マンションやアパートの共用部は、住民たちの良識があってこそ快適に保たれるもの。だが、中にはルールをまったく守らず、集合住宅を不快極まりない場へと変えてしまう者も存在する。

そんな苦悩を経験したという黒田智也さん(仮名・32歳)に話を聞いた。

マンションの共有部に「分別していないゴミ袋」を放置する迷惑住...の画像はこちら >>

好印象だった隣人の“奇行”

「うちの部屋の隣には中年男性が住んでいました。引っ越し時に菓子折りを持って挨拶に来てくれたりもしていたんで、ちゃんとした人だなと思っていたんです。隣人の部屋は角部屋で、年中家にいることが伺える感じから、フルリモート勤務なんだろうなと予想していました」

生活音と言ってもドアの開け閉めが日中でも聞こえるぐらいで、静かなものだったという。

「最初に気になったのが、夜自分が帰宅した時に、隣人の部屋のドアの横に、中身の入ったゴミ袋が置かれていたことでした。ただ、マンションにはゴミの集積所があるので、そこに捨てに行く前に他にもゴミがあったことを思い出して、一時的に置いているのだろうと思った程度でした」

だが、翌日になってもゴミ袋は廊下に放置されたままだった。

「それどころか、日を追うごとにゴミ袋は増えていきました。飲みかけのペットボトルとか弁当の空き容器、生ゴミなどが入ったゴミ袋も放置されている状態でした」

悪臭がするようになったため、黒田さんは、隣人がゴミを玄関を開けて出てきた際に、注意することにした。

「『1階に集積所があるので、集積所へ出してください』と伝えたら、『わかりました』と頭を下げて、翌日には全て無くなっていました。それでもう大丈夫だろうと思っていたんですが、1週間も経たないうちに、またゴミを溜め始めたんです」

自分が言っても効果がないと判断し、管理組合にも相談したという。

「組合側からも対応してもらったものの、しばらくの間はやめるものの、少し経つとまた元通りになってしまって……」

猛暑の夏に漂う強烈な悪臭…

そうして迎えた夏。深刻な状況になった。

「料理の生ごみや、ラーメンとかの汁物が入ったカップもそのまま捨てているみたいで、廊下全体にすごい臭いが漂うようになったんです。かなり離れたエレベータホールまで悪臭が漂うような状態でした」

35度を超える猛暑日となったある日のこと。


「その日も隣人はパンパンに膨らんだ生ゴミ袋を廊下に放置していて、廊下中にひどい臭いが充満していました。せっかくの休みの日なのにとうんざりしていると、廊下から叫び声が聞こえてきて……」

カラスの襲来が地獄絵図を招く

玄関を開けて様子をうかがうと、想像を絶する凄惨な光景が広がっていたという。

「カラスが生ゴミの臭いを嗅ぎつけたみたいで、ゴミ袋が食いちぎられて、廊下に盛大に中身がぶちまけられていたんです。例の隣人の部屋のドアの前には腐った汁が池みたいに広がっていて、ひどい状態でした……」

そこに隣人の姿もあった。

「隣人はドアを開けて外に出たところ、腐った汁の池にサンダル履きの足を突っ込んじゃったみたいで……自分の足元を見つめたまま呆然としていました。どうするんだろうと思っていましたが、さすがに放置はできないと思ったんでしょうね。『オエェ!』とえづきながらゴミを回収し始めたんです」

その後、外出して戻ってきた黒田さんが目にしたのは、意外な光景だった。

ホームセンターにでも行って買ってきたのか、自室から伸ばしたホースで水を撒きながら、デッキブラシで廊下を掃除していたんです。汗だくで掃除している姿はちょっと気の毒でしたが、正直、自業自得だと思いました」

この一件以来、隣人は共用部にゴミを一切置かなくなったという。

「あれだけ注意しても直らなかったのに、カラスがやってきてあっさり解決するなんて……。悪臭に悩まされていた日々が嘘みたいでしたよ」

<TEXT/和泉太郎>

【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め
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