宮城県仙台市を拠点とするブラインドサッカーチーム「コルジャ仙台」の守護神であり、ファイテンショップ泉大沢店の店長を務める佐々木智昭さん。かつてフットサルのプロリーグ「Fリーグ」のヴォスクオーレ仙台で活躍した彼が、30歳を目前にした2017年、運命に導かれるように出会ったのが「ブラインドサッカー」という未知の世界でした。
「なぜ止められない?」――プロの自負を打ち砕いた暗闇の衝撃
――佐々木店長は元々、サッカーやフットサルのプロとして第一線で活躍されていました。まず、これまでの競技人生についてお聞かせください。
佐々木: サッカーを始めたのは幼稚園の頃です。実は、子供の頃は少し太っていて走るのが嫌いだったんですよ(笑)。「キーパーなら走らなくていいよ」という言葉に惹かれて、小学4年生から本格的にGKの道を歩み始めました。転機となったのは、元Jリーガーの佐藤洋平選手(元鹿島アントラーズ他)との出会いです。プロの立ち居振る舞いに魅了され、「本気でプロを目指そう」と心に決めました。
――大学卒業後もプロへの挑戦を続けられましたが、苦労も多かったと伺っています。
佐々木: Jリーグのチームの練習にも参加しましたが、身長(181cm)がネックとなり、なかなか契約には至りませんでした。その後、地元仙台に新設されたフットサルのプロチーム「ヴォスクオーレ仙台」に入団しましたが、30歳を前にして「引退するか続けるか」という葛藤の中にいました。そんな2017年、知人に誘われて観戦したのがブラインドサッカーだったんです。
――初めてブラインドサッカーを観た時の率直な感想はいかがでしたか。
佐々木: 衝撃でした。目が見えない選手たちが、なぜあんなに激しくぶつかり合い、正確にゴールを決められるのか。逆に「タイミング、シュートの質などどんなシュートなんだろう?シュートを受けて止めたい」という純粋な、少し不遜な好奇心も湧きました。サッカーとフットサルでやり残した想いを、もう一度この「日本代表」という舞台がある競技で爆発させたい。その一心で2017年11月、未知の世界へ飛び込む決意をしました。
「言葉」は命綱。暗闇のピッチで磨かれた「言語化」の技術
――サッカーとフットサル、そしてブラインドサッカー、同じ「守護神」でも役割は全く異なりそうですね。
佐々木: 全く違いました。ブラインドサッカーのGKは動ける範囲がゴール前わずか2メートルに限られていて、それより前に出てしまうと即PKを取られるんです。ちなみにサッカーはコートが広い分、キーパーも「考える時間」に少し余裕がありますが、フットサルはコートが小さい分、常に情報のアップデートが速く「脳疲労」が激しい競技です。ブラインドサッカーはそれに加え、自分以外の4人の選手を「声」だけで導かなければならなくて・・・。ボールの中に複数の鉛玉が入っていて、ボール自体も音が鳴るんですが、それ以上に「声」での指示が重要になってくるんです。
――ブラインドサッカーは、攻撃の際にゴールの位置などを伝えるガイド、ピッチ中盤の選手にサイドフェンスの外から声を掛ける監督(センターガイド)、そして主に守備に関する情報を与えるキーパーという役割分担があるそうですね。
佐々木: 声を掛けられる範囲が決まっていて、範囲外の選手に声を掛けるとファウルになります。なので、ガイドとセンターガイドがどういう指示を出しているのかを想像しながら声掛けをする必要があって。
――それぞれの指示が異なると、選手もどう動いていいのか混乱しますよね。
佐々木:ガイド、センターガイドと僕の3人で一緒の絵を描きながら声掛けをすることが大切になってきます。ただ、僕自身もブラインドサッカーを始めた当初はすごく戸惑って・・・。
「言葉」をセンサーに。見えない選手との魂の対話
鶴埜: 先ほど「同じ絵を描くことが大切」と話されていましたが、そもそも目が見える方が思い描く絵と、視覚情報がない選手たちが描く絵って根本的に違うので伝え方がとても難しそうに思います。サッカーやフットサルと違って身体的な動きの制限以上に、頭の使い方が全く異なるんでしょうね。
