もはや生成AIは日常の一部になりつつあるが、一部の人々はより巧妙な使い方を駆使している。SPA!が全国4000人に利用実態を調べた結果から見えたのは、知らぬ人ほど損をする「AIハッタリ社会」の実態だった――。

AIを活用している人の割合は…

「2週間かかる仕事が1時間で終了」社外AIで資料を作成…あえ...の画像はこちら >>
連日「AIブーム」がニュースを賑わせているが、そもそもどの程度の人が生成AIを日常使いしているのか。今回、SPA!は全国4000人にAI利用の実態調査を行った。すると、生成AIを「ほぼ毎日使っている」のは1割強にすぎず、約半数はいまだ未使用・未接触という意外な結果に……。また、その用途も「調べ物・要約」「メール作成」といった無難な活用が大半を占めた。

このように多くの人にとって生成AIは、まだ他人事かちょっとした便利グッズにすぎないようだ。しかし一方で、生成AIを普段使いする層では「AIを使ってズルをしたことがある・他人がズルをしているのを見た」という回答が3割以上に達した。

大半が表層的な使い方にとどまるなか、その裏ではAIを使い倒して利益を貪る“AI強者”たちが存在しているのだ。では、AI強者はどのような使い方をしているのだろうか。エピソードを見ると、3段階の悪質性に分けられるようだ。

あなたは生成AIをどのくらい使っていますか?

全く使ったことがない 47.55%

ほぼ毎日使っている 12.35%

週に数回使っている 11.33%

たまに使っている 13.45%

その他 15.32%

※アンケートツール「Freeasy」にて、22歳以上の男女4000人を対象アンケート調査を実施。期間は’26年6月26日~28日

AIで資料を作成し“誰でも作れるレベル”に修正

「2週間かかる仕事が1時間で終了」社外AIで資料を作成…あえて“ダサく修正”してバレずに乗り切った42歳会社員の告白
ワル知恵[AI活用]術
最も頻発しているのが「労力ごまかし」型で、会社員の田中誠さん(仮名・42歳)のケースだ。今年度から勤務先でもAIが解禁されたが、使えるのはCopilotのみ。メールや議事録の作成には使えるものの「マイクロソフトのAIなのに、パワポがまともに使えないんですよ。謎なんですけど」と田中さんは苦笑する。

「新人向けの研修資料を作ることになった際、在宅勤務の日に社内資料を自宅のパソコンに転送し、無料版のGeminiで資料を仕上げました。
通常2週間かかる作業がわずか1時間で終わってしまったのですが、あまりに早く終わると怪しまれるので、締め切りギリギリまで意図的に寝かせておいて『昨日は夜遅くまでやって、やっと終わった!』と同僚に言いました」

なぜ彼はそこまで“ウソ”を盛らなければならなかったのか。

「社内のCopilotでは作れないはずの資料ができてしまった。それに私用PCに社内資料を転送するのもウチではご法度で、二重にNGなんですよ。だからこそ、逆に目立てなかったんです」

バレないための工夫も周到だった。AI特有の“こなれすぎた言い回し”は手作業で修正し、あえて品質管理の専門用語を交ぜ込んだ。Geminiが出力しがちな海外風のおしゃれなイラストは全部外し、社内で見慣れた「いらすとや」の素材に差し替えたのだ。

「完成度を上げすぎると逆に怪しまれる気がして、あえて『誰でも作れるレベル』に抑えたんです。『ちょいダサ』を心がけたというか」

その逆張りの発想は功を奏し、周囲から高い評価を受けたという。

AIに疎い上司を騙して昇進する人も

一段上の「評価泥棒」型になると、実害は他者に及ぶ。会社員の村里恵理さん(仮名・30歳)が目撃したのは、同僚による“AI昇進”の一部始終だ。

「社内コンペで、ある同僚が企画書の大半をAIに処理させ、自分なりにアレンジして提出していました。AIを使ったことはチーム内の一部メンバーには共有されていましたが、上長や部署全体に対しては完全に伏せられていて。プレゼンの場では、自力で考えたアイデアかのように振る舞っていました」

