2017年2月に誕生した「湖池屋プライドポテト」は、ポテトチップス市場にプレミアムポテトチップスというカテゴリを新たに創出しました。以降、消費者の求める理想の美味しさを追求すべく改良を重ね、新しいアイテムを投入し、刷新を続けています。
●たったひとつの死角
「プライドポテト」が消費者に選ばれる理由として多く寄せられるのが、“国産じゃがいも”を使用しているという点です。湖池屋の調査によれば、食品や飲料の分野で「通常より価格がやや高めでも、買ってもよいと思う食品・飲料の特徴は?」という質問に対してもっとも多くの回答を集めたのが、「国産であること」でした。そこで、リニューアルにあたっては、国産じゃがいもの美味しさを最大限に引き出すことを重視する方針としました。もちろん、「プライドポテト」はこの方針を今までもずっと守り続けてきました。それがよく表れているのが、独自の製法であるノンブランチング(じゃがいもを湯通ししないこと)です。
通常、ポテトチップスを作る際には、スライスしたじゃがいもを湯通ししてでんぷんや糖分を洗い流します。これは揚げるときの焦げを少なくするために必要な工程ですが、じゃがいもの旨みまでお湯と一緒に流れてしまうことは避けられません。
「プライドポテト」はその湯通しをしないことで、じゃがいもの旨みを残すことにしました。当然ながら焦げやすくはなりますが、焦げにくいじゃがいもを選別することや、フライ条件を工夫することで、問題をクリアしたのです。「旨みを追求すれば焦げる、焦げを避ければ旨みが逃げる」。この、一見して覆しがたい自然の摂理に反する“両取り”を、たくさんの手間をかけることによって実現しているのが「プライドポテト」なのです。
ただ、そんな「プライドポテト」にも課題がありました。
「美味しい、風味がいいというプレミアム感のスコアは非常に高い一方、飽きない味、食べやすい味であるといったスコアは平均並みだったんです」(湖池屋 マーケティング本部 マーケティング部 第3課 小田莉央)
「飽きない」「食べやすい」が低いとは言わないまでも、平均並み。これが意味するのは「“連食性”にまだ伸びしろがある」ということです。盤石と思われたプレミアムポテトチップスに見出されたわずかな死角。欠点とは言わないまでも、高みを目指すために潰しておく改善点。マーケティングチームはこれを見逃しませんでした。
●自然の摂理に反する
注目したのは、ポテトチップス好きがもっと夢中になる美味しさを目指して開発した「やみつきオイルによる2段階の味付け」でした。これはノンブランチング、3つの温度帯によるフライと合わせて、湖池屋が「やみつきエンドレス製法」と呼んでいるうちのひとつの工程。プライドポテトのアイデンティティと言ってもいい工程ですが、このやみつきオイルの添加量を0.1%単位で調整し、連食性をさらに高める最適解を模索することにしました。
「軽く食べやすくするために、ただ、オイルの量を減らすだけでは、味が足りなくなってしまう。旨みが減退し、満足感が損なわれてしまうのです」(小田)
そこで開発部は考えました。
「オイルを減らした分は味付けで調整することにしました。味が“中抜け”しないように、それでいてじゃがいもの旨みが立つように、外掛けする岩塩や海苔や黒胡椒を細かく調整したんです」(湖池屋 R&D本部 プロダクト開発部 主任 上平耕太郎)
実食してみると、たしかに既存商品である「ぞっこん岩塩」「神のり塩」「ドはまり黒胡椒」の連食性は上がっています。1枚1枚の満足度は変わりませんが、「次の1枚」に手を伸ばしやすいのです。
「気がついたらもう1袋食べてしまっていた、自然に購入量が増えていた、というのが目指すところです」(小田)
味付けがはっきりと変わったわけではありません。言われてみるまでわからない、わずかな変化といえばそうです。ではなぜ、そこまでこだわるのか。これには理由がありました。
「10年前のブランド立ち上げ当初、まったく新しいカテゴリを開拓できた一方で、従来のスナックユーザーを取り切れていないという課題もあったんです。『いいもの』に見えすぎているというか、毎日食べるものになりきれないというか。今回の改良も、言ってみればその延長にあります。日常的に食べてもらえるように連食性を上げ、接触点を増やしたい」(小田)
プレミアムなご褒美感や特別感はキープする一方、日常的に手にとってもらえるような連食性も追求する。これもまた自然の摂理に反する“両取り”ですが、今回はそれを極限まで追求しています。
さらに、「接触点を増やす」はパッケージデザインの一新にも現れています。
