■立ち時間を2時間増やすだけで健康改善に
血糖値がちょっと高め。糖尿病にならないように、いまのうちに改善したい。こう思ったら、まずは食生活を改善し、あわせて体をよく動かすことが大切だ。運動をすれば、血液中のブドウ糖がエネルギー源になって血糖値が下がる。でも、運動するのは苦手。ジョギングなんて無理だし、筋トレも気が進まない……。こんな人もいそうだ。
それなら、頑張って運動するのはひとまず置いておいて、座ったままでいる時間を減らすことからはじめよう。日常のなかで、立っている時間を2時間増やせば、消費エネルギーが350kcal増え、インスリンの働きが3割程度アップする。しっかり運動をするのにこしたことはないが、ちょっと活動的に過ごすだけでも効果があるわけだ。
とにかく、こまめに立ち上がり、ちょこちょこ動くようにしよう。
体を動かすのが大事なのはわかる。でも、できれば運動はしたくない。こう思うのなら、いま以上に家事に励んでみよう。身体活動の強度を示す「メッツ」という単位がある。安静時を「1メッツ」として、さまざまな動き方を数値化したものだ。
■運動効果は「掃除機がけ>ウォーキング」
たとえば、時速4㎞ほどの普通の速さの歩きは「3メッツ」で、バレーボールや太極拳なども同じ強度だ。これに対して、掃除機がけは「3.3メッツ」、風呂掃除や床磨き、モップがけなどは「3.5メッツ」もある。ごく当たり前の家事をするだけで、ちょっとしたウォーキングや軽いスポーツ以上の運動効果を得られるわけだ。
料理の合間にスクワット、食器洗いは爪先立ちといったように工夫をすれば、もっと効果が高まり、血糖値の上昇具合が鈍くなりそうだ。
仕事をしていると、立ったり歩いたりする機会が多いので、それだけでもいい運動になる。しかし、リタイア組や家事専業の人の場合、自宅にこもりっきりになりがち。
スーパーや商店街まで歩くと、それなりのウォーキングになる。車で店まで移動する人も、店内では歩き回るので、やはり運動のチャンスといえる。買い物、イコール運動。このようにとらえて、まとめ買いをしないのがおすすめだ。
1回の買い物で大量に買い込むと、せっかくの運動の機会が減る。一方、その日に食べる新鮮な食材、いま必要な日用品だけを買うようにすると、頻繁に出かけざるを得ない。店内ではカートを使わず、カゴを手に持つと、一層いい運動になる。
■「1日1万歩」に科学的根拠はない
健康のためには「1日1万歩」歩かないといけない。血糖値が高いから、この歩数を目指して運動することが大切だ。このように思っている人はいないだろうか。
よく知られるようになったきっかけは、1960年代に日本で販売された「万歩計」。
このネーミングがとても秀逸で、頭に残りやすかったことから広まったとされている。ただ、国も「1日1万歩」運動を推し進めたことがあり、2000年に厚生労働省による国民健康づくり運動「健康日本21」のなかで提唱されていた。
しかし、2024年からはじまった第3次の「健康日本21」では「成人は1日8000歩」、高齢者は「1日6000歩」という少なめの歩数が推奨されている。健康効果はこれくらい歩けば十分。頑張って1万歩をクリアしても、上乗せされる効果はあまり期待できず、逆に関節やひざを傷める危険性が高まるとわかってきた。このため、8000歩、あるいは6000歩を目指すのがいいという考え方だ。
■日常に「+2000~2500歩」を意識する
ちょっとわかりにくいのは、この数字は通勤や買い物といった、日常の歩きを含めた1日のトータルということだ。きちんと歩数を測定しないと、日常の歩数プラス、どれほどのウォーキングが必要なのかつかめない。その意味から、血糖値が気になる人は、世界保健機関(WHO)のガイドラインのほうが参考にしやすいのではないか。
週に150分以上の中強度の有酸素運動をすれば、生活習慣病のリスクを減らせるという指針だ。
朝食前に10分、ランチ後に10分、帰宅後に10分といったような歩き方でかまわない。長らく運動不足の人は、徐々に体をならしながら、無理せず取り組んでみよう。
歩くのは最も手軽で、誰にでもできて、健康効果の高い運動だ。しかし、簡単過ぎるのでやる気が薄れて、なかなか続けられない人もいるようだ。そんな飽きっぽい人におすすめなのが、歩数計やスマホのアプリを使って、1日の歩数を「見える化」することだ。
■最初の目標は「低め」でいい
目標を設定しておくと、「よし、クリアできた」と達成感が湧いて、運動を続けるモチベーションになる。歩数の確認については、1日の中でたびたびチェックする習慣をつけておくといい。
夕方になってもまだ足りない場合などには、帰宅時にひと駅手前で降りて歩く、夕食前にウォーキングをするなど、目標達成に向けて意欲が高まりそうだ。
無理なく達成できるようになったら、ハードルを段階的に上げていくといい。
血糖値を下げたいのなら、運動するのは食事の前がいいか、それともあとのほうが効果的か。答えは、絶対に食事のあとがいい。食事をして糖質を摂取すると、ほどなく血糖値が上昇する。このとき、体を動かしてブドウ糖をエネルギー源として燃やせば、血糖値をスムーズに下げられる。
食後の運動は、急上昇する血糖値のスパイク(とげ)の角度を鈍くする効果もある。血糖値スパイクが繰り返されると、糖尿病のリスクが高まっていくので、普段の生活のなかでできるだけ防ぐことが大切だ。
これに対して、食事の前に運動をしても、食後の運動ほど血糖値を下げる働きはない。運動でブドウ糖を燃やしても、そのあと血糖値が上がるのだからもったいない。ジムで筋トレをしたあと、あるいはジョギング後のビールもやめておこう。
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工藤 孝文(くどう・たかふみ)
内科医
工藤内科院長。
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(内科医 工藤 孝文)

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