子どもの教育費は、進路次第で大きく変動します。総額を考えて不安になる必要はありません。

大切なのは、いつ、いくら現金が必要で、それを毎月の収入で賄うことができるのか、といったキャッシュフロー管理です。子ども6人のママFPが実践している、教育費逆算ロードマップについてお話しします。


塾だけで年間100万円?わが子の学費「いつまでに」「いくら」...の画像はこちら >>

子ども6人のママFPが実践する「逆算ロードマップ」

 幼稚園から大学卒業までにかかる教育費は、進路によって大きく異なります。目安としては全て国公立なら約1,000万円、全て私立なら約2,500万円と言われます。


 ですが、我が家の高校2年生から小学校1年生まで6人の子どもを育てる中で私が実感したのは、学費は進路やそのときの制度によって本当にばらばらだということ。


 教育費は平均値や総額で考えるよりも、「我が家ではいつ、いくらかかるのか」「どこまで親が出すのか」「どれくらい準備しておくべきか」を考えることが大切です。今回は、我が家が実践している教育費の逆算ロードマップについてお話しします。


教育費の落とし穴:総額ではなくキャッシュフローが大事

 教育費は1,000万円、2,500万円かかると聞くと、「そんな金額準備できない!」と思うかもしれません。ですが、総額が一度にかかるわけではありませんし、全額をまるまるためる必要もありません。


 大事なのはいつ、いくら現金が必要で、それを毎月の収入で賄うことができるのか、または貯蓄を切り崩す必要があるのか、キャッシュフローを考えることです。


 橋本家では教育費を「フロー(月々の収入)」と「ストック(過去の貯蓄)」に分けて準備しています。


・「フロー」で賄うもの→毎月の子ども費、学費


 幼稚園・小学校・中学校・高校までの毎月の授業料や塾代、給食費、習い事の月謝など、日常生活の延長線上にある基本の学費は、毎月の家計の収入(フロー)の中から「生活費の一部」として出し切ることを基本にします。


・「ストック」から出すもの→まとまって支払う学費や入学準備費用


 幼稚園・小学校・中学校・高校の入学準備費用(制服代やランドセル、入学金など)や、最も大きな山場となる大学の学費は、日々の収入だけで賄うのは難しいでしょう。これらの一時的な大金は、あらかじめ時間をかけてためておいた貯蓄(ストック)から補填します。


 月々の学費はフローで賄い、大きな学費はストックで賄うという切り分けができていれば、いざ進学時期がやってきても、家計のキャッシュフローを一定に保ちながら安心して乗り切ることができます。子どもが小さく学費があまりかからないうちがため時です。将来の大きな学費のために、こつこつストックをつくっておきましょう。


進学時の支払い金額のリアル

 教育費の中でも特に「思っていたよりかかった」と感じるのが、進学時の初期費用です。学校の種別ごとに、我が家の実数値も紹介しながら解説します。


【中学受験の場合】


 中学受験をする場合、小学校のうちから塾代がかかります。小学3年生の2月(新4年生)から通い始めるのが一般的でしたが、年々早くなってきている印象があります。


 月謝は学年が上がるにつれて上がっていき、小6になると夏期・冬期・正月特訓などの季節講習や直前講習、志望校別講習などが加わるため、費用は一気に膨らみます。塾にもよりますが、年間100万円くらいかかるイメージです。


 また、受験時には、学校によって異なりますが1校当たり受験料が3万円程度かかります。滑り止めを含めると受験料だけで十数万円になることもあります。合格後の入学金は30万円程度が相場で、進学しない学校の入学金を押さえとして払うケースもあり、ここでも想定外の出費が発生しがちです。また支払い期限が合格発表の当日から数日以内と短いため現金の準備が必要です。


 入学後は制服や体操服代などが10万円程度、無償の教科書以外の教科書や副教材費が5万円程度、さらに任意の寄付金の案内が1口10万円といった感じで支払いが続きます。何校受けるのか、どこまで払うのかによりますが、2月上旬の受験から入学手続き時までに100万円程度準備しておくとよいでしょう。


【公立高校の場合】


 公立なら安いと思いがちですが、入学時の初期費用は意外とかかります。我が家の子どもが今年入学した公立高校では、以下の出費になりました。


・初期費用の合計:約14万2,016円


 受験料2,200円、入学金5,650円、制服6万3,910円、体操服2万8,700円、教科書2万6,556円、PC1万5,000円(多子割引適用後)がかかります。


 さらに、授業料以外の学校徴収金が月約1万円の口座引き落としとして続きます。なお、教科書代は学校によって差があり、別の子の高校では約4万9,000円でした。教科書代は中学のときは基本的には無償ですが、高校ではまるまるかかります。公立は安いと思っていると意外とかかることに驚くでしょう。公立でも、入学準備費用として20万円程度準備しておきましょう。


【私立高校・内部進学の場合】


 特に注意が必要なのが私立高校に進学した場合の費用です。高校無償化で私立を選択する家庭も増えました。

私立中学から内部進学で高校に上がる場合も、入学金や諸費用が発生することがあります。


 外部受験の場合は以下の費用が目安となります。


・入学準備費用の目安:50~80万円


 受験料1校3万円、入学金30万円程度、公立同様制服や体操服などに10万円程度、教科書代数万円、PC代が別途かかります。(PCは公立高校のものと比べて高額なことがあります)