「従来の品質感があって凛とした佇まいのデザインは価値を伝えるうえで効果的でしたが、ロゴが小さいので店頭で『プライドポテト』だと気づいてもらえないこともありました。また、他のポテトチップス商品の派手なデザインと比べると白の割合が多いので、“味感”が伝わりにくかったんです」(小田)
そこで今回は、品質感を兼ね備えつつ力強く、堂々としたロゴに刷新するとともに、売りである「国産芋100%」を目立つように大きく配置。
●濃厚さと連食性を両立させた「情熱コンソメ」
味覚設計とパッケージデザインの刷新だけでは、リニューアルとは呼べません。やはり目玉は、新しくラインナップに加わる「情熱コンソメ」です。
ポテトチップス市場においてコンソメ味のシェア(12.6%)は、うす塩(22.1%)、のり塩(14.4%)に次ぐ第3位※。市場全体として商品数も多く、現在進行形で伸長を続けているカテゴリです。
※インテージSRI+ 推計販売規模 (金額) 全業態 期間:2025年1~12月(生ポテト)
ただ、一口にコンソメと言っても味の設計によってターゲットは変わってきます。たとえば湖池屋の「ポテトチップス 金のコンソメ」はご褒美需要というよりはデイリー需要、全世代にバランスよく食べてもらうブランド。一方、競合他社の某商品は、デイリーかつファミリーに寄った味付けと打ち出しでコンソメポテトチップスのシェアを圧倒的に取っています。
今回、プライドポテトで投入する「情熱コンソメ」のポジショニングははっきりしています。ファミリー相手というよりは大人に食べてもらいたい。大人のご褒美需要。大人たちを唸らせる、コクが深い王道の濃厚コンソメ味です。
「コンソメらしい味の濃さを追求するのは、『ポテトチップス 金のコンソメ』と共通していますが、『プライドポテト』らしい一口目のパリッとした崩壊感と、一口目のコンソメ味のピークが一致するようなバランスを目指しました。
実食してみると、香味野菜の旨みが口いっぱいに充満する、料理感の強い味わいが印象的です。そして、最初に口に入れた際の濃厚さにインパクトはあるものの、その濃厚さがもたついて口内に残留するわけではありません。これが連食性を高めています。
「トップのアタックは強くしていますが、一方で食べ終わり時にキレをもたせて強弱をつけました。トップとラストの差によって、次の1枚に手を伸ばさせる狙いです」(上平)
最初から最後まで濃厚だとそれで満足してしまうので、次の1枚に手が伸びません。だからキレをもたせて良い意味の物足りなさを少しだけ演出する。一見して両立させにくい濃厚さと連食性を両立させるべく、精密な味覚設計が施されているのです。
両方は追求しづらいものを、両方とも追求する。「プライドポテト」が10年にわたって貫いてきたこのスタンスは、新アイテム「情熱コンソメ」においても変わることなく貫かれています。
●10年で消費者は変化した
連食性を重視する背景には、最近の消費者傾向があります。「1袋のポテトチップスを数日に分けて、少しずつ食べるお客様が増えてきたんです。だからこそ連食性を上げることによって、買ったその日のうちに1袋食べてもらいたいなと」(上平)
1袋を少しずつ食べる。
「今まで『プライドポテト』は、ポテトチップスの価格帯で手に入る日常のプチご褒美需要で食べられてきました。ただ毎年のように物価が上がっている中、そのご褒美ポジションすらも危うい。少しでも安い商品があれば、そちらの方がやはり手に取られやすいですから。でも、だからこそ、食べて感じていただける品質感を今まで以上に追求していかなければなりません」(小田)
多くの消費者の支持を集めているからといって、そこにあぐらをかいてはいけない。世の中の動きや消費者の嗜好変化に合わせて、常に進化させていく。その意味で「プライドポテト」に完成形はないのかもしれません。
「この10年で、お客様がポテトチップスに求めるものの傾向が変わってきました。かつては『味が濃くて好き』『味が薄く食べやすくて好き』といった声が多かったんですが、年々『ちょうど良くて好き』『自分に合っているから好き』といった考え方の方が増えているんです」(上平)
「食べやすくて好き」と「ちょうど良くて好き」の違いは微妙であり、それを汲んだ味覚設計は、そう簡単に言語化できるものでも実現できるものでもありません。しかし、その超絶難易度の課題をなんとか解決して商品に落とし込もうとする姿勢こそ、「プライドポテト」のプライドである――とも言えるでしょう。
進化をやめない「湖池屋プライドポテト」は、これからも高みを目指し続けます。