GENERATIONS、EXILE、PKCZ®での活動と並行しながら、DJ/プロデューサーとして独自のキャリアを築いてきた彼が、新たな拠点として選んだのがワーナーミュージック・ジャパンだ。移籍第一弾「Not Enough(feat. Olivia Marsh)」では、アフロハウスやアマピアノの要素を取り入れ、ポップスとダンスミュージックの新たな接点を提示した。海外プロデューサーとの初のライティングセッション、世界から注目される東京のクラブシーン、そして日本のダンスミュージックをメジャーへ押し上げる構想。ALAN SHIRAHAMAが、新章に懸ける思いを語る。
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「本当のライティングセッションを、この曲で学んだ」
―今回、プロデューサーであるCJ Baranとの制作を経験して、それまでのDJ同士のコライトと、ポップスのライティングセッションではかなり違いがあったそうですね。
ALAN SHIRAHAMA そうですね。今回をきっかけに、いろいろなライティングセッションに参加するようになりました。その後は国内のプロデューサーともやるようになったんですけど、それまでDJ同士でコライトするのって、家で2人でゲームをやるような感覚に近かったんです。遊びの延長線上というか。でも、ポップスのシーンに出す楽曲を作るセッションは、もっと作品作りに向き合っている感じがしたんですよね。生粋のダンスミュージックを作るときと、ポップスを作るライティングセッションでは全然違うんだなと思いました。たとえばSO-SOと曲を作るときは、一緒にスタジオに入って「じゃあ、どうしようか」と言いながら、2人で鍵盤を弾いたり、パソコンのコントローラーを渡し合ったりしながら作っていくんです。
―その違いをあえて言葉にすると、どんなところが最も印象的でしたか。
ALAN SHIRAHAMA 「音楽家」と呼ばれる人を、初めてちゃんと目の前で見たような感覚がありました。僕はあくまでプロデューサーであり、トラックメーカーであり、ダンスミュージックのDJという世界にいたんですけど、そこに収まらない音楽家みたいな人を初めて見たというか。
GENERATIONSではそういう人たちとやり取りする機会もありますけど、ひとりのDJとして制作現場でご一緒することはあまりなかったので。ゼロからメロディを生み出していく人たちを目の前で見たことと、相手が海外のプロデューサーだったことも大きかったですね。
―英語でやり取りしながら曲を作ることも、これまでとは違う経験だったのでは?
ALAN SHIRAHAMA そうですね。僕も日常会話程度なら英語を話せるんですけど、会話からメロディが生まれていくんですよ。一緒にトラックをループで流して、鼻歌を歌いながら、「今のメロディーいいね」みたいな感じで、そこに言葉を乗せていく。セッションそのものにずっとグルーヴがありました。それは本当に初めての体験でしたね。
―そういう意味でも、セッションでは英語で直接コミュニケーションできることが重要になりますか。
ALAN SHIRAHAMA 大事ですね。特にセッションでは、瞬間的に伝えたいことがあるじゃないですか。「今のところが気持ちいいから、もっと強くしよう」とか。音楽って、そういう反射のなかで作っていくものだと思うので。一回一回通訳を挟んでしまうと、グルーヴが途切れるような感覚に近いと思うんです。ライティングセッションは流れのなかで曲を作っていくものだから、グルーヴを途切れさせちゃいけないなと思いますね。
―「Not Enough(feat. Olivia Marsh)」の経験を経て、曲の作り方そのものも変わりましたか。
ALAN SHIRAHAMA 変わりました。本当に、楽曲の作り方に対する概念が変わったというか。この曲以降も、海外のプロデューサーとセッションする機会がいくつかあったんですけど、今回の経験があったからこそ、その次のセッションに生かせたこともありました。自分でもドラムパターンだけスケッチして持っていって、その場でデータを投げ合いながら作業するとか。
世界から見た東京、「消費される場所」で終わらせたくない
―海外のDJと交流するなかで、最近の東京のクラブシーンは、外からどんなふうに見られていると感じますか。
ALAN SHIRAHAMA 海外のDJとやり取りしていると、「日本でギグないかな?」と結構聞かれるんですよ。それくらい日本のクラブシーンも盛り上がっていますし、東京自体が、DJたちのあいだで「かっこいい街」になってきているんです。今年ロサンゼルスに行ったときも、「今、ダンスミュージックってどこが盛り上がっていると思う?」という話になって。僕はロサンゼルスだと思っていたんですけど、現地のDJたちは「なんだかんだ東京じゃない?」と言うんですよ。イビサやラスベガスも当然ありますけど、僕が「ここが盛り上がっている」と思っていた場所の人たちから、「東京が一番熱い。DJも集まっている」と言われたときは、すごく面食らいましたね。「あ、盛り上がっていると思われている場所に、自分は拠点を置いて活動しているんだ」って。実際、ベースミュージックのイベントも毎週のように海外から誰かが来てやっていますし、東京を拠点にしている強みは生かさなきゃいけないと思いました。
―一方で、海外アーティストがたくさん来るだけでは、シーンが育つとは限らない?
