今日は、私たちが病院や薬局でもらう「薬(錠剤)」についての話題です。
錠剤って、白くて小さな文字や数字がちょこっと削ってあるイメージがありますよね・・・

そんな錠剤の常識が、今大きく変わろうとしています。


印刷大手のTOPPAN株式会社が、錠剤に印刷するインキの色を100色以上に増やすことに成功したんです!

錠剤フルカラー印刷のカギは、あの色!

ほぼフルカラーが可能になったわけですが・・・なぜ今までフルカラーが難しかったのか?
TOPPAN株式会社 生活・産業BU/技術本部 錠剤インキチーム課長の星野裕一さんに伺いました。

TOPPAN株式会社 生活・産業BU/技術本部 錠剤インキチーム課長の星野裕一さん

今までは、竹炭から作った黒や、植物由来の緑というのが中心で、どうしても使える色に限りがありました。一般的なカラープリンターや、フィルム・紙に印刷する際には、色の三原色である、青に近い「シアン」と赤に近い「マゼンタ」そして黄色「イエロー」を使って印刷をするんですが、そのうちマゼンタが特に光に弱くて、色が消えやすいという性質がありました。食品とは違いまして、医薬品は3年以上の長期保管をしても色が消えないことが求められますので、薬として絶対に安全で、かつ光に耐えることができる原料を選ぶことが一番苦労したところです。
文字自体の色がカラフルになることによって、ご高齢の方ですとか、視力が低い方でもお薬をパッと見分けやすくなるということになりますので、飲み間違いのリスクが少なくなると考えています。

"これ何の薬?"をなくす、フルカラー錠剤用インキの画像はこちら >>

ほんとにカラフルですよね!
マゼンタを開発するのには、約2年かかったそうです。

フルカラー印刷ができるようになったことで「ユニバーサルデザイン」(年齢や障害の有無に関わらず誰もが使いやすいデザイン)への対応が可能になりました。例えば同じ青色でも見えやすい青色を選んだり、「薬の名前は黒、配合量の数字は赤」という2色使いをしたり、市販薬をカラフルにしてお子さんに選ばれやすくするなど、様々なパターンが期待できます!

薬の視認性アップに期待の声

では、実際に普段から錠剤を取り扱う現場の皆さんはどう感じているのか。
薬剤師で、白岡中央総合病院・医療安全管理課の渡邉幸子さんに、どんな場面で役に立ちそうなのか、伺いました。

上尾中央医科グループ 白岡中央総合病院 医療安全管理課 課長(薬剤師/専従医療安全管理者)渡邉幸子さん

「ワンドーズパッケージ」といって、1回分ずつ1つの透明の袋に分包をするんです。介護老人保健施設や老人ホーム、そういうところはほとんどパッケージ化して、患者さんに介護士さんが1回ずつ渡しているので・・・その際に、錠剤が中止になったとき(服用をストップするとき)に、どれを抜くとか我々薬剤師はパッと見ただけで、その錠剤がこれだって分かるんですけど、介護士さんは分からないので、「このピンクの錠剤を抜きましょう」って言ったら、(袋に)たくさん入っている中からそれだけを抜いたり・・・割と分かりやすいのかな。
そういう意味では、薬剤師が必ずしも最初から最後まで関われるとは当然限らないし、むしろ薬剤師が介入できない場面というのがすごく多いので、そうなると識別しやすいというのは、メリットかなと思いますね。

専門知識がない人でも、色で認識、覚えることができそうです!

最近は医療現場で「医師のタスクシフト」が行われていて、薬剤師の業務量が増え続けています。

その中で業務の補助を行う、非薬剤師の方を動員する薬局も・・・そんな非薬剤師の方、新人の方にとっても認識しやすくなります。

1種類ずつシートでもらう場合は外側の銀色のパッケージ(PTPシート)に色を付けるなど工夫ができますが、1回分をまとめる「ワンドーズパッケージ(一包化)」だと、透明な袋の中の裸の錠剤をひとつずつ確認する必要があります。

"これ何の薬?"をなくす、フルカラー錠剤用インキ
PTPシートに入った錠剤薬の一包化(ワンドーズパッケージ)

さらに、市場に出回っている錠剤の約4分の3は、錠剤に削って文字を入れる「刻印」のため、かなり見づらいんです・・・

"これ何の薬?"をなくす、フルカラー錠剤用インキ
"これ何の薬?"をなくす、フルカラー錠剤用インキ

刻印の錠剤

調剤時のミスを減らすために、現場では2人以上でダブルチェックをしたり、棚に目印をつけたり・・・様々な工夫が行われていますが、人の手では限界があるということで、専用機でPTPシートのバーコードを読み取る施策も行っています。

"これ何の薬?"をなくす、フルカラー錠剤用インキ
調剤が正しいかを読み取る専用機

これまで行ってきた施策に加えてカラー印刷も可能になったことで、確認作業を行う薬剤師の方の負担軽減、患者さんの視認性アップで誤飲リスクもグッと減らすことができるのではないでしょうか。

錠剤の常識を新たなものにしていきそうなこのカラー印刷、今後の取り組みについて、改めてTOPPAN株式会社・錠剤インキチームの星野さんに伺いました。

TOPPAN株式会社 生活・産業BU/技術本部 錠剤インキチーム課長の星野裕一さん

今はまだないですけれども、 この病気には赤、この病気には青という決まりごとができれば、飲み間違いがより減っていく。この技術も応用範囲が一気に広がるのではないかなというふうには期待しております。
あとは、日本国内の需要に向けて開発をしているんですけれども・・・海外では(錠剤)印刷というのはあまりされていなくて、錠剤自体に色をつけて、ものすごいカラフルな錠剤なんです。ただ、それが文字になればそっちの方が見分けがしやすいと思いますし、世界各国の安全技術をクリアできるような製品も今開発をしていますので、海外の医療現場に対しても私たちの錠剤インキを広げていって、世界中の患者さんですとか薬剤師さんの安全安心に貢献できればいいなというふうに考えております。

日本の技術が世界の医療安全を支えることになるかもしれません!

さらに、このカラー印刷を上手く活用するためにも、「病気・症状ごとに色を決める」というひとつルールのようなものを設ければ、さらに分かりやすくなるのではとお話されていました。

"これ何の薬?"をなくす、フルカラー錠剤用インキ

今後は、このカラフルな錠剤を薬局で受け取る日も近いかもしれません。
その時は、今まで以上に自分が飲む薬がどんな薬なのか、どんなデザインなのか、意識してみてくださいね。


(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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