競泳で沖縄県の選手と日本代表選手の交流を目的とした「沖縄県招待スプリント選手権」が10月4日、那覇市の奥武山公園水泳プールで行われる。男子自由形で五輪2大会連続出場の塩浦慎理(ReCORE)が発起人で、第2回大会となる今年は五輪3大会連続出場の池江璃花子(横浜ゴム)らが招待選手として出場する。

大会オーガナイザーの塩浦が取材に応じ、競技会の企画という現役オリンピアンとしては極めて珍しい挑戦の意義と、沖縄水泳界への思いを語った。

 沖縄のプールは、10月がアツイ。第2回を迎える「沖縄スプリント」は今年、池江璃花子や男子200メートル(M)自由形で25年世界選手権銅メダルの村佐達也(イトマン東京)ら、トップスイマーが地元選手とレースに臨む。大会の発起人は、16年リオ、21年東京五輪代表の塩浦慎理。34歳のスプリンターは、自ら競技会を企画するという現役選手では異例の試みに挑戦している。

 「初開催の昨年は、大会が一つの形となり嬉しい気持ちがありました。そして継続的に行っていこうと始めた中、2回目を開催できることを本当に嬉しく思います。沖縄の子どもたちには、日本代表選手が泳ぐ姿を、実際にその目で見てほしいです」

 昨年10月の第1回大会は、地元スイマーを中心に624人が参加。パリ五輪男子400M個人メドレー銀メダルの松下知之(東洋大)ら、招待選手の泳ぎに目を輝かせた。池江は今回が初参戦。塩浦自ら、声をかけ出場を打診した。

 「昨年、次回大会に来てほしい選手のアンケートを取り、池江選手という声が多くありました。

出場をお願いをしたところ、大会の趣旨にも賛同してくれて自ら『4種目、出場します』と言ってくれています。アジア大会代表の成田実生選手も出場予定ですが、彼女は大学の仲間たちと『一緒に出てもいいですか』と、自らエントリーしてくれました。嬉しい気持ちでいっぱいです」

 神奈川出身の塩浦。沖縄の水泳界に特別な思いを持ったのは、県内で水泳教室を行った23年秋だった。教える子どもたちの反応が「圧倒的によかった」。そのキラキラとした目に、心が動いた。

 「沖縄では、現役(トップ)選手が水泳を教えに来るということ自体がとても珍しいということで、僕が行った時にすごく喜んでもらえました。この子たちのために何かできないかと思った時に、大会の開催を考えました」

 塩浦は少年時代、寺川綾さんや奥村幸大さんら、当時高校時代から日の丸を背負っていた選手と同じ競技会に参加。目の前で、日本新を樹立する姿を見たという。抱いた憧れ。自身の経験も踏まえ、沖縄では大会という形にこだわった。

 「やはり、選手が速く泳ぐ姿を目の当たりにするという機会がいいかな、と思いました。

関東であれば、トップ選手と同じ大会に出場することは珍しくはありませんが、沖縄の子どもたちはそうではない。彼らにも、そういった体験をしてもらいたいなと。自分自身、子どもの頃にサインをもらったりしたことが嬉しかった。それが、五輪を目指すきっかけにもなりました」

 23年の水泳教室後、一念発起。大会の創設に乗り出した。道のりは楽ではなく、25年10月の初開催まで約2年を要した。現役選手として練習もしながら、拠点の東京と沖縄を何度も行き来した。

 「まずは、会場を押さえるところからのスタート。当初はスケジュールが合わず頓挫しそうになりましたが、プールがないと何も話が進みません。現地まで行って、管理の方に『この週だったらいけますか?』と直談判しました。そして沖縄県水連の方にもご協力をいただいたことでスケジュールの調整をつけることができ、何とか会場を確保することができました」

 沖縄県内の選手は、参加費が無料。ここも、塩浦のこだわりだった。

運営費を捻出するため、自らスポンサー探しに奔走。1年目は、6社が協賛についた。

 「直接足を運んで、営業をさせてもらいました。やはり自ら行くことが何よりだと思い、自分の思いを伝えるところから始めました。もちろん、今年も含めてお断りされたところはあります。ただ、今回は縁がなかったかもしれないけれど、試合当日はぜひ、会場に見に来てくださいとお願いしています。昨年の大会の盛り上がりを見て『継続して協賛します』と言ってくださる会社も多く、とてもありがたいです」

 主催の沖縄県水連、そして中大の先輩でもある元日本代表・細川大輔さん、地元スイミングのコーチらの尽力もあり、第1回大会は成功。次世代を担う選手とトップ選手が笑顔で交流し、レースでは4つの県記録も誕生した。「あんなに感謝されることって、あるんだなと思いました」と頬を緩めて振り返る塩浦。そして今年、自身のもとには更に嬉しいニュースが飛び込んだという。

 「昨年、村佐選手からサインをもらった小学校高学年の男の子が、今年のジュニアオリンピックの標準記録を切ったと連絡をもらいました。100Mで、自己ベストを約6秒も縮めたそうです。

もちろん、本人の頑張りが何よりですが、あの日の経験がいい刺激になったのかなと思います。水泳だけでなくてもいい。何か子どもたちがやる気になる、そのきっかけになってくれていたらと思っています」

 協賛社と参加選手も増えて迎える、第2回大会。34年には沖縄での国スポを控える中、塩浦は「沖縄スプリント」を通して競技力の向上、競泳人気の高まりに大きな期待を込める。「日本一盛り上がる大会」をつくっていくことが目標。未来を思い描き、その熱量は高まっていくばかりだ。

 「34年の国スポで活躍する選手が、この大会から出てくれたら嬉しいです。いずれは、沖縄から県勢初のオリンピック選手も輩出したい。大会を盛り上げて、野球やバスケットボールといった、沖縄で大人気のスポーツに競泳で肩を並べたいという大きな目標もあります。今大会は、アジア大会が終わった直後に開催されます。子どもたちは代表選手をテレビで見て、すぐに直接会えるチャンスがある。すごくいいタイミングです。

めちゃくちゃ熱い、そんな大会になることを期待しています」

 秋晴れの沖縄で、思いと夢がつながっていく。(大谷 翔太)

 ◆沖縄県招待スプリント選手権 小学1~4年から一般までの5区分で、50メートルの4種目で行われる競技会。競泳男子で元日本代表の塩浦慎理がオーガナイザーを務め、2025年10月に第1回を開催。日本代表が招待選手などで参加する。大会前日には代表選手による小・中学生向けの水泳教室、沖縄県内の指導者に向けた日本代表コーチによるコーチングクリニックも行われる。主催は沖縄県水泳連盟。

 ◆塩浦 慎理(しおうら・しんり) 1991年11月26日、神奈川・伊勢原市生まれ。34歳。湘南工大付高―中大。2016年リオ、21年東京五輪代表。19年世界選手権では、男子50メートル自由形で日本勢18年ぶり、2人目の決勝進出を果たして8位。同種目の元アジア記録保持者。

188センチ、89キロ。

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