先週末も8月下旬とは思えない暑さだった。22日の名古屋は最高気温が37.8度、翌23日も36.6度。
新潟でも両日31度を超え、比較的涼しいはずの札幌でさえ30度を上回った。
 そんな猛暑のなかでも競馬は行われている。ただJRAも手をこまねいているわけではなく、人馬を守るため、近年は夏競馬の「当たり前」を少しずつ変えている。

JRAが進める夏競馬の対策

競馬“真夏開催”に浮上した新たな問題…猛暑でも「ポロシャツ禁...の画像はこちら >>
 象徴的なのが、新潟・中京で実施されている「競走時間帯の拡大」だ。2026年は実施期間を前年の4週間から6週間へ延長。日中に長い休止時間を設け、後半のレースを夕方にずらしている。

 さらに北海道開催や東西主場で装鞍所への集合時間を見直し、パドックの周回時間も短縮。ミストの増強や馬体冷却用シャワーの設置など、競馬場内での暑熱対策を着々と進めている。

 ただ、7月の東海S後には、川田将雅騎手が騎乗馬ダノンフィーゴについて「明らかに熱中症でした」とコメントするなど、対策が進んでもなお、真夏の競馬には暑さのリスクがつきまとうのが現実だ。

猛暑日の口取り式で浮かび上がった「服装規定」への疑問

 では、視点を少し変えてみよう。猛暑に合わせて変えるべきなのは、競走以外にもあるのではないだろうか。

 たとえば8月9日の札幌競馬では、ある出来事が大きな注目を集めた。一口クラブ「DMMバヌーシー」の口取り式において、参加会員の服装や振る舞いなどがSNS上で疑問視された。

 それを受けDMMバヌーシーは翌日、公式サイトで「運営・管理上の不備」があったとして謝罪し、再発防止策を公表した。
もちろん、決められたルールが存在する以上、参加者がそれを守るべきなのは当然だ。

 ただし、「ルールを守ること」と「そのルールが現在の日本の夏に合っているかどうか」は別の問題である。この一件をきっかけに、SNSでは口取り時の服装規定そのものにも目が向いた。

 もちろん、厳しい服装規定を設けているのはDMMだけではない。確認できた複数の一口クラブでも、夏季はノーネクタイ、ノージャケットでの口取り参加を認める一方、男性にはワイシャツや革靴を求めている。ポロシャツ、Tシャツ、短パン、サンダル、スニーカーなどは不可だ。

 つまり「クールビズ」とはいっても、基本的にはジャケットとネクタイを外せる程度。一般社会では夏の仕事着として珍しくなくなった襟付きのポロシャツにも、中央競馬の口取りでは高い壁が残っている。

現役馬主からも上がる、夏場のドレスコード見直しを求める声

 そして服装をめぐる話は、口取りだけではない。馬主席などを含めた馬主エリアでも、夏場のドレスコードについて現役馬主からも疑問の声が上がっていた。

 たとえば三宅勝俊氏は、2023年の阪神スプリングジャンプを制したジェミニキングや、中央4勝のラヴァーズポイントなどのオーナーとして知られるが、今月、服装が規定に合わず中京競馬場の馬主席に入れなかったという。その際、自身のXで「クールビズで襟付きだったらいいんちゃうん?」「暑いのにジャケット着てるのに」と率直な思いをつづっていた。

 これはあくまでも馬主席での出来事だが、三宅氏は8月16日にも、ポロシャツを「可」とする地方競馬の夏季ドレスコードの例を紹介したうえで、「夏場だけでもJRAも統一してほしいなぁ」と投稿している。


 もちろん、地方競馬は競馬場や主催者によって規定が異なる。「地方なら何を着てもいい」という話ではない。それでも、一定の服装基準を維持しながらポロシャツを認めている例があることは興味深い。

ワイシャツはよくてポロシャツはダメ…その線引きは妥当なのか

 それでは、そもそもなぜ馬主席や口取り式にドレスコードを設けるのか。目的は、その場の品位や格式を保つことにあるはずだ。

 それならば、ワイシャツなら品位があり、襟付きのポロシャツなら品位がないのか。革靴なら問題なく、清潔感のあるスニーカーなら馬主エリアにふさわしくないのか。その線引きにはやはり疑問が残る。

 何も短パンにランニングシャツ、ビーチサンダルまで認めればいいと言っているわけではない。問われているのは、ドレスコードをなくすことではなく、格式を保ちながら今の日本の夏に合った線引きをどこに置くかだろう。

健康より優先される格式はない…「競馬版クールビズ」の必要性

 競走時間をずらし、装鞍所への集合時間を見直し、パドックの周回時間まで短くするほど暑さへの警戒を強めている。だからこそ筆者としても、健康より優先される格式があっていいとは思わない。最高気温が35℃を超えるような日にまで、ワイシャツと革靴にこだわる必要が本当にあるのだろうか。


 襟付きのポロシャツなど、品位と暑さ対策を両立できる選択肢はある。日本の夏がこれだけ変わった今、人間の服装にも本当の意味での「競馬版クールビズ」があっていいはずだ。

文/中川大河

【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。
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