オランダ戦で左ひざを負傷した久保建英のシャドー以外は、初戦とほぼ同じスタメンで行くのではないかと見られていた。しかしながら、森保一監督は思い切って4枚を変更。左シャドーに鎌田大地を上げたのに伴い、ボランチに田中碧を抜擢。佐野海舟と組ませるという思い切った采配に打って出たのである。
第2次森保ジャパンではボランチのサブという位置づけに甘んじてきた田中。今大会開幕直前に前キャプテンの遠藤航が左足首負傷で離脱し、本職のボランチが3枚とより重要度が増していた。ただ、鎌田と佐野のコンビが鉄板化しつつあり、田中が参入するのはなかなか難しいところもあった。指揮官も背番号7をどう組み込むべきかを模索していたはずだ。今回、それを公式戦でトライする好機が巡ってきたのは、ポジティブだったと言っていい。
その田中は開始早々の3分、いきなり強烈なインパクトを残すことに成功する。右センターバック冨安健洋を起点に右の鎌田、上田綺世とボールが渡った瞬間、ハーフウェーライン手前から一目散に前線へ侵入。
「下からつなぐという意味では理想的な展開だったし、右から左まで行って最後に中の人数もかけられて点も取れた。自分が飛び出していけば数的優位になりますし、スペースができればプラスワンを作れる。しっかりとチームとして崩せたのはすごくよかったと思います」と背番号7は最高のスタートを切れたのだ。
その後も最終ラインに下がってビルドアップに関与。攻めの起点を作るなど田中らしい技術の高さを見せつけ、プレミアリーグ仕込みの守備強度の高さを前面に押し出していく。特に鎌田、田中、中村の3人はボールを失った後の即時奪回の意識が際立っており、何度も敵の攻撃の芽を摘んでいた。
「前回W杯との違いは、4年間自分がやってきたものがあること。対戦相手というよりは、自分と向き合って大会に挑めているなと感じています。どの相手だろうが正直関係ないというか『自分ができることにベストを尽くせば、どこでもできる』という自信がある。
そういった自信と余裕がさらなるチャンスを生み出す。象徴的だったのは、伊東純也の3点目につながった上田への鋭い縦パスだろう。「前半は相手が閉じていたんで、なかなか刺せないと感じながらやってましたけど、『後半は空くかな』と。そのタイミングで綺世がうまく流してくれた。綺世の素晴らしいポストプレーだったなと思います」。同い年の絶対的エースに敬意を表した田中だが、彼がボランチに入ると高精度の縦パスが出るようになるのは事実だ。もちろん鎌田もそういったプレーはできるのだが、田中の方がよりダイナミックに前への推進力をもたらせる。そのストロングと佐野海舟のデュエルの強さ、ボールを持ち上がれる鋭さが融合すれば、鎌田・佐野のコンビとは一味違ったボランチの色合いを出せる。
4−0という歴史的圧勝の中で、田中自身、そして森保監督が得たものは、想像以上に大きかったように感じられる。「このチームには素晴らしい選手がいて、つねに競争がある。
田中としては、負傷で出場が断たれた盟友・三笘薫の分まで戦い抜かなければならない。それについて、本人は「頑張ります」と言葉を濁したが、胸の奥底では燃えるものがあるはず。チュニジア戦で浮上のきっかけを得た背番号7が躍進の原動力になってくれれば、リハビリ中の三笘も嬉しいだろう。いいニュースを届けるべく、ここからの本領発揮を期待したい。
取材・文=元川悦子
【ハイライト動画】鎌田大地が2試合連発、上田綺世が2発、伊東純也もゴール!

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