※本稿は、野田知寛『仕事ができる人のアウトカム思考』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■仕事における「読む」は読書とは違う
皆さんは、本やニュース記事などを読むことは好きでしょうか。紙の本を好む人もいれば、スマートフォンで記事を読む人もいるでしょう。最近では、SNSのタイムラインを眺めることも「読む」に含まれるかもしれません。
いずれにしても、私たちは毎日、相当な量の文字情報に触れています。インターネット、チャット、メール、社内資料、ニュース、SNS。文字を読まない日はないと言っても過言ではありません。
ただし、ここで一度立ち止まって考えてほしいのは、仕事の文脈における「読む」とは、何を意味しているのかという点です。
ここでいう「読む」は、読書ではありません。知識を増やすことでも、教養を深めることでもありません。
仕事における「読む」とは、情報を探し当て、それを読み取り、自分のアクションにつなげることです。
つまり、「読む」は作業であり、成果物に向かうためのプロセスの一部です。
■読むこと自体が目的化するのはNG
情報を読むこと自体が目的ではありません。探し当て、読み解き、アウトプットにつなげる。これが、ビジネスにおける「読む」のゴールです。
ところが、現場ではよくこんな状態に陥ります。
調べているうちに、「何のために調べていたのかわからなくなる」。
記事を読んでいるうちに、「勉強になった」で終わってしまう。
資料を読み込んでいるうちに、「時間だけが過ぎていく」。
これらはすべて、読むこと自体が目的化してしまった状態です。
■目的意識、相手意識、コスト意識は何か?
こうならないために必要なのが、目的意識、相手意識、コスト意識の3つの意識です。特に「読む」において最も重要なのは、コスト意識です。
情報の海は無限です。
「この業界について教えて」「もっと詳しく教えて」「別の観点からも見て」――こうした問いに対して、ツールは延々と答え続けてくれます。
しかし、それが最終的に成果物につながっていくかというと、大半はつながらないのです。
目的から逸れたまま、情報収集だけが続いてしまう。
これが、読むという行為の最大の落とし穴です。
■「読む」「調べる」作業は、情報の海に溺れやすい
作業をしていると、往々にして目的意識を失いがちになります。これは誰もが陥りがちな人間ならではの特性です。
特に「調べる」「読む」という作業は没入しやすいと言えるでしょう。集中しているつもりで、実際には目的からどんどん離れていきます。
「この資料、よくできているな」
「この人の分析、面白いな」
そう思いながら読んでいるうちに、当初の目的がどこかに消えてしまう。
それ自体が悪いわけではありません。問題は、立ち返るポイントを持っていないことです。
■「目的から逆算する」調査に徹しろ
「今やっていることは、最終成果物につながっているか」
「目的に沿った情報収集になっているか」
こうしたチェックポイントを、作業の中に意図的に設ける必要があります。
特に「読む」「調べる」という作業は、情報の海に溺れやすい。ジャンプして、リンクをたどって、広告を見て、気づけばまったく別の世界に行ってしまう。
プライベートならそれでもかまいません。しかし、仕事においては情報の海に溺れないよう常にチェックするべきです。
■「読んだら負け」――読むことはゴールではない
私が研修の場でいつも口にするのが、「読んだら負け」というフレーズです。
これは、読むこと自体を否定しているのではありません。むしろ、読むことは仕事の中で欠かせない行為です。
ただ、「読む」という行為そのものは目的ではありません。大切なのは、読んだ結果として何をするかということです。
たとえば、上司から「この業界について調べておいて」と言われたとします。
そこで業界レポートを何十ページも読み、統計データを眺め、ニュース記事をいくつもチェックします。
読むという行為は、アウトプットを生み出すための手段です。読むこと自体が目的化した瞬間に、その仕事は失敗します。
だから私は、「読んだら負け」という少し乱暴な言い方をしているのです。読んで満足してしまったら負け、読むことがゴールになったら負け、という意味を込めています。
■まず、全体構造を一気に把握せよ
読むという行為は、次の3つのステップで構成されます。
1 まず、何を知るべきかを特定する(一次調査)
2 次に、知るべき情報を探して読み解く(二次調査)
3 最後に、読んだ内容をアウトプットにつなげる
ただ読むのではありません。この3ステップを通じて、目的に向かい、情報を探し、読み取り、成果物につなげていく――これが「読む」という行為の全体像です。
ここで、少し具体的な例を出します。
たとえば、総務省の『情報通信白書』や業界レポートを読む場面を想像してください。分厚い冊子やPDFで、200ページを超えることも珍しくありません。
多くの人は、「ちゃんと読まなきゃいけない」と考え、1ページめから順番に読み始めます。
だから、まずやるべきことは、全体構造を一気に把握することです。
目次を開きます。章立てを見ます。どの章にどんなテーマが書いてあるのかをざっと確認します。
たとえば、
第1章 市場環境の変化
第2章 業界構造の変遷
第3章 主要プレイヤーの動向
第4章 今後の展望
といった構成になっていたとします。
このとき、「今回の目的は競合分析だな」と判断できれば、第3章を中心に読むべきだとわかります。
また、「市場全体のトレンドを摑みたいな」と思えば、第1章と第4章を重点的に読めばいいのです。
こうして、読む場所を先に決める。これが一次調査です。
ここまでやって、ようやく本文を読み始めます。これが二次調査です。
■「何を読まないか」を決めよう!
一次調査で極めて重要なのは、「何を読むか」よりも「何を読まないか」を決める、ということです。
たとえば『情報通信白書』には、「本筋とは直接関係ないけれど、読んでみると面白い」コラムなどが掲載されています。「AIやロボットと協働・共生する未来に向けて」「特別インタビュー テクノスポーツの挑戦」といった見出しがつけられており、興味をそそられます。
でも、今回の仕事の目的が「法人向けサービスの市場分析」だったとしたら、これらのコラムは仕事とは一切関係がありません。にもかかわらず、つい読んでしまう。面白いから読んでしまいます。
これこそが、「情報の海に溺れる」ということです。
したがって、「今回はここだけを読む」「それ以外は読まない」と、最初に決めておくべきです。つまり、入手すべき情報の範囲(「広さ」と「深さ」)を事前に特定しておくことが必要です。
読むという行為において「やらないことを決める」という意思決定を行えるかどうかが、決められた時間内で成果を出すためのカギとなるのです。
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野田 知寛(のだ・ともひろ)
チェンジ 代表取締役社長執行役員
立命館アジア太平洋大学卒業。2007年4月、チェンジ(現・チェンジ・ホールディングス)の新卒一期生として社会人キャリアをスタート。アジア・オセアニア地域現地法人で組織変革、BPR、BPO、CRM導入等のプロジェクトに従事。中国現地にて中国人経営者向け研修事業の立ち上げを経た後、チェンジ研修事業に再参画。人材開発・組織開発サービスによる企業改革支援を手掛ける。2020年12月、執行役員。2023年4月、代表取締役社長に就任。
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(チェンジ 代表取締役社長執行役員 野田 知寛)

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