹介しよう」という――。(第3回)
※本稿は、本間良子『小麦抜きのすすめ』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■朝起きられない原因は「副腎」にあり
朝、なかなか起きることができない。がんばって起きても体がいつまでも重たい感じがする。しつこいだるさが日中ずっと抜けない。すぐに疲れてぼんやりしてしまう。
そんな疲労や倦怠感は、日によって、多かれ少なかれ誰しもが感じています。でも、それが慢性的になっていたら要注意。その原因には、やはり小麦が関係しています。
「がんばれない」というのは、言い換えれば、副腎(ふくじん)が疲労を起こしているということ。体内の各部位が炎症を起こし、副腎からコルチゾールがたくさん出すぎてしまっているのです。結果、「ただただ疲れる」状態になってしまうのです。

そんな気だるい朝に、副腎をとりあえず一瞬でも働かせるのにもっとも楽なのは、いったいどんな食事でしょうか?
それは、砂糖がかかった甘いパンと、ミルクや砂糖が入ったコーヒーのような、血糖値を一気に上げてくれる食事です。
■朝のドーナツが疲労を招く
「ドーナツと熱いカフェラテがなければ、一日がはじまらない」
この記事を読んでいる人の中にも、そんな人がいるかもしれません。少しややこしいですが、コルチゾールが出ると血糖値が上がりますが、血糖値が上がってもコルチゾールは上がります。
そのため、朝から甘いものを「食べたい」と感じる人は、すでに副腎が疲労気味。また、そのような食事をするからこそ、ますます疲れてしまう悪循環におちいるのです。
いまは、カフェやコンビニで朝から簡単に食事ができるので、むかしに比べて、総じて副腎疲労になりやすい環境が揃っています。
しかも、コーヒーにはカフェインが含まれているため、体のだるさや疲れを一時的にごまかすことができてしまう。
副腎疲労の人は、コーヒーやコーラを何杯も飲むような傾向があります。
そんな状態だから、しつこい疲れや倦怠感にいつまでも悩まされるし、慢性的な不快症状から、冷え症などの新たな症状も現れてくるのです。
■小麦で体が戦闘態勢になる
小麦によって体内に炎症が引き起こされると、その炎症の火消しのためにコルチゾールが分泌され、やがて副腎疲労の状態になっていきます。
また、炎症が引き起こされた部位は筋肉が硬くなり、緊張を引き起こしやすくなります。その理由は、筋肉を硬くしないと炎症やストレスと戦えないからです。

そうして必然的に筋肉が硬くなって、肩こりなどがひどくなっていく仕組みです。そんなとき、体の中では、戦うためのホルモン「カテコールアミン」が過剰につくられています。
カテコールアミンは、戦うホルモンの総称で、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどが含まれるもの。そして、このアミン類もまた、小麦などによって腸内環境が悪くなったときに過剰につくられてしまうのです。
■肩こりはパソコンのせいではない
カテコールアミンが分泌されると、交感神経の働きが高くなって、自律神経のバランスが崩れていきます。すると、つねに筋肉が緊張して硬くなってしまう……。
「背中にまるで板が入っているようで、痛くてつらい」
そんないい方をするほど、カチカチにこってしまう人はたくさんいます。また、「パソコンのせいで肩こりがひどくなった」と訴える人も多いのですが、これもまた副腎疲労になっている可能性があります。
ただし、副腎疲労だから肩がこるのか、実際に肩に過剰な負担がかかり、炎症があるから副腎疲労が進んだのか、見分けるのが難しい面があるのも事実。たとえば、鼻炎や副鼻腔炎などの場合は、炎症が起きた部分を筋肉が守ろうとして緊張し、それによって肩こりになる人もいます。
いずれにせよ、小麦によって腸内環境が乱れると、首や肩、背中のこりや痛みが引き起こされる場合が多くなるのは、たしかなことです。
■関節痛まで小麦が招いていた
「年を取るごとに、足腰のあちこちがひどく痛むようになって……」
そんな、膝などのつらい関節炎に悩む人もたくさんいます。
とくに女性の場合は、年を取ると多かれ少なかれ、関節軟骨がすり減っていく「膝関節症」という症状が現れます。
見た目は別に悪くなく、手術するほどでもないから様子を見ていたら、どんどん痛みがひどくなっていく……。体重や膝の骨のせいだと勘違いして、根本的な治療をしないこともよくあります。
しかしながら、こうした関節炎にも小麦が影響を与えています。
小麦をたくさん食べると腸が炎症し、腸内にカビが増えていくことは第1回の記事で紹介しました。そのカビが多い状態によって、「シュウ酸」と呼ばれる物質がつくられ、結晶化していきます。イメージとしては、関節のあたりに、クリスタルの物質がたくさんたまってしまうような感じです。
シュウ酸がたまると、体はダメージを受けるため、結局は疲労感となって現れます。なぜなら、シュウ酸は、カルシウムやマグネシウムといった、体に必要なミネラルをくっつけてしまうからです。
■骨まで弱らせる小麦の怖さ
カルシウムを取られてしまえば、体内のカルシウムレベルが下がり、とくに女性は、骨組織までリスクを抱えることになります。また、「腎結石(じんけっせき)」を引き起こす可能性も高まります。
同じように、マグネシウムを取られてしまえば、筋肉が硬くなっていきます。
すると、筋肉が骨を動かしたり支えたりしているので、足腰のあちこちが痛くなる症状が出てくるわけです。
ほかにも、発達のトラブルや、イライラなどの行動異常、頭痛、目の痛み、線維筋痛症(せんいきんつうしょう)などとの相関性が明らかになっています。
ただし、シュウ酸は、動物性脂肪(肉、魚、卵、乳製品など)や、野菜(ほうれん草、たけのこなど)に多く含まれており、シュウ酸を減らす食生活をすると、かえって必要な栄養が不足して体調を崩しかねません。
そこで、食べものからシュウ酸を抜くよりは、やはり小麦を食べないことで、まず腸の炎症を防ぐことがとても大切なこと。腸内のカビを減らすことで、シュウ酸が増えない状態をつくることが必要なのです。