佐々木: まさに「脳疲労」との戦いでした。一番の苦労は「指示(コーチング)」です。サッカーでもGKが指示を出す場面はありますけど、最終的には個々の選手がそれぞれで判断してプレイをすると思うんですね。だけどブラインドサッカーでは、フィールドの選手は僕の声を100%信じて動きます。僕が「右」と言えば、彼らは迷わず右に踏み込む。2019年に日本代表候補に選ばれてからは、その重みがさらに増しました。
鶴埜: なるほど。また言葉の正確な選択だけでなく、その使い方も大事ですよね。プレイ中の映像を拝見しましたが、佐々木さんの指示を聞いていると、状況によって声のトーンを巧みに変えているのが印象的です。
佐々木: 選手は僕の声からピッチの緊張感の他に、僕自身の「焦り」や「落ち着いている」など状況を敏感に感じ取ります。例えば、僕が急に大きな声を出すと「今、ピンチなのでは?」と慌ててしまう選手もいるので。どんなに緊迫した場面でも、意図的に落ち着いたトーンで「今、右から来るよー」とやんわり長く伝える。逆に一瞬の勝負どころでは「右!」と強く短く。言葉を「演じる」ことで、選手のパフォーマンスを最大化するんです。
鶴埜: 声の掛け方で現状を伝え、またその後の展開まで作ろうとされているんですね。
佐々木:僕自身も一緒に戦う5人目の選手ではありますが、あくまでもブラインドサッカーは視覚障害者の方の競技なので、選手たちが思い切りプレイできるように支えてあげなきゃいけないし、引っ張っていきたいなと思うようになりました。長年ブラインドサッカーに携わる中で、自分の「キーパー像」はガラッと変わりましたね。
「私生活から見抜く」――観察眼が生む圧倒的な信頼関係
鶴埜: 先天的に視覚のない方と、中途で視力を失った方ではおそらくプレイスタイルが違うと個人的には思いますが、実際はいかがでしょうか?
佐々木: 正直、全然違います。やはり途中で目が悪くなった方はサッカーのことを視覚的に知っているのでシュートの蹴り方が違うんですよ。経験のある方は「サッカー蹴り」だけど、視覚情報のない方は「トウキック」になっていたり、体の入れ方も違います。
鶴埜:さらに、空間の認識の仕方が大きく異なると思います。様々な医学論文の知見だけでなく、過去に拝見させていただいた、たくさんの患者さんたちからいろんなお話を聞いてきました。人間の視覚の情報は目にあるセンサーからの信号を後頭葉と呼ばれる場所で処理されることで、やっと「見る」ということになります。同じく聴覚の情報は耳にあるセンサーからの信号を側頭葉で処理して「聞く」ことになります。後天的な視覚障害の場合、後頭葉は視覚的にでき上がっていますので、センサーやその信号を伝える神経経路が損傷して、「見る」ことができなくなっても、後頭葉が残っているため視覚的イメージを再認することができます。そのため、夢を視覚的に「見る」ことができるそうです。しかしながら、先天的な障害の場合、これは様々な説があるのですが、聴覚のセンサーの情報を活用した空間の認識に後頭葉が運用される場合があり、足音や白杖の反響音を活用して空間の構造物の認識を始め、自身や他者の移動を認識すると言われています。
佐々木: 実際に先天的に視覚障害のある選手は、(手をパン、パンと叩く)この反響音だけでどこの位置に僕がいるかすぐに分かると言います。足音を始めとしたあらゆる微かな音を拾っているので、僕がちょっと動いただけで「今、動いたよね?」と指摘されて「どうして分かるの?」と答えると「気配で分かるよ」と。
鶴埜: やはりそうですか。特にスポーツをされる方々はそういうところが敏感なのだと思います。
佐々木: あとは個々でトラップの仕方も違うので、常にフル回転で頭を働かせています。先天的なのか後天的なのかということもありますけど、普段から選手一人ひとりの「空間認識の癖」を知るために、私生活から徹底的に観察するようになりました。
鶴埜: 患者さんたちを見ていても、例えばご飯を食べる時に個々の食器へのリーチの仕方だとか、もしくは慣れない病院でもトイレにスムーズに行くとか・・・。そういう方は本当に空間の把握が上手だなと思います。また、空間は体性感覚も重要ですので、身体への意識も鋭いなと個人的には思っています。
