日米のプロレス界でトップレスラーとして活躍した元NWA世界ヘビー級王者のドリー・ファンク・ジュニアさんが4日、85歳で亡くなった。

 ドリーさんは、弟のテリー・ファンクさんと共に父親でプロレスラーのドリー・ファンク・シニアさんの薫陶を受け大学卒業後にプロレスラーとなり、1963年1月にデビューした。

 69年2月11日、フロリダ州タンパでジン・キニスキーを破り、当時、世界最高峰のタイトルだったNWA世界ヘビー級王座を28歳で獲得。73年5月24日にミズーリ州カンザスシティでハーリー・レイスに敗れるまで、4年3か月間にわたり防衛した。

 初来日は69年11月の日本プロレスだった。12月2日に大阪府立体育会館でアントニオ猪木さんと60分フルタイムで防衛。翌日の3日には東京体育館でジャイアント馬場さんと同じく60分フルタイムで連続防衛し実力と驚異的なスタミナを日本のファンに見せつけた。

 馬場さんが72年10月に全日本プロレスを旗揚げすると弟のテリーさんとの外国人レスラーを招聘(しょうへい)するブッカーも担当した。レスラーとしても看板選手として来日。テリーさんとの「ザ・ファンクス」は1977年12月15日に蔵前国技館で行われた「世界オープン・タッグ」最終戦でアブドーラ・ザ・ブッチャー、ザ・シークとの対戦でテリーさんがブッチャーのフォークで腕を刺されながら優勝し感動を呼んだ。

 ドリーさん、そしてテリーさんとの兄弟タッグ「ザ・ファンクス」の闘いを華やかに盛り上げたのが入場テーマソング「スピニング・トー・ホールド」だった。

 同曲を入場テーマに採用したのが当時、日本テレビが毎週土曜夜8時から中継していた「全日本プロレス中継」のディレクターだった梅垣進さんだった。

 梅垣さんは、全日本プロレスの大会でミル・マスラカスの「スカイハイ」をはじめ、レスラーの入場時にテーマソングを流すことを手がけた。

 「スピニング・トー・ホールド」は、ロックバンド「クリエイション」のリーダー、竹田和夫が作曲した。

1977年発売のアルバム「ピュア・エレクトリック・ソウル」に「SPINNING TOE‐HOLD」として収録されている。

 梅垣さんは「ファンからのはがきでこの曲を知りました。聞いてみると、ファンクスのイメージにピッタリだなと思いまして、そのまま使いました」と明かす。

 「スピニング・トー・ホールド」が一気にファンの間で浸透し感動を呼んだシーンがある。

 それが「世界オープン・タッグ」最終戦のブッチャー、シーク戦の試合後だった。テリーさんが腕をフォークに刺されながら優勝した表彰式。ドリーさんと肩を組んで感涙するリングを見てディレクターだった梅垣さんは、独断で「スピニング・トー・ホールド」を蔵前国技館の館内に流したのだ。

 満員の観衆はテーマソングにのって手拍子し、テリーは雄たけびを上げて号泣した。梅垣さんは当時を振り返る。

 「(プロデューサーの)原(章)さんに事前に言わなくて場内の雰囲気で僕が判断して原さんに黙って流しました。もしも、場内がしらけたら後で怒られたと思いますが、おかげさまでファンのみなさんが盛り上がってくれたから何も言われませんでした。ディレクターとしては黙って流したのは良くないことですが、盛り上がってくれて良かったです」

 梅垣さんの独断で「スピニング・トー・ホールド」はプロレス史に残る伝説の名曲となった。

 「入場の時にかかっていたテーマソングが試合後にかかったのはこの時が初めてでした。館内の盛り上がり、テリーの涙…様々な思い出があって今もすごく印象に残っています。当時のファンの方も印象に残っているシーンだと思います」

 今は、日本でも海外でも試合後、勝利した選手のテーマソングを流すのが定着した。すべては、49年前の「スピニング・トー・ホールド」が出発だった。

 「ファンクスは全日本にとって最大の功労者です。僕も大好きなレスラーでした」

 大好きなドリーさんの試合で梅垣さんは「ファンクスでのタッグでの試合が一番、覚えている」と数多くの名勝負に思いをはせた。ドリーさんのシングルマッチで思い出深い一戦を明かした。

 「シングルではオープン選手権の開幕戦で足立区体育館でブッチャーとシングルマッチをやったんですが、これをすごく覚えています」

 75年12月6日の足立区体育館でのブッチャー戦を挙げた。この一戦は土曜夜8時から生中継だった。

 「どうしてこの試合が印象に残っているを覚えているかというと、ドリーが場外でブッチャーへブレーンバスターをやったんです。あのブッチャーをブレーンバスターで投げた選手を見たことがなかったので本当にびっくりしました」

 2023年8月23日にテリーさんは79歳で亡くなり、ドリーさんが逝った。「ザ・ファンクス」は、伝説となった。

梅垣さんは哀悼の思いをささげた。

 「ご苦労さまでした。ありがとうございます。天国で馬場さん、ジャンボ(鶴田さん)、テリーと楽しんでください」(福留 崇広)

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