家電市場は緩やかに縮小へと向かっており、仕入れの統合などスケールメリットが必要な時代に入っていました。今回の再編は両社の大胆な生き残り策だと見ることができます。
注目はプライベートブランド(PB)家電の行方。ニトリはエディオンの大株主であり、すでに共同開発体制を敷いていました。
ニトリの格安ドラム式が与えた衝撃とヤマダの追撃
日本の家電メーカーが繁栄を謳歌していた時代が終焉を迎え、量販店の売場には海外メーカーや新興メーカー、小売店のPBなど、多種多様な商品が溢れるようになりました。これまでの家電は国内メーカーの強力なブランド力にコーティングされ、消費者は名のあるブランド同士を比較検討するのが当たり前でした。しかし、東芝やシャープ、富士通などの名門メーカーが外資系企業の傘下に入ると、ブランド信仰に陰りが見え始めました。
そうした中、サムスンやLG、ハイアールなど海外ブランドの高品質かつ低価格な商品が国内市場に浸透。さらに、バルミューダのような新興メーカーが、デザイン性を重視した製品を送り出して人気を博しました。
インフレによる消費者の節約志向が高まると、小売店が低価格なPBの開発に力を入れるようになりました。世間を驚かせたのがニトリのドラム式洗濯乾燥機。2024年に10万円を切る価格で本格的なスペックの洗濯乾燥機を発売しました。
ニトリは成熟しつつある家電市場から事業領域を広げており、2020年にホームセンターの島忠を買収。
ニトリの背中を追うように、PB家電の強化を図ったのがヤマダでした。オリジナルブランドの「RORO(ロロ)」から2025年4月にドラム式洗濯乾燥機をニトリとほぼ同じ価格で発売したのです。2026年には各PBブランドを統一し、「YAMADA Products(ヤマダプロダクツ)」として打ち出し、SPA商品戦略の強化を図りました。
エディオンの先手を打ったPB戦略とニトリの苦悩
エディオンは2018年11月に独自ブランドの「e angle(イー・アングル)」を立ち上げていました。デザイン性の高い商品に強みがあり、売れ行きは好調。2024年度の販売台数はニトリとの共同開発商品を除いて前年比で3.7倍に拡大しています。エディオンの久保允誉会長はヤマダとの経営統合を発表した6月5日の会見で、「PBの研究開発が一層進む」とコメントしました。経営統合の狙いの一つに、PB商品の共同開発や2社の売場を活用することによるシェア拡大があるようです。
ニトリとの関係について、エディオン側はこれまで通り取引をし、理解が得られるよう説明を続けるとしています。しかし、ニトリにとっては頭の痛い問題でしょう。
ニトリの足元の状況は厳しさを増しています。
しかも、期待をかけていたアパレルを扱うNプラス事業も不調気味。期首に44あったNプラスの店舗は期末に30まで縮小しています。島忠も減収でシナジー効果が思うように生まれていません。
主力の家具だけでなく、アパレルやホームセンターも低迷しているとなると、必然的に家電へと力が入ります。しかも、洗濯機の売れ行きは好調で、2025年度の売上は前年の2倍に増えているのです。ヤマダとエディオンの経営統合はニトリを牽制するかのような動きでもあり、今後の出方には注目が集まります。
日立の家電事業を買収したノジマの次なる一手は?
家電量販店のPB競争が激しさを増す中で、衝撃の発表をしたのがノジマによる日立の家電事業の買収。ノジマはすでにPB「エルソニック」を展開しています。日立ブランドは高級路線で差別化を図る計画。長年かけて積み上げた開発力をPBにも活かそうとしています。
ノジマは家電量販店の優等生。ヤマダやエディオンの営業利益率は1~3%ですが、ノジマは6%近い水準をキープしています。背景にあるのが、コンサルティング型の販売スタイル。機能や価格で販売するのではなく、顧客の課題を引き出して最適な提案をするところに強みがあるのです。
日立の家電事業を買収したノジマがPB商品を充実させると、価格競争力を高めたところに接客力が加わり、これまで以上に競合他社を引き離す可能性があります。
家電業界は海外メーカーの台頭が一服し、量販店のPB競争が過激化するという新たな時代を迎えました。ヤマダとエディオン、ニトリ、ノジマの戦いは特に注目度が高いと言えるでしょう。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。
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