ALAN SHIRAHAMA そうなんです。僕は、日本が海外アーティストにただ消費されるだけの国であってほしくないと思っていて。
―アジアのほかの都市と比較しても、東京には独特のものがありますか。たとえば韓国はどうでした?
ALAN SHIRAHAMA 韓国も熱量はありました。ただ、カルチャーとしての盛り上がりは東京のほうがあると思います。一方で、若者のパーティのヴァイブスは韓国のほうがすごいですね。梨泰院でDJをしたとき、クラブの真上にあるホテルに泊まったんですけど、朝5時まで外からずっと爆音が聞こえていて。部屋に入った瞬間、耳栓が置いてあったんですよ。「これを着けて寝てください」みたいな(笑)。まさかと思ったんですけど、本当にいろいろな音が聞こえてきて全然眠れなかった。
―海外でDJをするとき、日本の楽曲をあえてセットに入れることもありますか。
ALAN SHIRAHAMA 超ベタなところで言うと、海外では「Tokyo Drift」をかけます。盛り上がるので。たまに『ドラゴンボール』の曲もかけますし、千葉雄喜さんも強いですね。海外で喜ばれるのは、日本人がかける日本の曲だという感じがします。東京から来た人間が「Tokyo Drift」をかける、みたいな。別に僕が作った曲でも何でもなくて、マッシュアップやリミックスを流しているだけなんですけど、「本物の東京の人が来た」みたいな感じがあるのかなって。アジアでDJをすると特に感じますね。もちろん、滑ることもありますよ。
―海外では、知名度ではなくDJとしての実力だけで評価される厳しさもありますよね。
ALAN SHIRAHAMA ありますね。海外でギグをすると、別に誰もが僕を知っているわけではないので。本当に滑ったら、お客さんが減っていきます。日本ではある程度認知してもらえているので、なかなかそういうことはないんですけど、海外に行くと本当に実力で試される。初めてアジアツアーに行ったとき、マレーシアでゴリゴリに滑ったことがあって。最初の20分くらい、何をやっても当たらなくて、フロアからお客さんが消えていったんですよ。ある程度予測して、100曲くらい入れたプレイリストを作って、その中で遊ぶんですけど、それが全然刺さらなかった。そこで、その場で選曲を変えて、過去に使っていた曲を引っ張り出しました。
―そこから挽回できた?
