この夏も、夕立や雷の予報を耳にする日が続いています。とくに部活動が屋外で行われる学校では、雷が近づいた時の判断が難しいという声があるようです。

感覚頼みだった雷への対応

先生たちは、何に困っているのか。埼玉県の新座総合技術高校でサッカー部の顧問を務める、河津祐介さんに聞きました。

新座総合技術高校 河津祐介さん

この埼玉県の西部地区ってすごく雷の多い地区って言われていて、雲行きとかかなり気にしながらやっています。きっかけがあって、2016年に高校球児に雷落ちた事件ってご存じですか。生徒に雷が当たっちゃってっていう事故ですね。なんとなく感覚頼みの方が多いかなっていう印象があって、なんとなく空見て、「黒い雲来たね」とか、「やばい、なっちゃった」みたいなところは正直ありました、自分自身も。

昔だったらもう大丈夫だやっちゃえぐらいのことが多かったと思うんですけど、ちょっとずつ変わってきてるのかなって印象があります。雷が一番怖いですね。

2016年に、埼玉県川越市の高校で、野球部の練習試合中だった生徒が落雷を受けた事故が起きています。グラウンドは遮るものがなく、雷が近づいたら屋内に入るのが鉄則。河津さんも、雷が来そうな気配があれば、練習の途中でも生徒を屋内に避難させているそうです。

これまでは、ヤフー天気などの天気予報アプリと、空模様を見た目視での判断が頼りでした。ただ、それだけで雷の接近を確実につかむのは、簡単ではありませんでした。

そうした中で、最近、この学校がある装置を取り入れました。

40キロ先の雷雲を、静電気で見つける

開発したNXTech株式会社の、小林誠さんに聞きました。

NXTech株式会社 小林誠さん

「みまわり伝書鳩」という製品名になっています。現場にセンサーを置いて、半径40キロ圏内の雷雲を検知して、アラートを発報するような仕組みになってますが、まず空気中にある雷雲の中にある「静電気」を検知するセンサーが入っています。雷自体は静電気で発生しますので、その静電気量で、「距離」と「危険度」をレベル4段階で表示しているというのがまず一つです。40キロ、20キロ、10キロという形で近づいてくるごとにアラートが発報されます。

テレビを見ていて、学校の部活中に起きた痛ましい落雷事故のニュースを見て、雷検知の機能を組み込んだら未然に防げたんじゃないかと。そういったところからですねまず開発をスタートして、来月にスポーツ強豪校2校が導入決まっておりまして、そういったところの今導入検討が進んでいると。

グラウンドの雷、伝書鳩が見張る 学校とトンネル工事、意外な共...の画像はこちら >>
<他校に設置されている「みまわり伝書鳩」>

「みまわり伝書鳩」は、屋外に置く気象センサーと、電光掲示板がセットになった装置です。雷雲の中にたまった静電気が、放電するときに発する電磁波を、40キロ先からキャッチします。たとえば40キロ先で雷雲を検知すると、まず「注意」の表示が出ます。そこから20キロ、10キロと近づくにつれて、掲示板は「警戒」、「危険」と切り替わっていきます。

さらにこの装置、気象庁の予報も組み合わせています。

気象庁は「雷ナウキャスト」という、雷の危険度を地図で示すサービスを出しています。今どこで雷が起きているかをレーダーで観測して、1時間先までの動きを予測するもの。つまり、予報で「これから来るか」を先読みしつつ、センサーで「今まさに近づいた」を捉える。ふたつを重ねて、危険度を二重に判断できるようにしているということでした。

ダイナマイトの天敵は、雷

先ほどの学校でもこの掲示板を導入してから、より確実に、安全な状態を確保できるようになったそうですが、学校とはまったく違う場所でも、この装置が注目され始めています。再び、小林さんに聞きました。

NXテック株式会社 小林誠さん

今回、工事現場にお話を持って行ったら、すごくニーズがあるというのが分かりました。雷が放電するときに発生する「電磁波」。これって電磁波なので、AMラジオとかでガリガリ言う音、ありますよね。チャンネルが合ってないときに。あのときに干渉するような電磁波が雷雲にも発生してるんですね。その電磁波というのはかなり遠くまで飛びますので、ある一定のバンドに合わせるとそこにノイズが入るっていうのがわかってるので。

ノイズがガリガリ入ったら「雷雲が近くに来たな」っていうのを判断して中止する。そういったことをやられてる方も今でもいるっていう話は聞いてます。

とくにトンネル工事、ダイナマイトを使うので、落雷で誤爆する可能性があるので、現場の所長様が雷についてはかなり実際に空模様を見たりですね、予報を見たりしています。それを事前に「雷検知センサー」で、発破作業を中止することが、できるようになります。

グラウンドの雷、伝書鳩が見張る 学校とトンネル工事、意外な共通点
<大成建設の現場の様子>

トンネル工事の現場はとくにナーバス。雷の電気でダイナマイトに間違って火が入って誤爆する、という危険があるので、「AMラジオのノイズを確認していた」というのは昔ながらの知恵(FMはノイズに強いので、この技は使えません)。

もちろん監督が、小型の警報機をポケットに入れておいて、接近を確認することもあるそうですが、現場のみんなに周知できるのが、この掲示板の特徴です。

もともと気圧や、雨量、騒音などを測るために、この装置は10年前から工事現場に導入されていましたが、今年新たに加わった「雷検知」の機能が、めぐりめぐって古巣の悩みにも応えることになりました。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)

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