―[インタビュー連載『エッジな人々』]―

30代で、人は守りに入るのか。それとも、もっと攻められるのか。
中島健人が選んだのは、後者だった。キャリア18年、ソロとして新たなスタートを切った今も、自らを「フレッシュな新人」と呼び、挑戦を続ける。その原動力に迫った──
中島健人が振り返る、精神的に苦しかった時期「表層的な部分を見...の画像はこちら >>

30代は20代の100倍楽しい

「Sexy Zone」としてデビューしたアイドル・中島健人(32歳)。俳優業にも力を入れ、エミー賞受賞歴もあるフランク・ドルジャーがショーランナー兼製作総指揮を務める大型国際ドラマ『Concordia』(’24年)のメインキャストへの抜擢など、話題作への出演が続いている。順風満帆そうに見える人生だが、2年前の30歳でグループを卒業し、ソロとして闘う彼を襲ったのは、想像以上の孤独と重圧だった。

──ソロとして歩み始めた今、一番変わったものは何ですか?

中島健人(以下、中島):逆にどう見えています?

──中島さんは何人いるんだろう、というほど幅広く活躍されている印象です。

中島:僕の計算で言うと、グループメンバー分くらい働いている感覚です。今は休みなく働かせてもらっています。

──そこは想定内でしたか?

中島:ここまではさすがに予想外の展開ですね。でもソロのアイドルとして生き抜くという覚悟を決めてはいたので、紆余曲折があったとしても、どんな修羅の道でもくぐり抜けてやろうという気持ちではありました。でも今は、その想定すら上回るくらい忙しくさせていただいています。僕はこの会社に18年いるんですけど、改めてこんなにたくさんの方にしっかりと求めていただけていることを、本当にありがたいと思っています。だから、あえて今はめちゃめちゃ新人のふりをしていますね。
本当はベテランなんですけど、フレッシュなニューフェイスという感じでアイドルをやっています(笑)。

──YouTubeで話されていた、「グループを卒業することが正直怖かった」ということとも関係していますか?

中島:賛否両論がすごかったんです。この決断に対して、表層的な部分を見て悪として切り取られてしまうことがあって、そのことに苦しんでいたし、怖かったんですよね。そのときに抱いた思いを、(※1)ソロデビューアルバムのリード曲「ピカレスク」の歌詞に込めました。愛が朽ち果てたとしても、応援してくれている人や家族、自分の大切な人たちとは一緒にいたい。世間に悪と呼ばれても僕はそれだけは貫き通すよ、っていう歌詞なんですよね。精神的に苦しい時期でしたけど、だからこそあの歌詞が書けたので、今となっては必要な期間だったと思います。

──30代に入ってからの大きな環境変化は、価値観にも影響していますか?

中島:ありますね。今、20代よりも何倍も楽しいです。やっぱり自分の感情やクリエイティブにふたをしちゃいけないんだと思う。その分、疲れも大きいですけど、でもいい疲れ、という感じです(笑)。20代の自分と比較して、あの頃はこれができたのに今は……、ということは全然ないですね。
でも今後の目標は、何歳でこうなってこの時代にはこれをやって、という具体的なものではなく、価値観としては“単純に最強になりたい”と思っています。

今は「セクシー」が僕を追いかけてきている

中島健人が振り返る、精神的に苦しかった時期「表層的な部分を見て“悪”として切り取られることに苦しんでいたし、怖かった」
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──中島さんの代名詞といえば、「セクシー」ですよね。「セクシーサンキュー!」というフレーズはこれからも変わらない?

中島:後輩からも「セクシーサンキューって健人くんの専売特許ですよね」って言われます。それは嬉しいんですけど、実は僕自身はそんなに使っていないんですよ。もちろんバラエティで求められたときには“セクシー返し”もしますし、CMでも言わせてもらっている。でもそれも、ご注文をいただいたので、「なるほどわかりました。それでは私の伝家の宝刀を抜くといたしますか」ってことなんです。それ以外は、基本的には抜かないポリシーなんですよね。

──ご自身としては、セクシーが武器とかプレッシャーという意識はないんですね。

中島:そうですね。別にセクシーに頼らずとも生きていけていますし、むしろ今は「セクシーが俺を求め始めている」。どういうことかと言うと、昔は僕がSexy Zoneというグループを広めたいがゆえに、自分からセクシーを追い求めていた側だったんです。でも気づいたら「『セクシーサンキュー!』って言ってください」と言われる側になっていて、セクシーに追いかけられている。
その状況から逃れるつもりはないし、求められている限りは言い続けると思います。ただ自分から触れることはほぼないよ、ってことですね。

──では、現在のコンセプトは?