*参考文献

1.グルテンフリーによる抗炎症作用、インスリン抵抗性の改善、減量効果

論文名: Gluten-free diet reduces adiposity, inflammation and insulin resistance associated with the induction of PPAR-alpha and PPAR-gamma expression

掲載誌: J Nutr Biochem 2013 Jun; 24(6):1105-11

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23253599/

2.グルテンフリー・カゼインフリーによる自閉症スコアの改善

論文名: The ScanBrit randomised, controlled, single-blind study of a gluten- and casein-free dietary intervention for children with autism spectrum disorders

掲載誌: Nutr Neurosci 2010 Apr;13(2): 87-100

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20406576/

3.グルテン関連する疾患のカテゴリー グリアジンのアミノ酸配列

論文名: Spectrum of gluten-related disorders: consensus on new nomenclature and classification

掲載誌: BMC Med. 2012 Feb 7: 10: 13

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22313950/

4.非セリアックのグルテンに関連する疾患

論文名: Non-Celiac Gluten Sensitivity: The New Frontier of Gluten Related Disorders

掲載誌: Nutrients. 2013 Sep 26; 5(10): 3839-3853

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24152744/

5.グルテン不耐症の症状など

論文名: An Italian prospective multicenter survey on patients suspected of having non-celiac gluten sensitivity

掲載誌: BMC Med. 2014 May 23: 12: 85

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24885375/

6.グルテンフリーによる免疫反応

論文名: Effect of gluten free diet on immune response to gliadin in patients with non-celiac gluten sensitivity

掲載誌: BMC Gastroenterol. 2014 Feb 13: 14: 26

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24524388/

7.グルテン関連疾患の分類およびグルテン不耐症に関する臨床症状など

論文名: Non coeliac gluten sensitivity - A new disease with gluten intolerance

著者: Grażyna Czaja-Bulsa

掲載誌: Clin Nutr 2015 Apr; 34(2):189-194

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25245857/

8.消化器症状、過敏性腸症候群とグルテン不耐症

論文名: US perspective on gluten-related diseases

掲載誌: Clin Exp Gastroenterol. 2014 Jan 24: 7: 25-37

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24493936/

9.アルツハイマー型認知症とグルテン不耐症

論文名: Diet Associated with Inflammation and Alzheimer's Disease

掲載誌: J Alzheimers Dis Rep. 2019 Nov 16; 3(1): 299-309

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31867568/

10.グルテン不耐症の症状、自己免疫疾患などの関連性

論文名: Extra-intestinal manifestations of non-celiac gluten sensitivity: An expanding paradigm

掲載誌: World J Gastroenterol. 2018 Apr 14; 24(14): 1521-1530

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29662290/

----------

本間 良子(ほんま・りょうこ)

医師、スクエアクリニック院長

米国発達障害児バイオロジカル治療学会フェロー。聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、同大学病院総合診療内科入局。副腎疲労の夫をサポートした経験を活かし、米国で学んだ最先端医療に基づく栄養指導もおこなう。また、日本で唯一、副腎疲労、グルテンフリー外来を開設している。

----------

(医師、スクエアクリニック院長 本間 良子)

編集部おすすめ