日清製粉グループは8月21日、夏季食糧記者懇談会を開き、日清製粉グループ本社の永木裕社長と主要事業会社4社の社長が、足元の事業環境と今後の成長戦略を説明した。永木社長は、今後数年間でグループの潜在的な競争力を引き出し、収益モデルの構造転換を進める方針を示した。
日清製粉グループの2027年3月期第1四半期連結業績は、売上高が前年同期比1.1%増の2176億8100万円、営業利益が0.9%減の111億9700万円、経常利益が3.2%減の125億1700万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が19.5%減の93億4900万円だった。
売上高は、海外製粉事業で米国の生産体制強化による出荷増や為替換算の影響などがあり増収となった。営業利益は、海外製粉事業や酵母・健康・バイオ事業の出荷増などがあった一方、中食・惣菜事業の販売減、エンジニアリング事業で前年に大型工事があった反動、中東情勢に起因するコスト上昇などで減益となった。
通期は売上高8700億円、営業利益460億円を予想する。中東情勢に伴うコスト転嫁のタイムラグの影響を15億円と試算し、営業利益に織り込んだ。永木社長は、業績予想への反映について「緊急事態を織り込まない業績予想では意味がないと考え、現時点で想定できる範囲を反映した」と説明。今後の情勢を見ながら、拡販、高付加価値化、コストダウン、適正な価格改定など複合的な対策を講じる。
今期の「一丁目一番地」には、①複合的なインフレ対抗策の実行、②事業ポートフォリオの再評価と成長戦略の実行、③危機対応力に優れたガバナンス体制の構築――の3点を掲げる。
原料費、人件費、物流費などの上昇は今後も続くとの見方から、永木社長は「消費者の皆様への価値の提供と事業の発展を両立する、そのような息の長い施策を続けていく必要がある」とした。
中長期の経営戦略では、短期収益力と長期価値の創造を両輪とする。
永木社長は「もっと強く言えば、100年後の企業価値を意識した経営、これを目指していきたい」と強調。一方で「ここを目指すにはやはり実力が必要」とし、その実力をファーストステップでしっかり作る考えを示した。
構造転換のキーワードが「自立と連合」だ。日清製粉の分社から25年が経過し、事業環境やグループのポートフォリオが変化する中、グループ内の強い事業を連合させることが必要になると指摘し、グループの組織や経営資源を最適化する考えを示した。
事業群も「小麦粉関連素材」「食品」「技術拡張型」「BOP(Base of the Pyramid)」の4領域で捉え直す。小麦粉関連素材では国内の競争力を一段と高め、海外事業を拡大する。食品では加工食品、中食・惣菜、フィリング・ソースなどが持つブランド、販売チャネル、生産技術、拠点などの強みを生かし、バリューチェーンを最適化する。技術拡張型では、バイオやエンジニアリングの技術優位を軸に事業を再定義する。
記者との質疑で、社会課題と事業戦略の統合について問われると、永木社長はグローバルサウスを例示。インドを足掛かりに、中東、アフリカ、南米なども視野に、各国固有の課題に適合した商品開発や事業展開の可能性に言及した。
国内では、人口減少や労働力不足を見据え、AIなどの技術革新によって生産性を高め、そこで生み出した人的資源を新事業や新たな価値を生み出す仕事へ振り向ける考えを示した。永木社長は、こうした転換には「もう一段、力をつけないと」とし、そのための取り組みをまず進める。
〈日清製粉、国産小麦の活用加速 「製粉会社としての使命」〉
4月に就任した日清製粉の横山敏明社長は、顧客とともに新たな食文化を創造するとの思いを込めた同社のコンセプト「食文化創発カンパニー」のもと、国産小麦の活用と高付加価値商品の育成を進める。
横山社長は、政府が2030年の小麦生産量137万tを目標としていることに触れ、「国内産小麦をより有効に活用していくことが製粉会社としての使命」と強調した。
国産小麦を使った商品では、北海道産小麦100%を使用した「エールドオル」や、岡山県産小麦「ふくほのか」を100%使用した「晴天ノ絆」などを展開。「エールドオル」は発売後、顧客からの関心が高く、出荷も伸びているという。「晴天ノ絆」は水島工場を生かし、地元岡山を中心に提案を進めている。
健康への貢献では、高食物繊維小麦粉「アミュリア」の育成に力を入れる。食物繊維を後から添加するのではなく、もともと食物繊維を多く含む小麦を原料とする。
横山社長は「今まで食べていたパンや麺と何も変わらず、おいしさを持ったまま、自然に発酵性食物繊維が入ってくるところが売り」と説明。
海外製粉事業では、北米と豪州の収益力向上に取り組む。北米では一時厳しい経営状況にあったものの、販売戦略の見直しや生産性向上を進め、横山社長は「過去最高益を出し続けている」と説明した。日本食が広がる中、新たな需要の取り込みを模索する。
豪州では、インフレに伴う生活コスト上昇が続き、個人消費も抑制傾向にあるなど、厳しい市場環境が続く。高食物繊維小麦粉「Wise Wheat」の拡販や製品リニューアル、生産ラインの自動化、工場改修、サプライチェーンの効率化などで収益力向上を図る。
