妻ヴェロニクさんは銀行のホスピタリティマネージャー。夫ローランさんは社会学者。
愛着ある賃貸物件を購入、そして大工事
ヘリンボーンに張った床、高い天井、大理石の暖炉etc.
ヴェロニクさん&ローランさんのお住まいは、19世紀オスマニアンスタイルの特徴が満載! 私たちが思い描く「パリのアパルトマン(アパート)」そのものです。
「はい、1892年に建設された19世紀のオスマニアン建築です。長女を妊娠した1998年に引越してきて以来、ずっと住み続けています。本当にこの住まいが好きですし、活気のあるバスティーユ界隈も大好き。以前は18区に住んでいて、私たち夫婦は刺激的なライフスタイルに満足していたのですが、子どもを育てるにふさわしい安全な環境と、家族で暮らせる面積を求めて、ここに越してきました。当初は賃貸でしたが、その後建物が売りに出されることになり、2004年にオーナーになりました」と、ヴェロニクさん。
玄関から続く廊下にある本棚は、ローランさんの祖母から譲り受けたボックスを転用したもの(撮影/Manabu Matsunaga)
19世紀の建設当時に装備された暖炉は、暖房には利用せず、もっぱら飾りのスペースに。年代物の暖炉は、インテリアアイテムとして人気が高い(撮影/Manabu Matsunaga)
入居当初からアパートの保存状態は良好で、室内に入った瞬間、とてもいい気分になったことを覚えているのだそう。南北両側にある窓から光と風が心地よく通り抜けるこの建物は、中庭があるためとても静かです。ヴェロニクさんとローランさんが、ここから離れたくない気持ちもよくわかります。
そんな魅力的なアパートのオーナーになったことで、住まいとの付き合い方に変化はあったのでしょうか? ヴェロニクさんはこう話します。
「ローランも私も住まいを整えることがもともと好きで、ほとんどライフワークのように最適な内装を試行錯誤し続けているのですが、ついに2019年、全面的な内装工事を行いました。10万ユーロ(約1850万円(2026年5月25日時点))を費やして、電気などを現在の建築基準に合ったものに変え、省エネにも配慮した近代設計を実現しています。出来上がりにはとても満足していますよ。2020年コロナ禍の外出制限中は、家族3人で『工事をしておいて本当に良かったね』と、心から言いあっていました」
自分たちの希望を明確に。そこからひらめきが
この大成功を収めた工事を始めるにあたり、ヴェロニクさんとローランさんの希望は明確でした。それをいかに正確に建築家に伝えるか、この点に注力したといいます。図面で何度も調整を重ねるやり取りの中で、建築家が提案した「玄関側と寝室側からアクセスできるクローゼット」は、特に満足している新要素です。
「もともと寝室の壁面に収納はありましたが、それをドアの上まで覆い尽くす要領で延長し、壁面全体を収納にしています。つまりドアはふさがれて、もう使えないわけですが、玄関側の扉を開けると、もうそこは収納です。コートや靴を収納するのにとても便利ですし、友人を招いた時にも、すぐにコートを預かって掛けることができます。本当に重宝していて、これを思いついた建築家に感謝ですね。
実用性に優れた美しいクローゼット。部分的に飾りスペースを設けている。クローゼット上のバスケットは、収納のために購入した。夏掛けや延長コードなど、ごくたまにしか使わないものを整理している(撮影/Manabu Matsunaga)
寝室の窓辺にある、ヴェロニクさんのスモールオフィスコーナー(撮影/Manabu Matsunaga)
本棚の一部を飾り棚に。海で拾った木片やアートの居場所(撮影/Manabu Matsunaga)
ヴェロニクさんのスモールオフィスコーナーにある壁面の棚も、新しくできたお気に入りのひとつです。以前、ここは長女の寝室で、この棚は両開きの扉がついた壁面収納クローゼットでした。現在は、実用と美を兼ね備えたディスプレイのコーナーになっています。
「仕事中にちょっとわきを見て、気に入ったオブジェに癒やされるのはいいものですね。そのことを、このコーナーが出来てから、特に実感するようになったと感じます。しかもこの棚は、書斎とリビングのドアを開けるとまっすぐ視線が突きあたる場所にあって、空間に奥行きをもたらす効果もあるのです。
むき出しの給湯器がおしゃれ?
「キッチンもはるかに使いやすくなりました。工事前は動線が悪く、ちょっと暗いなとも思っていましたが、今は明るく、作業のしやすい空間になっています。私にとっては、この家の中で一番気に入っているスペースかもしれません」と、ヴェロニクさんは続けます。
壁面を覆う収納は、フラットでスタイリッシュ。白で統一しているため、窓から入る光を反射し、空間が明るくなります。
壁面全体を収納に。天井までみっちりと詰め込まず、抜け感を確保するのが圧迫感を避けるポイント(撮影/Manabu Matsunaga)
むき出しの給湯器、ガスメーター、配管が、インダストリアルなムード(撮影/Manabu Matsunaga)
日本を旅した思い出の品を、陳列しつつ収納(撮影/Manabu Matsunaga)
面白いのは、給湯器とガスメーター、配管がむき出しになっているところ。
「8平米のコンパクトなキッチンを、給湯器や配管を隠したいがために壁面収納で覆って、その結果空間が圧迫されることを避けました。給湯器や配管は、インダストリアルで素敵だと思います。ガスメーターは去年新しいものに変わって、鮮やかな黄色になりました。いいアクセントになっていますよね。小さな棚を取り付けて、少しだけ飾る収納を加えています。こういったバランスに、ローランも私もとても注意しています」
セメントのタイルと、ダークブラウンに塗った天井も、気に入っているディテール。
機能的に生まれ変わったキッチンは、ヴェロニクさんお気に入りの空間に(撮影/Manabu Matsunaga)
「天井を塗るのは、空間に色を添えるいいアイデアだったと思います。バスルームの天井はベビーピンクなのですよ。冷たい印象になりがちなバスルームには、あえてあたたかい色を加えました。壁紙?壁紙で空間に色を加えたいとは思いません。なぜなら、わが家にはアートが多く、それらを置いた時に、背景になる壁はできるだけニュートラルな方がいいからです。友人宅には、壁紙の上にアートを飾っているところもあって、見ると素敵だなと思います。でも、私たち夫婦らしくはない。今計画しているのは、コレクションしている絵画や写真、オブジェなどを、アーティストのソフィ・カルのテイストで壁全体を埋め尽くすように飾ることです。パソコン上でシミュレーションして、ベストポジションを見つけてから、実行したいと思っています。寝室の壁につくる予定ですよ!」
芸術家だったローランさんのお父さんから、ご自身の作品やコレクション品をたくさん譲り受けたおふたり。それに加えて、ヴェロニクさんもローランさんも、大のアート好きです。
ベストバランスと、長続きする夫婦の秘訣?!
