偶然から始まった、11年ぶりの再会
アラバマ・シェイクスが11年ぶりとなるニューアルバムをリリースした。ブリタニー・ハワードにとって、この作品が伝えるメッセージは明快だ。「人は互いに頼り合っていいんだって、みんなにわかってほしい」と、バンドのシンガーは語る。
ブリタニーとバンドメイトのザック・コックレル、ヒース・フォッグが最後にこの道をともに歩んだのは2015年のこと。アラバマ・シェイクスの2ndアルバム『Sound & Color』が全米アルバムチャートで初登場1位を獲得し、グラミー賞3部門に輝いた年だ。彼らは同作を携えて2年間ツアーを行ったのち、2018年に活動を休止。ブリタニーはソロ・キャリアをスタートさせ、ヒースも同じくソロ活動へと進んだ。
彼らが離れていたあいだに、アラバマ州アセンズから登場したソウルフルなサザンロック・バンドが、まず注目を集め、やがてスターへと駆け上がった頃の世界は、社会的にも政治的にも音楽的にも、重要なあらゆる面で一変した。ニューアルバム『I Must Be Dreaming』でアラバマ・シェイクスは、そうした変化のすべてと向き合うだけでなく、ときにその混沌のなかに美しさを見出している。
「世界はずいぶん奇妙になった」とブリタニーはRolling Stoneに語る。「地球って昔からおかしな場所ではあったけど、ものすごく奇妙になったうえに、何もかものスピードが上がったように感じる。あり得ないと思っていたこと、ずっと神話や噂だと思っていたようなことまで、次々と現実になっていくような。
そうした、現実から切り離されて足元が定まらないような感覚が、アルバムタイトルの着想の一端となった。
「そういう意味での『I Must Be Dreaming』──〈夢を見ているに違いない〉という側面がひとつ。でも、このタイトルにはもうひとつの側面もある。私たちが日々どれだけいろんなものを浴び続けていたとしても、美しくて、喜びに満ちたものはまだ見つけられるということ。どれほど恐ろしく見えても、その岩には両方の面があるんだよ」
全11曲の本作は、長年のファンにとってうれしい安心感をもたらす作品でもあるだろう。グループのサウンドを形作ってきたブルース、ソウル、フォーク、アメリカーナの要素はいまも健在だ。アルバム全体が”再会のサウンドトラック”のように聴こえるとすれば、それも当然だろう。今回のアラバマ・シェイクスの再始動は、まったくの偶然から生まれたもので、メンバーたちはその流れに身を任せている。
2024年末、ブリタニーはアラバマ州タスカルーサを拠点とするDruid City Brewing Companyのための資金調達イベントに出演してほしいと依頼された。彼女はブルワリーのオーナーと友人で、タスカルーサという街にも特別な思い入れがある。いつ行ってもオリジナルの音楽に出会えた場所であり、アラバマ・シェイクスが初期に活動していた重要な拠点のひとつでもあったと振り返る。パンデミック後、ブルワリーは経営難に陥っており、ブリタニーは力になりたいと思った。
「それで、ふと思ったの。みんなに電話してみようって」と彼女は言う。「彼らもオーナーのことが大好きだから。ちょっとしたシークレット出演みたいな感じでやるつもりだった。でも、もうずっと演奏していなかった昔の曲をやるとなると、集まってリハーサルしなきゃいけないでしょ。それがすごく楽しくて! また一緒に過ごして、音楽を聴いたり、お互いが作ってきた音楽を聴かせ合ったりするのが楽しかった。それがいつの間にか、『もっとライブをやろうよ。私が持ってるデモももっと聴いてよ。レコーディングしよう』ってなって。気づいたらアルバムになってた」
それからわずか1カ月ほど後、アラバマ・シェイクスは新曲を制作中であることを発表した。ブリタニーは当初EPを想定していたが、最初のスタジオ・セッションを終えた時点で7曲ができあがっていた。
「人々がひとつになること」を信じて
『I Must Be Dreaming』を貫いているのは、社会をより良い方向へ変えようとする意識だ。政治そのものを軸にしたアルバムではないが、収録曲は何度となく、すべての人にとってより良い世界は実現できるという考えへと立ち返っていく。「American Dream」は、政府を信頼したいと願いながら、その信頼を裏切られたと感じるひとりの市民を切り取ったような曲だ。「I Feel Hope Coming」はさらに明確で、冒頭から〈この場所を変えるには、祈るだけじゃ足りない〉と歌う。ブリタニーにとって、それはまさに今という時代に響く音楽だ。
「人々がひとつになって、力を合わせる姿についての作品なんだ」と彼女は言う。「たとえば、『ねえ! 私は大規模監視なんてされたくない。Flockのカメラなんて壊してしまおう!』って声を上げる。そこで誰かが『それは違法だ』と言ったら、みんなが『えっ、そこに本気で怒るの?』ってなる。ようやく人々が一緒になって怒るようになった。信頼するはずの人たち、自分たちがお金を払って、この国の人々を守ってもらっているはずの人たちについて、次々と明るみに出てくる事実に対してね。
昨夏、アラバマ・シェイクスは2017年以来初めてツアーに出て、その後もライブ活動を続けている。ザック・ブライアンのオープニングを務め、テデスキ・トラックス・バンドと共同ヘッドライナー公演を行い、さらにはメイヴィス・ステイプルズをサポートアクトに迎える公演まで実現した。
当初、何が起こるのかまったく予想できなかったとブリタニーは言う。ここ2年ほどのツアーを取り巻く状況は、大物アーティストにとってさえ不安定なものだった。だが何本かライブを重ねるうちに、アラバマ・シェイクスのファンはバンドを待ち続けてくれていただけでなく、そこに新たな顔ぶれまで加わっていることに気づいた。ライブで若いファンたちが歌い、踊り、「ふざけながら楽しんでいる」姿が印象に残ったという。観客が自由に楽しめば楽しむほど、ブリタニー自身も自由になれた。そのことに、彼女は深い感謝を感じている。
「ライブで感じるのは、とにかくみんなのリスペクト」とブリタニーは言う。「ザック・ブライアンのお客さんには、本当にいろんなタイプの人がいるし、とにかく人数も多い。この前、彼のオープニングをやったときなんて、4万人くらいいた。ちょっと緊張するけど、いざやってみると最高なんだ。
そうした経験を経て、ブリタニーはいま、ひときわ強い誇りを感じている。
「結局のところ」と彼女は言う。「私たちはみんな、ただここで自分自身を表現しようとしているだけ。それに共感して、同じように感じてくれる人たちがいるって、すごくいいことだよね。本当に素敵なことだと思う」
*執筆者のジョシュ・クラッチマーはジャーナリスト/作家。近刊『Sonoran Sounds』がBack Lounge Publishingより2027年3月に刊行予定。
From Rolling Stone US.
『I Must Be Dreaming』
発売中
再生・購入:https://alabamashakes.lnk.to/IMustBeDreamingAlbum


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