今季、ガンバ大阪で開幕からゴールマウスを託されている18歳のGK荒木琉偉は、195cmの恵まれたサイズを誇り、J1開幕戦ではGKとして歴代最年少先発記録を更新した。東口順昭、一森純ら実力者がそろうポジション争いで存在感を高め、U-21日本代表にも飛び級で招集。

愛知・名古屋アジア競技大会にはチーム最年少で臨む。中学入学時には170cmに満たなかった身長は、なぜここまで伸びたのか。両親から受け継いだ体格や成長期の習慣、GKとしての強み、そして「今後は絶対にライバルになる」と語る鈴木彩艶への思いから、世界を見据える18歳の現在地と可能性に迫る。

(文=藤江直人、写真=YUTAKA/アフロスポーツ)

195cmの18歳。「彩艶のように動けるGK」を目指して

Jリーグがキックオフの約2時間前に発表する「試合メンバー表」で、18歳にしてガンバ大阪のゴールマウスを託される荒木琉偉のサイズは<身長194cm・体重85kg>と表記されている。もっとも、本人によれば現在の身長はさらに1cm伸びて195cmに達しているという。

すでに身長においては、FIFAワールドカップ・北中米大会で森保ジャパンの守護神として大活躍した鈴木彩艶の<190cm>を上回っている。それでも、と荒木はちょっぴり照れくさそうに笑う。

「いまは体重がちょっといい感じで増えてきていて、88kgから89kgはあると思います。でも彩艶選手の体重は100kgくらいありますし、あれだけ身体が大きいのに動ける。僕もしっかりと動けるキーパーになりたいというか、筋肉をつけても動けるように体重を増やしていって、195cmと感じられないくらいの動きをしていきたい」

三重県伊勢市で生まれ育った荒木は小学校卒業時に親元を離れて、プロになる夢を抱いてガンバのジュニアユースに加入した。当時の身長は「170cmもないくらいでした」という。

「それでも大きいほうではあったんですけど、中学生になったあたりから成長期でぐんぐん伸びた、という感じですね。両親からの遺伝というのは正直、大きいと思っていますけど」

父親は身長180cm台の後半で、母親も170cmくらいという荒木がさらに続ける。

「両親はかなり大きいほうではあるんじゃないですかね。父親はバレーボールを軽くやっていたくらいしか知りませんし、いわゆるスポーツ一家、というわけじゃないですけど」

170cm弱から195cmへ。急成長を支えた睡眠と食事

両親からの遺伝に加えて、身体の急成長を導いたものがある。荒木は「遺伝もそうですけど、僕はめちゃくちゃ寝ていたんですよ」と、いまだから言える、といった逸話もまじえて明かす。

「中学生のときは本当にやばかったですね。常にめちゃくちゃ眠かったし、そのせいで授業中にもよく寝ていました。昼寝も含めて、量で言えばだいぶ寝ていましたね。やはり人間は横になっているほうが伸びると思うので、とにかく横になる時間を増やせば背は伸びるんじゃないですか。あとは意識して米を食いまくっていました。やはり量ですよね。

僕は質よりも量で、という感じでした」

彩艶も中学生時代はとにかく睡眠を優先させていた。所属していた浦和レッズジュニアユースの特別な指導方針のもと、週に3日はオフを設けて、十分に食事と睡眠を取る生活習慣を徹底させた。

荒木も彩艶の中学生時代のエピソードを知っていた。それでも、幸いにも成長痛とも無縁だったガンバのジュニアユースでの3年間で、練習をセーブした経験はなかったと振り返る。

「とにかく練習を頑張って隙間に寝ていました。一日のトータルでどうだろう、練習とか学校があったなかでできる限り寝ていましたけど、それでもマックスで10時間くらいしか寝ていなかったんじゃないですかね。もちろんオフの日などはもっともっと寝ていましたけどね」

ユースへ昇格して2年目。17歳の誕生日だった2024年10月14日にプロ契約を結び、昨シーズンは守護神・一森純、大ベテランの東口順昭に次ぐ3番手として6試合でリザーブに名を連ねた。

公式戦デビューを果たしたのは今年4月22日。ホームのパナソニックスタジアム吹田にアビスパ福岡を迎えた、J1百年構想リーグ地域リーグラウンドWEST第17節で先発に抜擢された。

一森が左母指末節骨骨折で長期離脱を余儀なくされていたなかで、百年構想リーグの開幕から先発を続けていた東口からポジションを奪った荒木は、福岡戦を皮切りに7戦連続で先発した。

さらに5月16日にサウジアラビア・リヤドで行われた、アル・ナスルとのAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)決勝でも先発。

相手をクリーンシートに抑えてガンバのタイトル獲得に貢献した。

手応えとともに、最終的に公式戦8試合に出場した今年前半を荒木はこんな言葉で振り返る。

「キーパーにとっては本当に試合経験がすべてなので。7試合ですけど百年構想リーグで経験を積めたのは大きいし、ACL2決勝で緊張感のあるカップ戦の雰囲気を体験できたのも大きい」

18歳でつかんだ開幕スタメン。「日本一」のGK陣から学ぶ日々

ポジションをつかんだ流れは、7月にドイツ出身のイェンス・ヴィッシング監督が就任からわずか半年で電撃退任し、明神智和監督がトップチームコーチから昇格した今シーズンでより鮮明になった。