ヴェロニクさんのお話を伺っていると、アートをたくさん飾りながら、空間全体的にはすっきりと整ったインテリアに整えるコツを、なんとか伝授してもらいたくなります。デコレーションの極意は?!
アーティスト作品を集めたインスタレーションコーナー(撮影/Manabu Matsunaga)
「デコレーション、と言われると、あまりピンとこないのですが……私たちはインテリアを飾りだとは思っていません。それよりも、私たちの生活に必要なこれらのものを、どう配置すれば最善か、常に考えています。ですから、今はこういう配置でも、ちょくちょく変化します。特にオブジェは、ホコリを払うたびに配置が変わるくらい頻繁に動くのですよ。それに、私はこれがベストだと思っても、ローランは賛成しない場合もありますし、その反対も然りです。時間をかけて議論して、ベストを見つける作業の繰り返し。長続きする夫婦の秘訣と同じですね(笑)」
黄色のソファセットは、工事前から使用している愛用品(撮影/Manabu Matsunaga)
時間をかけてようやく入手したテーブル。友人を招くのが好きなおふたりにとって、12人用に延長できる大テーブルはぜひ必要だった(撮影/Manabu Matsunaga)
例えば、シンプルな白いダイニングテーブルは、12人を招待できるサイズに延長できるものを、何年もかけてふたりで探した成果物。以前持っていたテーブルも同じように白いシンプルデザインで、十分気に入っていましたが、延長機能はありませんでした。でもお友達を招待するのが好きなおふたりにとって、大きなテーブルは絶対必要なアイテム。
この時間をかけた試行錯誤を、夫婦一緒に行えば、夫婦間のコミュニケーション力も鍛えられるというもの! 快適なインテリアづくりは、自分や相手を知る作業であり、時に主張し、時に譲歩し。いい夫婦関係を築くことができそうです。
「住まいにものが氾濫しないためには、ある程度の規律が必要です。幸い、ローランは私より遥かに美意識が高く、私が帰宅するとコートや鞄など、私が置いたそばから片付けるくらいきちんとしています(笑)。理想の住環境をつくることは簡単ではありませんが、私たちはふたりでそのゲームを楽しんでいます」
収納グッズはMUJIを大いに活用している(撮影/Manabu Matsunaga)
ローランさんのお父さんから譲り受けたクロッキー(撮影/Manabu Matsunaga)
これからもずっと、愛するこの環境で
では、寝室の壁面を「ソフィ・カル」スタイルの飾り壁にする計画を実現した後は、どんなプランがありますか?
「そうですね、書斎の本棚をオーダーする計画がまず1つ。それから、ローランの意見で手入れをせず残した19世紀の床を、私は研磨をかけてきれいにしたいです。傷やシミは時代の記憶で、この物件の味わいだと思っていますが、床を研磨すれば空間の印象がよりすっきりとすることでしょう。引越しは考えていません。私たちはパリの暮らしが好きですし、これから年齢を重ねれば重ねるほど、必要なものが身近にあって、公共の交通機関でどこでもアクセスできる環境が、安心になるはずです。第一、地方に引越した友人は、みんなパリに戻ってきました。アリーグル市場もあるし、娘もここに住んでいるし、レストランやシアター、美術館がたくさんある、そんな豊かなパリの生活をこれからもずっと続けてゆきたいと思います」
ローランさんの書斎兼趣味の空間(撮影/Manabu Matsunaga)
右のメガネの女性は、もしやヴェロニクさん?(撮影/Manabu Matsunaga)
新しい本棚をつくることも計画中。シンプルな明るいオーク材で、本を収納しつつ飾りのスペースを設けるなど、ヴェロニクさんとローランさんのイメージは明確(撮影/Manabu Matsunaga)
本棚に飾りのコーナーが数箇所あるだけで、本の圧迫感が緩和される(撮影/Manabu Matsunaga)
ちょっとした遊び心がすべて!(撮影/Manabu Matsunaga)
本棚の側面を隠しつつ、古い新聞等を収納(撮影/Manabu Matsunaga)
「予算のある人は楽でいいな」と思いながら始めたインタビューが、実は予算ではなく、工夫の連続だったと知った今回。お金を出せばなんでも手に入るとはいえ、そうではないからこそ、こんなに魅力的な住まいが生まれるのだと教えていただいた気がします。「予算が全てではない」と、勇気づけられる実例!
ヴェロニクさん、ローランさん、ありがとうございました!
ヴェロニクさん。丁寧なご回答を、ありがとうございました!(撮影/Manabu Matsunaga)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