ALAN SHIRAHAMA ギリギリ何とかなりました。でも、最終的には負けていたと思います(笑)。
―GENERATIONSでは大きな会場を経験している一方、DJではほとんどお客さんがいないところから始める経験もある。
ALAN SHIRAHAMA 海外フェスだと出演時間が早いことも多くて、本当に前に2列しかお客さんがいないようなところでプレイしたこともあります。GENERATIONSだったら、空席があったとしても、何万人もいるなかの何席じゃないですか。でもDJの場合は、スタンディングのフェスで目の前に2列しかいないこともある。だから、初心に戻らせてくれるんですよね。「何者でもない自分」に戻れるという意味でも、すごく刺激になります。
Photo by Yukitaka Amemiya
「現場に足を運ばないと」――DJから受け取るインプット
―その一方で、日本では世界のトップDJと同じイベントに出演したり、サポートを務めたりしています。以前はファンとして見ていた人たちと同じステージに立つことで、意識も変わりましたか。
ALAN SHIRAHAMA 本当に夢のような瞬間ですね。好きで見ていたDJと同じステージに立てるなんて夢にも思わなかったですけど、「自分も今、その土俵に立っているんだ」という自覚は、少しずつ芽生えてきました。最近は、必要以上にリスペクトしすぎないようにもしています。同じ土俵に立っている以上、戦いの場でもあるので。いつまでもDJファンのような気分ではいちゃいけない、という自覚はありますね。
―トップDJのライブを現場で見ることは、最近のインプットにもなっていますか。
ALAN SHIRAHAMA めちゃくちゃなります。DJによって盛り上げ方も違うし、セットの作り方も全然違うので、いろいろなスタイルを間近で見られるのは本当に勉強になりますね。今年だったらSteve Aokiも見ました。彼はとにかくフロアをドカドカ沸かせるタイプじゃないですか。一方で、SkrillexはVJもロゴが点滅するくらいで、照明もほとんど当たっていない。スモークを焚いた暗がりのなかで、ひたすらDJをして、たまに喋るくらい。本当にそれぞれスタイルが違うし、何が正解というわけでもない。そういうものを間近で経験するたびに、「自分のDJとしてのスタイルをどう作っていこうか」と考えるヒントになります。やっぱり、実際に見ないとダメだと思います。現場に足を運ばないとなって。
―亜嵐さん自身のDJスタイルは、どんなところが特徴的だと思いますか。
ALAN SHIRAHAMA ずっとエナジーが出続けているタイプのDJだな、と客観的には思います。アップダウンが激しいというより、常に雲の上を走って、飛んでいるような感じ。僕自身、そういうDJが好きなんですよ。エネルギーを途切れさせず、ずっとハイエナジーで走り抜ける。それが自分のスタイルだと思います。だからこそ「Not Enough(feat. Olivia Marsh)」のような曲が生まれたことで、今後はその前後の展開の作り方も変えていかなきゃいけないと思っています。DJで使うときには、この曲のリミックスを作るのもありかなと。
―そのスタイルを作るうえで、長く参考にしているDJは?
ALAN SHIRAHAMA DJセットの展開や盛り上げ方で言うと、昔からHabstraktがすごく好きです。もともとベースハウスのDJで、僕にとってもベースハウスが一番の軸になるジャンルなので、すごく参考にしています。ずっとエナジーが続いているというか。僕が一番好きなDJですね。もちろん、Skrillexはもう神様みたいな存在ですけど(笑)。
―同じベースハウスでも、ヨーロッパとアメリカではかなり違うそうですね。
ALAN SHIRAHAMA 結構違います。ヨーロッパのベースハウスはグルーヴィで、サブベースのうねりで展開を付けながら、曲がずっとぐるぐる回っているような感じなんです。一方、アメリカは「今からドロップが来るぞ」という派手なビルドアップがあって、ダブステップでも使うような派手なシンセが乗っているハウスというか。ずっとドーパミンが出続けるようなサウンドですね。
僕はどちらかというと、アメリカのスタイルが好きです。サンディエゴやLA周辺から、最近のベースミュージックのムーブメントも大きくなっていますし、Brownies & Lemonadeみたいなコミュニティがイベントをやって、そこにお客さんが集まって規模が大きくなっていった。音だけじゃなく、コミュニティを含めてシーンができていくのも面白いですよね。
Photo by Yukitaka Amemiya
「DJでもゼロから100へ」
―DJを始めようと思ってから10年になります。現在地については、どう捉えていますか。
