滋賀・栗東トレーニングセンターで競走馬の調教に主に使用されているのが、坂路とCWコース。その違いを知ろうと、山本理貴記者が走ってみた!?

 栗東トレセンの調教では、坂路とCWコースの使用率が格段に高い。

敷材にウッドチップを使用しているという点では同じだが、傾斜の有無と走ることのできる距離に違いがある。

 今年の2冠馬ロブチェンは、共同通信杯(3着)で唯一の敗北を喫した。その最終追い切りは坂路だった。担当の房野助手は「あの時は疲れが残って、レース前から馬が苦しがっていた」と振り返る。その後の皐月賞日本ダービーではCWコースの半マイル追いでコンディションを整える従来の調整方法に戻して勝利。ダービーの取材でロブチェンの追い切りに注目しているうちに、両コースでかかる負荷はどのような差があるのか詳しく調べてみたくなった。

 自分の“脚”で感じてみようと、今月5日の調教終了後に実地調査に出かけた。栗東トレセン馬場造園課の土木係長を務める藤間竣亮さん(35)の案内のもと、まずは坂路下の資材置場へ。馬場の命であるウッドチップが木片の細かさごとに分けられて積まれている。坂路、CWコースで使用されているものは同じで、材料はアカマツとスギ。硬くて丈夫なうえ、国産の間伐材から入手でき、クッション性に優れている。それぞれの割合は1対1で、厚みの基準は25センチ。

層ごとに木片の細かさが異なる。

 藤間さんは「基盤になる砕石層に水だけを通す土木シートを敷きます。その上から粗い新材のチップを配置して排水層をつくり、古いチップ、コース表面の細かいチップを使って2層、3層という構造になっています」と説明する。粗いチップのみを使用するとバランスが悪くなってしまう。上層には網状の器具でふるいにかけた、適度な細かさの木片を用いて馬場を安定させている。

 続いてCWコースへ潜入した。コースレベルから見ると、直線入り口からゴールまでの遠さに驚いた。普段、調教スタンドから見下ろしている風景とは全く印象が異なる。実際に走ってみた。排水層の上に支持層と呼ばれる板のような固い部分があるおかげで、足がとられることなく、しっかりと踏み込むことができる。クッションが利いており、アスファルトの上を走った時のようなすねの骨にくる疲労感もない。脚に負担をかけずに、実戦的な調教を積むことができるのが最大のメリットだ。

平坦なぶん、かかる負荷の調整もしやすい印象だ。

 最後は坂路に足を運んだ。「800メートル全部は無理でも、200メートルなら」という甘い見通しで、ラスト1ハロン地点からタイムを測ることにした。序盤こそ威勢良く駆け上がっていったが、100メートルを過ぎると呼吸が激しく乱れる。肺が可能な限りの酸素を取りこもうとしているのが分かる。3・5%の傾斜はこんなにもしんどいのか…。ゴールするころには完全に息が上がってしまった。完走には約38秒を要した。改めて競走馬の身体能力の高さを感じた。

 遅いスピード、短い距離でも、心肺にかかる負荷は絶大。さすがに下半身にも疲れがあった。「入厩したての2歳馬は登りきれずに倒れてしまう馬もいます。

これだけ負荷がかかるので、やっぱり馬場が安定した状態じゃないといけないというのは、我々も気にしています」と藤間さん。レース前はオーバーワークに注意が必要だが、坂路の方が肉体強化の面では秀でている印象を受けた。

 それぞれ異なるベクトルの利点があり、使い分けられている両コース。実際に馬場を走って共通して感じたのはウッドチップの下支えがあるということだ。筋肉をしっかりと強化しながら、内部の骨は保護する。競走馬の故障防止に極めて重要な役割を果たしている。使用率が高い理由が身にしみて分かった。

    (山本 理貴)

 ◆栗東・CWコース 1周1800メートル、幅員20メートル。通常は右回りで火、日曜は左回りとなる。地盤の関係で若干の起伏はあるが、ほぼ平坦。長い距離をじっくり走らせることによってスタミナを強化したり、レースに近い形でコーナリングなどの感覚を養うことができる。併せ馬は3頭まで許可されており、必要に応じて柔軟に調教を行えるのが特徴。

 ◆栗東・坂路 全長1085メートル、高低差32メートル。勾配はスタートから300メートル地点までは2・0%(約1・1度)、続く570メートルは3・5%(約2・0度)、100メートルは4・5%(約2・6度)、ラストの115メートルで1・25%(約0・7度)。助走区間が設けられており、タイムは、3・5%区間の終わりをゴールとする800メートル分を200メートルごとに計測。自然の起伏を利用して造られ、数度の延伸工事を経て現在の形状に。安全にスピードを落とせるように設定されている。

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