なぜその同僚は上長には黙っていたのか、村里さんはこう分析する。


「本人の中にAIを使ったことへの後ろめたさがあったんじゃないかと思います。もともとパフォーマンスが高い人だったし、コミュニケーション能力もある。だから周囲は特に怪しまなかったんです」

発表から1か月後、そのアイデアが部署内で称賛され、当該社員は昇進を果たした。経緯を知っていたメンバーたちの間には静かなモヤモヤが広がり、昇進の話が出た際には、一部メンバーが上長に「AIを使ったアイデア出しによる評価はどうなのか」と訴える動きも出たという。

「モヤッとするのはAI利用そのものより、会社の評価体制なんです。会社の評価者が、一人ひとりの作業プロセスを100%把握できているわけじゃない。コンペみたいに成果物だけで判断される場面では、あからさまな使い方でない限り、見抜きようがないですよね。管理職がAIに疎いから『自力でやりました』とアピールすればまかり通ってしまう。使った者勝ちの状態になってしまっています」

捏造したデータで卒論を完成させた同期

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そして最も悪質な「事実偽造」型は、もはやAIの使い方の問題ですらない。調査結果では「会社に行くのがダルい日に『39℃』と表示された体温計の画像を生成して、急病を装ってサボった」(20代・男性)なんてせこすぎる使用法も……。さらに情報学を専攻していた佐藤かおりさん(仮名・20代)が目撃したのは、ゼミの同期による卒業論文の実験データ捏造だ。

「大学や教授からは『AIは使わないように』と指示が出ていました。私自身は、コードを途中まで書いてもらう程度の使い方ならありかなと思っていましたが……」

だが問題の同期がやっていたことは、そんなグレーゾーン程度の話ではなかった。


「本来なら2~3日かかる実験を一切行わないで、AIでそれらしい数値や画像を丸ごと生成していたんです。さらに、捏造したことで生じた結果の矛盾の説明まで、AIに考えてもらっていました。本人はそれを『うまくやった』とゼミのメンバーには誇らしげに語っていましたが、あまり良く思わない人は多かったと思います。最終的にその実験データの捏造は指導教員に見抜かれることなく卒論は受理。そのまま卒業していきました」

就職後、佐藤さんの周囲にはAIを賢く使いこなしている人たちも多く存在する。

「賢い使い方とズルの違いって、AIを使ったと明示するかどうかだと思うんです。黙って使ったうえに、データの捏造までしたら、それは悪用に当たると思います」

AI活用が当たり前になりつつある今、問われているのは技術リテラシーではなく、もっと根本的な誠実さなのかもしれない。

AI悪用の3段階

①「労力ごまかし」型

自分の言葉や労力を、AIで静かに補っているのがこのタイプ。「嫌な上司へのチャットをAIに代わりに返信させている」(20代・女性)、「仕事の集まりに行くのが嫌で、ドタキャンの理由をAIに考えてもらったら後腐れなくり過ごせた」(20代・女性)、「同僚が研修レポートの感想をAIに考えさせていた」(30代・女性)

②「評価泥棒」型

成果物は実在する。ただし出所だけが巧みに塗り替えられているのがこのタイプ。「調べ物を後輩に指示したら、ChatGPTに丸投げした答えを報告された」(20代・女性)、「資料からPR映像までAIに丸投げしたプレゼンを、それを知らない部長が絶賛していた」(20代・男性)

③「事実偽造」型

やっていないことを、やったように見せる。被害が最も深刻なのがこのタイプだ。
「解析業務の進捗をAIで先行しているように見せかけた」(50代・男性)、「アンケートの自由記述もAIに書かせている人を知っている」(20代・男性)、「服の販売で着用画をAI生成し、見栄えを盛っていた」(20代・女性)

※2026年7月21・28日合併号より

取材・文/週刊SPA!編集部

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