事業の利益を最大化するにはどうしたらいいか。経営コンサルタントの北島和泰さんは「私のクライアントであった赤字1800万円のエステ店は『新規顧客の沼』という罠にハマっていた。
しかしそこから脱却すると、わずか4カ月後には単月黒字100万円へとⅤ字回復した」という――。
※本稿は、北島和泰『amazonで学んだ「あなたの会社」の利益最大化』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■単月200万の赤字を4カ月で100万の黒字にした方法
「1:5の法則」
これは新規顧客に販売するコストは既存顧客に販売するコストの5倍かかる。要するに新規集客はリピーターの5倍大変という法則です。この法則を無視して、リピーターよりも5倍もお金も時間もかかる、新規集客に注力していないでしょうか?
この「1:5の法則」を実践しただけで、単月で赤字200万円から、たった4カ月で100万円の黒字になった会社があります。
営業利益率でいうと、マイナス33%からプラス15%への飛躍でした。日本企業の平均の営業利益率は、毎年約3%前後。5%を超えると優良企業と言われています。2%上げるだけでも四苦八苦している企業が多い中、たった4カ月で48%アップです。
この「1:5の法則」は、ある特定の事業にしか通用しないものではありません。全ての人に当てはまる人間心理に基づいた不変の法則です。つまり、このルールに身をゆだねるだけで、あなたの売上と利益は同じように大幅アップするのです。

新規集客が増え「新しいお客様が来てくれた!」というのは、とても喜ばしいことです。しかし時と場合によっては、新規顧客の増加は利益を下げる行為にもなります。
この罠にハマっていたのが、私にとっての初めての中小企業のクライアントだった赤字1800万円のエステ店でした。このエステ店は、既存のお客様のことよりも新規集客することに熱を注いでいました。
■「新規集客の沼」という罠
その当時注力していた施策は、次の3つです。
①インスタ発信

②TikTokの動画撮影

③新規顧客への割引
しかしこの3つ、全てうまくいっていませんでした。単に「うまくいっていない」というのではなく、質(たち)の悪いことに表面上は3つ全てが成功していたのです。
ある人気女優が来店し、インスタに投稿してくれたおかげで、ファンの方々が多数来てくれました。新しく取り組んだTikTokもバズりました。新規顧客に向け値下げをしたら、狙い通りに客数が増えました。
「あの女優さんが来て、しかも自分のインスタに載せてくれた!」とオーナーは大喜びでしたが、しかし結果はファンの来客が一瞬増えただけで、2度目の来店はありませんでした。それに加え、インスタ投稿直後の短期間に来店が集中したため、固定客の方が予約できなくなりリピーターが離れていき、利益は全然残らなかったのです。

TikTokもバズったのですが、再生回数が伸びただけで来客にはつながりませんでした。そもそも、視聴者の大半は物理的に通うことができない距離に住んでいたのです。
また、値下げで来店してくれた方は、質が悪くてスタッフが疲弊しただけでした。結論を申し上げると、このエステ店のケースでは、新規集客はうまくいかないほうがよかったのです。
計画していた①インスタ、②TikTok、③新規割引は、どれもオーナーの狙い通りになりました。しかし、利益にはつながらないどころか、赤字拡大の要因となり、にもかかわらず忙しさは増すという悪循環……。
「もう一体どうしていいか見当もつかない」
これが、このエステ店オーナーが抜けられなくなっていた「新規集客の沼」でした。
■顧客離れ5%の改善で利益は最低25%改善される
では、この一見、繁盛しているように見えるも、たとえ成功したとしても利益を生み出すことのできない「新規集客の沼」から、どうすれば抜け出せるのでしょうか?
答えはシンプルです。
「既存顧客を大切にする」
1:5の法則と合わせて覚えておいてほしい法則が1つあります。それは「5:25の法則」。これは「顧客離れを5%改善すれば、利益が最低でも25%改善される」というもの。簡単に言うと、既存顧客を逃さないように努めれば、利益率は大幅に改善されるという統計をまとめた法則です。

