イタリアで開催中の第83回ベネチア国際映画祭(12日まで)で現地時間4日、映画「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」(9月11日公開)の塚本晋也監督、主演のロドニー・ヒックス、ジェフリー・ラッシュが公式記者会見・フォトコールに登場した。
同映画祭の最高賞である金獅子賞を競うコンペティション部門に選出された同作。
記者から「戦争における心傷後ストレス障害(PTSD)を取り上げようと思った理由は?」と問われた塚本監督は、10年前に同作の本に出会ったことを挙げ、「アレン・ネルソンさんのベトナム戦争体験を描いた本だったのですが、戦争で起こることを赤裸々に語っていた。映画にして、多くの皆さんにみてもらうことは非常に大事なことだと思い、この映画を作りました」と今作の原点を明かした。
役とどう向き合ったかと聞かれたロドニーは「これまであまり目にしてこなかった(加害者)視点から、物語が描かれていた。また、PTSDというテーマがここまで描かれることもありませんでした。根底にある問いを通して、私たちの日常を見つめ直す、そうしたことを考えさせる力がある(作品だ)と思う」と回答。ジェフリーは「50年役者をやっていますが、撮影のリズムやペース、そして監督の純粋なオープンさが、素晴らしい環境を作ってくれた」と監督に感謝した。
塚本監督は「ドローンなどのテクノロジーによって、加害者側の意識や戦争との距離感が変わってきていることは、恐ろしい出来事。加害者側のあり方が変わっても、被害者側は、内臓が飛び散り、目が飛び出し、家族が悲しむ。昔も現代も、その悲劇性は変わりません」と強調。「被害者がどのような思いをしているか想像することが大事。被害そのものは変わらないということを、よく考えてほしい」と訴えた。
今作に込めた思いについては「私が描こうとしたのは、アレン・ネルソンさんの人生そのもの。戦争に行けば恐ろしい目にあい、そして恐ろしいことをしてしまう。そのことを描きたかった」とコメント。「若い世代に戦争を防ぐ力があると信じてこの映画を作っています。登場人物と同化し、実際に体験しているように感じてもらえる作品にしたかった。映画の力によって、若い人たちが『戦争の現場には行きたくない』と身体で感じてもらえるのではないかと思う。なるべく多くの人にこの映画を広げていただきたい」と作品への思いを熱弁した。
今作は、ベトナム戦争に従軍したアレン・ネルソン氏が、自らの戦争体験と帰還後の葛藤を描いたノンフィクション。ネルソン氏は自身の体験をもとに日本全国で1200回以上の講演を行い、戦争を語り続けてきた。塚本監督は同映画祭の常連で、今回で8回目の選出。同部門は4回目の出品で、現地時間12日に授賞式が行われる。

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