中島:“ケンティー”ですね。僕は自分のことを、プロデューサーであるウォルト・ディズニーと、キャラクターであるミッキーマウスの共存体だと思っていて。ドリームランドの中でケンティーを主軸として、どんなふうにいろんなアトラクションを作っていくか。それは例えば、「(※2)IDOLICの魔法」と名前をつけたペンライトだったり、自分がプロデュースした香水だったりするんです。そのランドの中にはもちろん音楽があります。デビュー前のジュニアのコたちをプロデュースしたり、(※3)GEMNというコラボレーションユニットがあったり。GEMNには本当に感謝しているんです。ソロになって苦労していたときに自分を底上げしてくれたユニットだと思っているので、今後も期待してもらいたいです。

青春の妄想を込めた一曲

中島健人が振り返る、精神的に苦しかった時期「表層的な部分を見て“悪”として切り取られることに苦しんでいたし、怖かった」
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──3rdシングル(※4)「鬼事/Fiction Love」が発売しますね。TVアニメ『逃げ上手の若君』の第二期オープニングテーマ曲「鬼事」は、作詞にも携わっています。


中島:『逃げ上手の若君』の主人公・北条時行は、逃げることで英雄になっていくキャラクターなんです。逃げることは決して不正解ではなく、生きるためのすべであり、その中で強くなっていく。そこに着地するように「生き永らえて時を待て」という歌詞がポイントになっています。そこに中島健人のエッセンスとして、ロマンスや愛情の観点も加えたんです。運命に抗って生きていく人間の姿は、泥くさくても美しい。アイドルとしての自分のマインドにも通じる歌詞になっていると思います。

──作詞作曲を手がけた「Fiction Love」は、中島さんの主演映画『ラブ≠コメディ』の主題歌です。

中島:実は主題歌として最初に提案した曲はちょっと可愛すぎるということで、採用されなかったんですよ。「Fiction Love」は今年の2月にドラマ『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』の撮影中に、メイクをしながら作った曲です。映像を観たり、鼻歌を歌ったり、歌詞を書いたりしていたら、メイクさんに「こんなに忙しい人を初めて見た」って言われました(笑)。案外スムーズに作れて、「スラスラ書けたものは受け取ってもらえる」という感覚が生まれました。

──収録曲の中でも、「Hey!! Summer Honey」は、10年前に作詞作曲したソロ曲だと聞いて驚きました。


中島:大学4年生くらいのときに作った曲を、’26年版として録り直して収録しました。僕、普通の夏の青春を送ったことがないんです。友達同士でビーチに行ったり、バーベキューをしたり、ビーチを駆け抜けていく女性の後ろ姿を見つめて「ほどけそうな水着の紐、危ねぇぜ!」って声をかけたり(笑)。リア充たちは湘南辺りのきれいなビーチにさぞ行っているんだろうな、という青春の妄想を全部詰め込んだ曲ですね。……こんな話して大丈夫かな?(笑)

──大丈夫です(笑)。最近はTikTokでバズった曲がヒットを生むことも多いですが、その辺りも曲作りで意識されていますか?

中島:当然キャッチーさは大事にしていますが、まず自分自身がいい曲書いたなと思えることを優先しています。それに一人で悩むより、美術館に行ったり海外の街並みを見たり、誰かとの会話からアイデアが生まれるタイプ。音楽をやっている友人も多いので、この前は藤井風くんから「2番の転調がおしゃれ」と連絡が来たり、ちゃんみなさんとは作品のロケ地が偶然一致したので「いつでもカバーしていいよ」とやり取りさせていただいたりしたこともありました。

──バイタリティがすごいですが、やりたいことがどんどん湧いてきて、実現化している感覚なのでしょうか?

中島:まさにその通りですね。一貫しているテーマとしては、“自分らしく生きられているか否か”なんですよ。それが生きている意味に直結すると思っています。自分らしく生きることで、光が見えてくると思っています。
自分が作った曲をライブでお客さんに直接伝えること、セットリストを自分で計算して世界観をつくれること。これが自分らしさを伝える源になっていると感じています。いろんな活動をする中で、これからも“ケンティー”の音楽を聴きたいと思い続けてもらえるように、頑張り続けます!

【Kento Nakajima】
1994年、東京都生まれ。’11年にSexy ZoneのメンバーとしてCDデビュー。’24年よりソロ活動をスタート。俳優としても活躍し、近年の出演作に映画『知らないカノジョ』『ラブ≠コメディ』、ドラマ『Concordia』などがある

(※1)ソロデビューアルバムのリード曲「ピカレスク」
’24年12月25日にリリースされた1stアルバム『N/bias』のリード曲。「ピカレスク」=悪漢小説をモチーフにダークヒーローの苦悩を表現した

(※2)IDOLICの魔法
中島が世界中のアイドルファンに向けて発売した、新しいスタイルのペンライト。好きなカードが入れ替えられる機能付き

(※3)GEMN
中島とキタニタツヤからなるユニット、GEMN(ジェム)。TVアニメ『【推しの子】』第二期オープニング主題歌「ファタール」などを担当している

(※4)「鬼事/Fiction Love」
フジテレビのノイタミナで放送中のTVアニメ『逃げ上手の若君』第二期オープニングテーマ曲「鬼事」、中島の主演映画『ラブ≠コメディ』の主題歌「Fiction Love」をはじめ、自身が劇中で演じるアイドル、神崎麗司がリリースする挿入歌「ストロベリー」「愛してTonight」などを収録した3枚目のシングル

取材・文/細谷美香 撮影/彦坂栄治

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