しかし、エステ店オーナーは、非常に大切なこの2つの法則を無視し、新規集客に走り、沼にハマって抜け出せなくなり、赤字を拡大させていました。
その額たるや一昨年度は1500万円、昨年度は1800万円、コンサル開始直前には単月だけで200万円の赤字に膨らんでいました。
■心理的警戒心のハードルを越えられるか
では、なぜ1:5の法則は、人間心理に基づいた絶対に変わることない真理なのか。
たとえば、あなたが初めて誰かと会う場合、その人が自分に害をもたらさない人かどうか、警戒しないでしょうか? 親が子供に向かって「知らない人についていったらダメよ!」というのも、見知らぬものへの警戒心の現れ。
ですが、何回か会ううちに警戒心は薄れ、逆に信頼感が増していきます。これは「単純接触効果」と呼ばれ、スタンフォード大学名誉教授だった心理学者ロバート・ザイアンスの研究からも示されています。
単純接触効果とは、接する機会が増えるほど、対象に対して好印象を抱きやすくなるという心理現象です。ビジネスの場合、この傾向はさらに顕著。なぜなら初対面にもかかわらず、何かを売ろうとされるのは明らかだからです。
つまり、新規顧客を獲得するには、この心理的警戒心のハードルを越えなければなりません。一方、既存顧客なら、このハードルはすでに越えています。何かを購入してもらう際に、どちらが容易かは明らかです。

■人は得することより、損しないことを優先
さらに「損失回避の法則」という心理学の理論によれば、人は得をすることよりも、損をしないことを優先する傾向があります。
①1万円を手に入れる

②1万円を失わない
どちらかの選択を迫られた場合、②の「1万円を失わない」という行動を取る人のほうが多いのです。これを、日常生活のお店選びの場合に当てはめると、「せっかくお金と時間と労力を使ったのに、全然よくなかった」という目には遭いたくありません。
そのリスクを避けるために、多くの人は“以前そこそこ満足したお店”をもう一度選ぶのです。
美容院を変えたら、イメージと違う髪型にされた。歯医者を変えたら、治療が雑で痛かった。こうした“失敗の痛み”を避けようとするのが、人間心理なのです。
だからこそ、一度来て満足し、リピートしてくれた既存顧客こそ、最も大切にしなければなりません。彼らは、新規顧客の5分の1のコストで通い続けてくれる存在です。
もし、あなたが常連として通っているお店が、新規顧客ばかりを優遇し始めたらどうでしょう。気持ちはわかっても、あまりいい気分はしないはずです。
そんな状況が続くと、足しげく通っていたお客様も、次第に足が遠のいてしまいます。
つまり、新規集客でコストがかかるうえに、最も大切なリピーターまで失ってしまうことになるのです。
■新規集客はリピーターの5倍のコスト
そこで私は、このエステ店オーナーの幸子さん(仮名)に、思い切って新規集客を一切やめてもらいました。
おそらく相当怖かったと思います。「お客様がゼロになったらどうしよう!」と躊躇したはずです。でも、もうやめるしかありませんでした。新規集客はリピーターの5倍のコストがかかり、さらに過度な新規優遇が既存客の信頼を損ね始めていました。
だからこそ、インスタやTikTokの更新、新規割引の実施を全て停止し、浮いた時間の全てを、既存顧客の満足度向上に注いでもらいました。
すると、売上と利益はみるみる増え始め、まさに「5:25の法則」通りの現象となりました。
顧客離れが減った分、利益が直結して上がり、単月で赤字200万円(営業利益率マイナス33%)だったのが、わずか4カ月後には黒字100万円(営業利益率+15%)へとⅤ字回復。実に48%もの改善を果たしたのでした。

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北島 和泰(きたじま・かずひろ)

経営コンサルタント、ビズフォーム 代表取締役

1980年、兵庫県神戸市生まれ。神戸大学工学部応用化学科卒業、神戸大学大学院自然科学研究科卒業、Washington University in St. Louis MBA卒業。
Amazon Japan MBAインターンを経験、その際に経費700万円で利益40億円の実行詳細案を2カ月で完成させる。アマゾン副社長にプレゼン直後「Great Work、すぐにやれ!」と即採決された。その後、製薬会社として世界第2位の売上を誇るMSD株式会社のビジネス開発部に入社。数年を経て独立し、ビズフォームを設立して代表取締役に就任。現在は経営コンサルタントとして活動している。「赤字1800万円のエステ店を4カ月で黒字化」や「お弁当屋さんを3カ月で月商が対前年度比2.8倍に」など、利益構造を根幹から見直し長期的に顧客が来続けてくれる構造構築をしている。

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(経営コンサルタント、ビズフォーム 代表取締役 北島 和泰)
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