〈日清製粉ウェルナ、「即食」へさらに注力 商品数を約2割絞り込み〉
日清製粉ウェルナの岩橋恭彦社長は、「本格」「利便」「即食」「健康」を商品開発の軸とする中、今後は特に即食ニーズへの対応を強化する。
「マ・マー」は2025年9月から大谷翔平選手を起用した広告宣伝を展開。パスタ市場全体が弱含む中でも販売は堅調に推移している。3月にリニューアルした「青の洞窟」も伸長し、販売金額は4月が前年同月比126%、5月142%、6月135%となった。
岩橋社長は、生パスタや電子レンジ対応商品への反応を踏まえ、「電子レンジでできるようなものが非常に好まれているということもあって、この即食にこれからさらに力を入れていこうと思っている」とした。
一方で商品政策では選択と集中を進める。「アイテムを20%近く減らしながら、売上を確保していく」と説明。秋の新商品も、中東情勢の影響などを踏まえて品数を絞った。
成長分野としてECも強化する。「青の洞窟」ではEC限定の「La Vita」を展開。既存商品より約3割高い価格帯だが、「ECであれば売れるのではないか。EC限定の青の洞窟を今回チャレンジしたい」と話した。
海外ではベトナムのBtoC事業を拡大し、商品数は20品近くまで増えている。広告宣伝を強化するとともに、配荷も順調に拡大している。岩橋社長は現地を訪れた際、「若い方は結構パスタを食べている」と手応えを語り、「少し早めに我々は出たけれども、これからチャンスがあるのではないか」と市場開拓への意欲を示した。
業務用では、人手不足を重要な課題と捉え、省力化や調理負担軽減につながる商品提案を進める。
〈オリエンタル酵母工業、食品素材の高付加価値化 健康食品も育成〉
オリエンタル酵母工業の新井秀夫社長は、パン・菓子、米飯、麺の各市場に向けて新製品開発を強化する。原材料費や人件費が上昇する中、付加価値を高めながら顧客のコスト低減や生産性向上にもつながる素材を提案する。
パン・菓子市場向けでは、なめらかな食感のカスタードや、具材感、シズル感を持たせたカレーフィリングなどを開発する。新井社長は「おいしさも追求して、その上でコストダウンを図って、皆さんに使いやすい原料を供給していきたい」と話した。
米飯市場向けではフードロス削減や賞味期限延長のニーズを背景に、酸味や酸臭を抑えた日持向上剤を開発。麺市場向けでは褐変防止効果を持つ粉末かんすいや麺質改良剤などを展開する。定番製品の比率を高め、生産性改善と顧客ごとのカスタマイズの両立を図る。
健康食品事業では、グループの事業ポートフォリオ再編に伴い、4月からサプリメント事業を取り込んだ。ビフィズス菌配合の「ビフィコロンS」を中心に顧客獲得を強化し、8月17日からテレビCMを展開している。
「ビフィコロン 腸脳アシスト」などの育成も進める。同商品は機能性表示食品として、便通を改善する機能と、加齢に伴い低下する認知機能の一部である記憶力・空間認識力を維持する機能を届け出ている。
11月には、高発酵性食物繊維を使った「快調ファイバー」を投入する予定だ。
男性更年期に関連する市場にも取り組む。2014年に「タマネギアミノ酸P」を含むサプリメントを発売しており、10月から同素材のBtoB向け原料販売を始める予定。
ミネラル酵母など同社が持つ既存素材との組み合わせも検討し、健康食品事業の拡大につなげる。
〈トオカツフーズ、「データに基づく経営と現場力」を横展開〉
トオカツフーズの河田篤治社長は、共働き世帯や単身世帯の増加、調理負担軽減ニーズなどを背景に、中食・惣菜市場には今後も成長余地があるとの認識を示した。
河田社長は「このマーケットについては、まだ成長の余地、伸びる余地がやっぱりまだまだある」とし、コンビニだけでなくスーパーなどにも広がる中食需要を取り込む。
日清製粉グループは6月25日、中食・惣菜事業の運営体制を変更し、トオカツフーズを軸とした一体運営へ移行した。従来は日清製粉デリカフロンティアが中間持株会社として各社を束ねていたが、トオカツフーズが持つ経営や現場改善のノウハウを事業全体に広げる。
河田社長は同社の強みについて「やはりデータに基づく経営と現場力が優れている」と説明。「この経営と現場力で、本当に業界最高水準の品質、それから生産性というものを追求していく会社」でありたいとした。
生産工程の進捗や出来高をリアルタイムで把握できるシステムなどを活用し、共通指標に基づく改善を進める。トオカツフーズの従業員1人当たり営業利益の指数は、2021年度を100として2025年度には197まで上昇した。
河田社長は、市場拡大の機会を着実に取り込み、事業成長につなげる考えを示した。
日清製粉グループの各事業会社はそれぞれの強みを磨きながら、グループ内の技術や生産拠点、販売チャネルなどを生かす。永木社長が掲げる「自立と連合」を、各事業の成長につなげる考えだ。









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