ALAN SHIRAHAMA 正直、もう少し早く今の状況になりたかったという思いはあります。
今年33歳で、もちろんまだ全然若いとは思うんですけど、なんとなく頭をよぎるのは、DJとして名前を上げるには最後のチャンスなんじゃないか、ということですね。でも、GENERATIONSで成功できたように、DJでも本当にゼロから100まで行きたいという思いはずっとあります。GENERATIONSも路上ライブから始まって、ドームツアーまで行くことができた。その成功体験を、DJでももう一度味わいたいという感覚が大きいです。
―DJとして、すでに完全な「ゼロ」ではないですよね。
ALAN SHIRAHAMA そうですね。DJ Magのランキングでも127位まで来ましたし(※英『DJ Mag』が毎年実施する世界的人気投票企画「Top 100 DJs」。ALAN SHIRAHAMAは2025年、本選に次ぐ101~150位を発表する「The Next 50」で127位にランクインした)、国内では有名なクラブやフェス、イベントにも出演させてもらっています。だからこそ、ここからは海外を視野に入れていきたいですね。
―自分が海外へ出ていくだけでなく、将来的には若いDJやトラックメーカーを海外につなげていくことも考えていますか。
ALAN SHIRAHAMA ありますね。いずれ、自分でダンスミュージックに特化したレーベルを作って、若いDJやトラックメーカーをフックアップして、どんどん海外につなげていきたいという構想もあります。日本には本当に可能性のある人が多いと思うので。ただ、物理的な距離をどう埋めていくのかという問題もありますね。ヨーロッパにダンスミュージックが当たり前のように根付いている理由のひとつは、車でほかの国へ行けることだと思います。隣国がたくさんあって、簡単に行き来できる。そのなかへ日本人がどう乗り込んでいくのかは、よく考えます。
―10年前と比べて、日本でも若いDJやトラックメーカーは増えていますか。
ALAN SHIRAHAMA 増えていますね。DAWを扱える人が増えたと思います。昔はDJはDJ、トラックメーカーはトラックメーカーという感じで役割が分かれていたんですけど、今はDJが自分で曲を作るのが、より当たり前になりました。今はプロデューサー/DJがクラブでレジデントをやっているケースも増えていますね。僕自身、現場が好きでよく顔を出すので、若いDJとも結構交流しますよ。
―日本でダンスミュージックをもっと大きなカルチャーにしていくうえで、参考にしているものはありますか。
ALAN SHIRAHAMA 僕は、表面的に売れたいとか規模を大きくしたいというより、カルチャーとしてダンスミュージックをもっと日本に根付かせたいと思っています。そういう意味では、音楽だけじゃなくてファッションにも取り組まなきゃいけないと思うし、一番リファレンスにしているのはヒップホップですね。ヒップホップは今、J-POPのなかでもすごく大きな存在になったじゃないですか。ファッションとも隣接しているし、ポップスのなかでヒップホップが当たり前になって、J-RAPのアーティストは月間リスナー数もすごく多い。ダンスミュージックも、J-RAPのようにJ-POPのなかに当たり前に存在するものになってほしいんです。もともとアンダーグラウンドにあったものがメジャー、オーバーグラウンドへ出てきた。その感覚をJ-RAPにはすごく感じるので、ダンスミュージックもそうなったらいいなと思います。
―その先頭に立ちたい?
ALAN SHIRAHAMA そうなりたいですね。
―その先に、どんな景色を思い描いていますか。
ALAN SHIRAHAMA 理想を言えば、国内のDJだけで大きな会場を埋められるようになりたいです。国内DJだけでさいたまスーパーアリーナを埋められたら、相当熱いじゃないですか。BAD HOPがひとつのクルーで、ラップを武器に東京ドームまで行ったのも相当すごい。国内のDJだけでドームやスタジアムを埋める。それがいつかできたらいいですよね。海外ではそれが当たり前にあります。Fred again..も4万人、5万人規模でやっていますし、DJ Snakeもフランスのサッカースタジアムで8万人規模のライブをやっている。「なんで日本には、まだそのカルチャーがないんだろう」と思いますね。
Photo by Yukitaka Amemiya
「Not Enough(feat. Olivia Marsh)」
ALAN SHIRAHAMA
ワーナーミュージック・ジャパン
配信リンク:https://alanshirahama.lnk.to/NotEnough


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