佐々木: そうですね。総じて、皆さん意識が本当に高いです。視覚障害者の方たちを見ていて思うのは、限界を自分で決めないというか、人間には無限の可能性があるということです。筋トレやセルフケアなどの努力もかなりされています。ボディケアというと、一般的にはマッサージに行って誰かにケアしてもらうことが多いイメージですが、視覚障害者の方は通うことが難しいので、自分自身でケアをしっかりされていて。そういう姿を見ていると僕自身も幼い頃からもっと努力できたはずなのに、と後悔してしまう瞬間もあって・・・。ブラインドサッカーをするようになって、初めて自分の身体とちゃんと向き合えた感覚があります。
ファイテンとの出会いと、店舗を「人生の伴走」の場にする決意
――佐々木店長がファイテンショップで働くことになったのは、どのようなきっかけだったのでしょうか。
佐々木: 実は、大学生の頃からファイテンの利用者だったんです。所属していたフットサルチームが現在の勤務先である泉大沢店と繋がりがあり、リカバリーのために酸素カプセルなどのケアによく通っていました。プロを引退し、ブラインドサッカーに専念するための仕事を探していた時、たまたま通い慣れたこのお店の求人を見つけたんです。自分が体感してきた良さを、今度はお客様に伝えたい。2018年、ユーザーからスタッフへと立場を変えて、僕の第2のキャリアが始まりました。
――ブラインドサッカーでのそれらの経験は、現在ファイテンショップでの接客にも活かされていると伺いました。
佐々木: はい。お客様がお店に入ってこられた瞬間の足取りや、デモンストレーションで重りを持っていただいた時の「上げ方」を見れば、身体のどこに負担がかかっているか、どこの筋肉が使えていないかが、ある程度予測できるようになりました。「ここは辛くないですか?」と聞くと「そう、お医者さんからも言われているのよ」と驚かれることも多いです。
鶴埜: 単に商品を薦めるのではなく、お客様自身の「身体の変化」に気づいてもらおうと心掛けていらっしゃるんですね。
佐々木: 僕が一番大切にしているのは、お客様に「自分の身体を知ってもらうこと」です。お客様にはよく「ローションを塗りながら、自分の身体と会話してください」とお伝えしています。ただ塗るのではなく、「今日はここが硬いな」「昨日はもっと動けたのに」「ということは疲れているのかな」などをご自身で感じること、それが最高のリカバリーの第一歩なんです。僕自身、ブラインドサッカーの選手たちが誰よりも入念に自分の身体をケアする姿を見て、自分の身体と向き合う大切さを教えられましたので、そこはお客様にもぜひ伝えたいですね。
鶴埜: とても興味深いお話です。「お客様と一緒に身体の課題を探り、共に『健康』というゴールを目指す」というファイテンの理想を体現された接客をされていらっしゃるんですね。
佐々木: ショップは、お客様一人ひとりに合った「セルフケア」を提案できる場所にしたいと思っていますし、「ここに来れば身体も心もリセットできる」と感じていただけるような、お客様の人生に伴走するリカバリー拠点でありたいです。
「アクアチタン浴カプセル」がもたらす、アスリート店長の脳リセット
鶴埜: ブラインドサッカーは展開を読むことがとても難しいスポーツの一つだと思いますが、その中で選手はもちろんガイドやセンターガイドの動きを見つつ、言葉のトーンも変えてGKをこなされていらっしゃいますよね。味方の選手と敵の選手の動きを観察しつつ、先を読んで必要な指示を出す、という内容をひたすら続けていると、目や首にとても負担がかかって、疲労による頭痛を生じたりしないでしょうか?
佐々木: おっしゃる通りで、僕はもともと偏頭痛を持っているんですが、ブラインドサッカーを始めてからは違うところに頭痛が出るようになりました。あと僕は右肩が下がっていて、左の骨盤が後傾しているので、肩甲骨の左側に強い張りがあるんですよ。身体の右側は外が張りやすくて、内側はあまり使えていないなと自覚していて。
鶴埜: すごい! そこまでご自身で身体のことを言語化できるのは、ブラインドサッカーを通じて培われた「身体との対話」の成果ですね。身体の動きにも左右差があるんじゃないでしょうか?