ホームに浦和レッズを迎えた8月7日の開幕戦で先発を果たした荒木は、18歳297日で念願のJ1リーグ初出場をマーク。J1の開幕戦に先発したすべてのゴールキーパーのなかで、1999シーズンの南雄太(柏レイソル)の19歳157日を大幅に更新するJ1歴代最年少記録を樹立した。

リザーブに35歳の一森が名を連ね、さらに40歳の東口、194cm・80kgのサイズを誇るアカデミーの先輩・張奥林で形成されるキーパーチームを、荒木は「日本一のレベル」と自負する。

「東さん(東口)の動きの速さはJ1で本当にトップレベルだと思うし、僕も195cmで東さんのように動けたらもっともっとストロングポイントになっていく。僕の課題の足元の面では純さん(一森)はすごく安定感があるし、僕と同じで身体が大きい奥林くんもストロングをもっている。そういうストロングをしっかりと盗みつつ、自分に落とし込んでいけたらもっともっと成長できるので」

4-3で勝利した開幕戦で浦和のゴールマウスを守ったのは、東口と同じ1986年生まれで40歳の西川周作だった。荒木が生まれたときには、大分トリニータですでに59試合に出場していた。

「自分が小さなころから、ずっと活躍し続けている選手なのですごくリスペクトしています。東さんもそうですけど、すごいとしか言いようがないし、長くやれる秘訣があるんじゃないか、と」

浦和戦から4日後の8月11日には、韓国で行われた江原とのACLエリートのプレリミナリーステージでも先発。延長戦を含めた120分間で失点を許さずに本戦出場権獲得に貢献すると、8月22日のJ1第3節では20歳のGKピサノ・アレックス幸冬堀尾を擁する名古屋グランパスと対峙した。

「同じ世代が(相手に)いるのは普通にうれしいし、すごくいい刺激になっています」

「今シーズンのうちにA代表へ」見据えるステップアップとキャリア設計

新シーズンが開幕した直後で早くも濃密な経験を積み重ねている荒木の視線の先には、すでに新たなターゲットが設定されている。それはピサノが昨年7月のEAFF E-1サッカー選手権へ招集され、先発フル出場した香港代表戦で獲得しているA代表での初キャップとなる。

「今シーズンのうちにA代表に入りたいし、そのためにもガンバでしっかりと活躍したい」

6月にはU-21日本代表へ飛び級で招集されていた荒木は、2028年のロサンゼルス五輪世代で臨む、9月19日(男子サッカーは15日から)開幕の愛知・名古屋アジア競技大会代表にもチーム最年少で名を連ねている。

そしてチームを率いる大岩剛監督が来年3月から、2大会連続でワールドカップの指揮を執った森保一監督に代わって、五輪代表監督と兼任する形でA代表監督に就任する。

「五輪も兼任されるので、五輪世代で活躍するのがA代表への一番の近道だと思っています」

A代表の体制変更に合わせて自身が進むキャリアも描き直した荒木は、今夏までは憧れの存在だった選手をライバルに置き換えている。絶対的な守護神・彩艶へ、こんな視線を送っている。

「彩艶選手は目標というか、リスペクトする気持ちを抱いていますけど、今後は絶対に(A代表での)ライバルになってくるので。負けていられない、という気持ちがいまは強いですね」

彩艶は21歳になる直前に浦和からベルギーのシントトロイデンへ移籍。セリエAのパルマをへて、今夏からプレミアリーグの強豪アストン・ヴィラへのステップアップを果たした。

「今後に彩艶選手を追い越していくためにも、僕もいずれは海外でプレーできたら、という思いが強いですね。

早く行けたらというか、なるべく早く行きたい。そのためにもガンバで試合に出て、何て言えばいいんだろう、出るだけじゃなくて内容にもしっかりとこだわってやっていきたい」

「負けていない」鈴木彩艶を追い越すために磨く武器

FIFAワールドカップ・北中米大会で世界的に注目され、一時はヨーロッパ王者パリ・サンジェルマン移籍が目前に迫った彩艶との間に広がる距離を、荒木はどのようにとらえているのか。

「別にめちゃくちゃ遠い、とは感じていないですね。もちろんまだまだ彩艶選手のほうが優れているところがたくさんある。実際に彩艶選手は弱点が少ないし、本当に素晴らしいフィジカルの強さをもっているし、キック力や至近距離でのシュートストップでもものすごく違いを出している。シュートストップの部分は自分のストロングでもあるし、負けていないと思っているので、そういうところでしっかりと頑張りつつ、課題を一つずつ、しっかりと埋めていく、という感じですね」

駆け引きで止める、と自負するシュートストップに磨きをかける。インナーマッスルに加えて体幹も鍛えながら、大きくて素早く動ける身体を作る。もっともっとビルドアップに関わっていけるように足元の技術を磨く。ハイラインを標榜するガンバで、最終ラインの裏のケアも常に怠らない。

課題を克服するほどに目標にすえる海外、A代表、そして彩艶との距離が縮まっていく。彩艶が19歳になったシーズンよりも、数多くの試合でゴールマウスを任されそうな荒木が力を込める。

「年齢は関係ないと思っているので。

まずは今シーズン、チームの優勝に貢献したい」

身体のサイズだけではない。将来の目標も、丁寧な口調ながら、発する言葉の中身もすべてがビッグな18歳が、開幕したばかりのJリーグで稀有な、そして楽しみな存在感を放っていく。

<了>

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