仕事の早い人は何をしているのか。心理学者の内藤誼人さんは「わずか短時間でも仕事を中断すると、元の仕事に再集中するのはものすごく大変だ。
仕事がどんどん遅れないためにも、ちょこちょこ息抜きしないで目の前の仕事に集中したほうがいい」という――。
※本稿は、内藤誼人『「すぐやる人」に変わる心理学』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■マルチタスクをすると行動も遅くなる
お客さまの電話を受けながらパソコンで別の作業をするなど、一度に複数の仕事をこなしていくことを「マルチタスク」と言います。
マルチタスクができれば、シングルタスクをする人より2倍以上の作業ができることになるわけですが、現実にはそんなにうまくはいきません。マルチタスクで効率よく仕事をこなそうとすると、かえって時間がかかってしまうのです。
考えてみると当たり前で、私たちはひとつの作業なら集中できますが、2つの作業に同時に集中することはできません。その分、行動も遅くなります。
カナダにあるカルガリー大学のジェフ・ケアードは、運転中に携帯でおしゃべりをしていると、携帯がハンズフリーでも、手に持っていても、反応速度が平均0.25秒遅れるという結果を得ています。
2つの作業をしていると、どうしても遅くなるのです。
さらに、マルチタスクをしようとすると、時間がかかるばかりか、仕事のミスも増えるという研究があります。
■ミスも3倍以上増える
ユタ大学のデビッド・ストレイヤーは、48名の大学生を対象に、シングルタスクとマルチタスクの場合で、どれだけミスが増えるのかを検証する実験を行っています。
シングルタスク条件に割り振られたグループは、コンピュータの画面で、マウスを操作し、動き回る標的をカーソルで追いかけるという作業をしてもらいました。
ただし時折、標的は赤色か緑色に点滅するので、赤色に点滅したときにはすぐにブレーキボタンを押さなければなりません。
マルチタスク条件のグループも同じ作業をします。ただし、マルチタスク条件では、さらに携帯電話で他の人と会話をしながら作業をしてもらいました。
実験が終わったところで、ブレーキボタンの押し忘れのミスを調べてみると、シングルタスクのときには約2パーセントでしたが、マルチタスクでは約7パーセントと、ミスが3倍以上も増えることがわかりました。
マルチタスクができれば、仕事もたくさんこなせそうなイメージがありますが、なかなかそんなに都合よくはいかないのです。
仕事をするのなら、やはり目の前の仕事をひとつひとつ片づけたほうが時間もかかりませんし、うっかりミスも予防できると思いますよ。
■中断すると再集中までに平均15分かかる
ほぼ2人に1人が、勤務時間中だというのにインターネットでサボった経験があるそうです。しかも、まったく悪びれずに。
カナダにあるサイモン・フレーザー大学のジェニファー・ラボワは、オンラインで募集した308名(平均29.4歳)にインターネットでサボって仕事を遅らせたことがありますかと尋ねると、50.7%が「ある」と答えました
また、インターネットで遊んで仕事を先延ばしする人にその理由を尋ねると、「ストレスの軽減になるから」とのことでした。
本人はインターネットでのサボりをまったく悪いことだとは考えていないようですが、これはかなりの問題です。
なぜかというと、わずか短時間でも仕事を中断すると、元の仕事に再集中するのはものすごく大変だからです。
いったん切れた集中力は、なかなか元に戻りません。本人はほんのちょっとの息抜きだと思うのかもしれませんが、集中力を元に戻すのに時間がかかることを考えると、相当のタイムロスになります。
イリノイ大学のシャムシ・イクバルは、マイクロソフト社の社員を対象にした調査で、仕事中に、メールに返信するために一時的に中断をすると、元の仕事に再集中するまでに平均15分以上かかることもあると突き止めています。
メールの返信はせいぜい1、2分ですみますが、それでもいったん切れた集中力を戻すのは大変なのです。
■私語厳禁、電話禁止の「がんばるタイム」
勤務中には、目の前の仕事に集中しましょう。そうしないと集中力が切れて、仕事はどんどん遅れてしまいます。
トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社では、元社長である吉越浩一郎さんが考案した「がんばるタイム」という時間帯が設定されていたそうです。
がんばるタイムの間は、私語厳禁で、電話なども禁止。自分の仕事に集中するわけですが、トリンプはこの取り組みで、全社残業ゼロと増収増益を達成したといいます。
がんばるタイムは、内閣府の「仕事と生活の調和推進室」などでも推奨されています。それだけ効果的な方法だということです。
仕事というのは、ちょこちょこ息抜きしていたら、いつまでも終わりません。

「これから2時間は、目の前の仕事に集中するぞ!」と自分なりのがんばるタイムを設定し、そのときにはインターネットで遊んだり、メールやLINEの返信などもやらないようにしましょう。

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)

心理学者

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。

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(心理学者 内藤 誼人)
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