佐々木: 今、まさにそこが僕の課題というか。僕は右と左のセービングが違うんですけど、それは身体の使い方が影響しているんですよね。
鶴埜: 佐々木選手の場合、両足が扁平足です。しかし、いわゆる外反母趾のような悪いタイプの扁平足ではなく、土台を安定させるために、そうなっていったのだと思われます。今後、足のトレーニングやケアをされて、少しアーチを戻すことで、足にかかる衝撃の緩和を図って負担を減らしていただければと思います。また、その土台の安定に基づいて、骨盤の左右差をなくして、体幹の左右対称性を改善することで、脊柱にかかっていた負担を減らすことができ、さらに首や目にかかる負担も軽減されると思います。
――佐々木店長自身も、ファイテンの技術を日々のコンディショニングに取り入れているそうですね。
佐々木: 仕事の合間や練習前後に入る「アクアチタン浴カプセル」は欠かせません。8時間勤務や激しいトレーニングが続くと、どうしても脳が疲弊してお客様の話が頭の中にしっかり入ってこなくなったり、話したいことをクリアに伝えられなかったり、時にはネガティブな感情が湧いてくることもあったんです。それがカプセルの中で「無の時間」を作ることで、脳がリセットされて集中力が上がって、朝出勤した時のようなリフレッシュした状態で再びお客様やピッチに向き合えるようになるというか。
鶴埜: 佐々木選手のように、ブラインドサッカーのキーバーとして、リアルタイムに敵・味方のすべての選手の動きを瞬時に把握して、自軍が有利になるような戦術をイメージして適切な指示を出す・・・脳の消耗は激しいことと思います。だからこそ、ファイテンショップが提供する「リセットのための技術」が不可欠なんだと思います。「アクアチタン浴カプセル」に入って、先ほどお話のあった目や首、体幹の様々な筋肉を緩ませて疲労回復する。またそれにとどまらず、体幹を左右対称に戻して、脊柱の動きをスムーズにすることで、頭もスッキリさせられると思います。興味深いのは、佐々木さんがカプセルに入った際、「片方だけ温まって、片方は温まらない」と感じることがあるそうですね?
佐々木: そうなんです。あれはどういう現象なんでしょうか?
鶴埜: 「筋肉が力んでいる」という身体からのサインです。神経が圧迫されている側は血流が再開しにくいため、温かさを感じにくい。ファイテンの技術は筋肉を緩める働きがあるため、緩んだ場所から血流が戻り、温かく感じるようになります。つまり、温まらない側こそ、より重点的なケアが必要なポイントなんです。ファイテンショップは、そうした「自分の身体の現在地」を知るための場所でもあるんですよね。
佐々木: なるほど。自分の身体の癖が、温かさの差として現れていたんですね。これからはお客様にも、その感覚を指標にしたケアを提案できそうです。実際、カプセルに入った後は身体のキレが全く違います。自分でもその違いを体感しているからこそ、お客様にも「なぜこの商品が必要なのか」を自分の言葉で、熱量を持って伝えていきたいですね。
東北から世界、そして地域の健康へ
――最後に、佐々木店長のこれからの目標を教えてもらえますか?
佐々木: まず競技面では、所属する「コルジャ仙台」を再び日本一へ導くことが直近の大きな目標です。2025年に日本選手権で優勝を果たしましたが、2026年は4位という結果に終わりました。その悔しさを糧に、結果を出し続けることで、東北でのブラインドサッカーの認知度をさらに高めていきたいです。そして、日本代表強化指定選手として、2028年のロサンゼルス・パラリンピックでのメダル獲得に、強い覚悟を持って挑もうと思っています。フットサルのプロ時代に果たせなかった「日本を背負って戦う」という夢を、必ず掴み取りたいです。
鶴埜: 素晴らしい目標ですね。その情熱は、間違いなく店舗のお客様にも伝わっていくと思います。
佐々木: ショップのスタッフとしては、やはりお客様一人ひとりの人生に寄り添う「伴走者」であり続けたいですね。ブラインドサッカーの選手たちが自ら入念にケアする姿を見て、僕もケアの大切さを教わりましたし、その経験を活かして、お客様が「自分の身体と会話する」ための手助けをしていきたいです。
――地域の方々にとって、どのようなお店でありたいですか?
佐々木: 病院に通っている方も、そうでない方も、ファイテンの技術を通じて自分の身体を正しく知り、未来の健康を一緒に作っていけるような店舗を目指しています。皆さんの悩みを見抜く「観察眼」をさらに研ぎ澄ませ、お客様の期待を超える健康提案をしていきたい。ピッチでも店頭でも、周りの方々の明日の笑顔を支え続けていきたいです。
【対談を終えて】
「僕は、お客様と一緒に伴走できるようなお店にしたいんです」。そう語る佐々木店長の瞳には、守護神としてゴールを守る時と同じ、力強くも優しい光が宿っていました。ブラインドサッカーという「見えない世界」での奮闘が、彼に「人を見る力」と「心を通わせる言葉」を授けました。それは、単に製品を売るだけではない、お客様の人生という長いレースに寄り添うファイテンの精神そのものです。
2028年のロサンゼルス・パラリンピック出場という夢を追いかけながら、今日も佐々木店長は泉大沢店の店頭に立ち、お客様の身体の小さな変化に耳を澄ませています。ファイテンは、挑戦し続けるアスリート店長と共に、これからも「健やかな未来」への伴走を続けます。
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