サージ・ピッツォーノ(Photo by Bonnie Britain/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)
カサビアン・サウンドの総決算
―最近、ランニング専門メディア『Runner's World』のインタビューを読んで驚いたんですが、あなたがランニングにハマっているとは知りませんでした。コペンハーゲンマラソンに出場することになった経緯を教えてもらえますか?
サージ:ちょっとクレイジーな話なんだけど、友達が走るというので見に行ったんだ。その時、ひどく酔っぱらっちゃったんだよね。それで彼のすすめに流されて僕もエントリーをしてしまい……そうしたら思いがけず、すごい体験ができたんだ。君もマラソンに参加した経験があるかわからないけれど、あれはイカレてる。そんなところにも行けるんだ!っていうところまで(精神的に)到達できるんだ。僕はその境地をMind Palace(思考の宮殿)と呼んでいる。何か心の内を静かにしてくれるんだよね。僕の脳みそはうるさすぎるぐらいだから、たまに静かにさせてあげることも大切なんだ。
―しかもランニング中に立ち止まってボイスメモを録音したり、メロディや歌詞を思いついたりもするそうで。そうやって思いついた曲が新作にもいくつかあるんですか?
サージ:うん、いつもだよ。
―新作『ACT III』には前作と同様にエレクトロ要素がありますが、ドラム&ベースの迫力を感じる、いかにもカサビアンらしくてライブ映えしそうな曲が揃いましたね。今回はどんなアルバムにしたかった?
サージ:大規模なライブ会場向きの音楽を作りたいということは強く意識していた。つまり「これぞカサビアン・サウンドだ!」と言えるようなね。ある意味、ソングライターとして自分が最も得意とすることがこの一枚に詰まっている。自分が学んできた曲の作り方が、このアルバムで一つの形になったというか。1stの『Kasabian』(2004年)とは絶対的に共通点があるし、『West Ryder Pauper Lunatic Asylum』(2009年)の要素もあるかもしれない。あの時代のエッセンスが反映されているし、だから今現在の自分はそういうマインドなんだよね。「SOULMATE」「SUPERPOWERS」「Hippie Sunshine」は自分の中でも特に誇りに思える曲。
―「GREAT PRETENDER」は最高の、とても今っぽい解釈のロックンロールですね。それと同時に、ベースラインはニュー・オーダーのようだと感じました。
サージ:だから僕は日本が大好きなんだよ! 1stアルバムの頃から自分たちが伝えたかったポイントを完全に理解してくれていた。そう、あれは紛れもなくニュー・オーダー的な要素だよ。好みって不思議なものだよね。数年前だったら、あのサウンドは超絶ダサいって思ってたはずだけど、なぜかそれにまたハマっちゃって。そして「NOTHING BETTER THAN THIS」には80年代のゴスっぽい要素が入っている。あの方向性も、自分は絶対に行かないだろうとかつては思っていた。まあ、これだけ作品をリリースしてきたんだから、今はやりたいようにやってもいいと思っているよ。
―「HYPER//RISING」を聴きながら、2作目の『Empire』(2006年)が出てから今年で20年になることも思い出しました。ロックを現在の視点から再構築するカサビアンのスタイルがより明確になった、重要なアルバムでしたよね。
サージ:うん、その通りだよ。1stアルバムは大成功で、評判がすこぶるよかった。サウンドもね。だから自分たちは当然、次は違うことをやろうと思った。それって冒険だけど、アーティストとしてのスタンスを示すことができる。つまり新しい作品、世界、視点などを、毎回予想外の方向性からリスナーに提示してるんだ。だから『Empire』にはグラム感があったんだよ。カオス的なロックンロール・サウンドというか。そして「HYPER//RISING」は、明らかにあの時期の自分たちのサウンドに通じていると思うね。
―「今回はイアン・マシューズのドラムの魅力を感じさせる曲がある一方で、打ち込みのビートもかなり聞こえます。
サージ:あれは組み合わせなんだよね……今まで作ってきた作品の理由がそこにあるというか。エレクトロニックだけどいろんな要素が動いたり、変わったりの組み合わせなんだけど、でもあの日、イアンに直接言ったんだよ。あの演奏は彼が今まで残したレコーディング・パフォーマンスの中でも最高のものだって。本当に圧巻だったね。僕は60年代後期のサイケデリックなジャズ・アルバムや、シネマティックな表現について考えていた。『ブリット』『フレンチ・コネクション』、それに『ダーティハリー』といった映画のサウンドトラックも好きなんだ。だからそれらの組み合わせだね。「HYPER//RISING」で聴けるイアンのプレイは、もはやジェダイ・マスター級だよ。
サマソニや日本との20年以上続く絆
―さて、今年のツアーがどんな内容になるのか教えてもらえますか?
サージ:カサビアンの全時代の楽曲をやると思っていいよ。新作の曲もあればここ数年からの曲もある。今までのセットリストの中で最高なものができたと思っているし、一本筋が通ったストーリーがあって最高だよ。
―ライブ向きな新曲がたくさんあるので、日本でのショーに期待しています。
サージ:うれしいよ。アルバムの制作中、曲の良さをライブで演奏しそうかどうかで判断することがあるんだ。それが良い判断材料になるよ。この曲は良いのか? セットリストに加えたくなるほどの出来栄えか? 答えが「ノー」であれば、不合格ってことかもね。
―初めてサマーソニックに出演したのは22年前の2004年で、新人なのにお客さんが入りきらないほど殺到して熱狂的な盛り上がりを見せましたよね。あの時のことは何が記憶によみがえりますか?
サージ:僕はその時に観たザ・ミュージックの演奏を覚えているんだ。僕たちの出順は彼らの前だった。そしてザ・ミュージックのロブ・ハーヴェイは今、僕たちと一緒に演っている……それってすごいことだよね。彼らの演奏を見てすごく刺激になったのを覚えているし、それから22年後にはロブが僕たちと一緒に演奏することになった。
あの時は、別世界の日本に到着して言葉を失うほど呆気にとられたのを覚えている。
―20年以上続くこのバンドの絆は、何が結び付けているんだと思いますか?
サージ:ユーモアかな。自分たちの間にはしっかりと愛があって、その中でもユーモアは大きな役割を果たしている。ベースのクリス・エドワーズのことはいつも glue(のり)って呼んでいるんだ。どっしり構えた素晴らしい人物で、落ち着きがない僕とは違う。だから彼が僕たちを結び付けていると思うね。あとは音楽に対するリスペクトかな。自分達が作っているものをリスペクトしているし、そもそもこれを仕事にできること自体、どれほど幸運かっていう気付きがあった。年を取れば取るほど、それが当たり前だとは思わなくなる。「俺たち一緒にやれたらいいよね」って言っていたことを実際にできてるって、本当に特別なことだよ。
SUMMER SONIC 2026
2026年8月14日(金)・15日(土)・16日(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ
大阪会場:万博記念公園
※カサビアンは8月14日(土)東京会場、15日(日)大阪会場に出演
公式サイト:https://www.summersonic.com/
チケット購入:https://www.summersonic.com/tickets/tokyo/
カサビアン
『ACT III』
2026年9月4日リリース予定
1. quiet on set please 1m9
2. SOULMATE
3. Hippie Sunshine
4. SUPERPOWERS
5. GREAT PRETENDER
6. NOTHING BETTER THAN THIS
7. mind palace 2m7
8. SILVER APPLE EYES
9. THE GURU AND THE CRYPTO TIME MACHINE
10. npc 3m12
11. GLIDE
12. HYPER//RISING
13. SAY YOU (CLOSER)


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