 また、無償化によって授業料は無償(学校により差額負担の場合あり)となりますが、施設費などその他の名目で月数万円かかることも珍しくありません。我が子の通っていた学校では授業料とは別に7万円くらいの支払いが必要でした。無償化という言葉だけをうのみにすると大変なことになるので授業料以外の費用をしっかり確認しておきましょう。


【大学受験の場合】


 大学受験でまず発生するのが共通テストの受験料で、2教科以下受験で1万2,000円、3教科以上の受験で1万8,000円かかります。


 その後、国公立大学の2次試験受験料は1万7,000円、私立大学の受験料は3万~3万5,000円が相場です。同じ大学でも学部ごとに受験料がかかるため、複数学部・複数校を受けると受験料だけで積み上がっていきます。


 交通費・宿泊費も含めた受験費用の平均は、国公立志望で約27万円、私立文系で約31万円、私立理系で約32万円となっています。


 すべり止めの学校に入学金を納付した場合は、1校当たり25万円程度かかります。なお、国立大学の入学金は28万2,000円です。


 入学金の二重払い問題については、2025年6月に文部科学省が全国の私立大学に対して負担軽減を検討するよう通知を出し、一部の大学はすでに返還制度の導入を発表しています。


 しかし、全大学への義務化ではなく、法的にも最高裁が「入学金は入学手続きの費用であり、辞退しても返還する必要はない」と判断していることから、制度として定着するかはこれからの動向次第です。そのため、受験前に志望校・併願校それぞれの方針を確認しておくことが重要です。


 さらに入学後には、教材費やPC購入費も重なります。教材費・機材費は20~25万円程度が目安で、初年度は4年間のうち最も出費が集中する時期です。


 入学初年度の費用(学費のみ)は国立大学で約80万~100万円私立文系で約120万~160万円が目安となっています。自宅外通学の場合はさらに敷金・礼金、引っ越し費用、生活用品の購入費が上乗せされ、受験から入学までの総額は平均約231万円にのぼります。


 推薦入試の場合は高校3年生の9月ごろから、一般入試では1月ごろからお金がかかり始めます。それまでに準備しておきましょう。


多子世帯の大学無償化:使えるかどうかは「同時に扶養しているか」がカギ

 2025年度から、子どもを3人以上扶養している世帯を対象に、所得制限なく大学・短期大学・高等専門学校(4・5年)・専門学校の授業料と入学金が一定額まで無償化される制度がスタートしました。


支援上限額は以下のようになります。


  • 国公立大学:入学金28万円・年間授業料54万円まで
  • 私立大学:入学金26万円・年間授業料70万円まで

 我が家のように子どもが多い家庭にとっては、かなり大きな恩恵になります。ただし、子どもが3人いれば必ず使えるというわけではありません。


 この制度の最大のポイントは、「3人以上の子どもを同時に扶養していること」が条件になるという点です。


 例えば子どもが3人いても、上の子が就職などで扶養から外れて扶養人数が2人になった時点で、在学中の下の子たちも支援対象外になってしまいます。


 3人兄弟で上の子しか大学に行かないケースでは、在学中に下の2人が順番に就職・自立していくと、在学途中で支援が打ち切られる可能性があります。子どもが3人いるからではなく、「大学在学中に3人同時に扶養しているか」が判定基準です。


 我が家は6人いるので、長男・長女が大学を卒業・就職しても下の子たちが残っているため、比較的長くこの制度の恩恵を受けられる見込みです。


 一方で3人きょうだいで年齢が近い場合、上の子が卒業する前に下の子の大学生活が始まれば制度が使えますが、年齢差が大きいと上の子が就職後に下の子が進学するという状況になり、対象外になるケースも出てきます。また、子どものアルバイト収入が一定額を超えて扶養から外れた場合もカウントされなくなるため、注意が必要です。


制度はあてにしすぎない。「自助努力」を前提に備えよう

 教育費準備を考えるうえで、もう一つ実感しているのは「制度は変わり得る」ということです。長男が生まれた直後、民主党政権下で年少扶養控除が廃止され、月額2万6000円の子ども手当が創設されるという話でした。


 しかし、ふたを開けてみると、子ども手当は半額の1万3000円、年少扶養控除だけはしっかり廃止され、その後の児童手当も所得制限が設けられたために、結局手当が増えるどころか増税される形になってしまいました。


 児童手当や高校無償化といった子育て世帯向けの支援制度は年々見直されており、所得制限の有無や対象範囲が変わることも珍しくありません。

今ある制度がそのまま続く前提で資金計画を立ててしまうと、制度が縮小・変更された際に計画全体が崩れてしまいます。


 だからこそ、公的支援はあくまで上乗せとして捉え、教育費の土台は自助努力で確保しておくという姿勢を大切にしています。


我が家の備え方:学費は「いつ使うか」で置き場所を決める

 資金の置き場所は、いつまでに必要かという時間軸で使い分けるのが基本です。我が家では、子どもごとに逆算して資金の置き場所を決めています。特に学費は必要な時期がほぼ決まっているので、必要最低限の金額で、解約時期を比較的調整しやすい低解約返戻金型の終身保険に子どもの人数分加入して、死亡保障を確保しながら貯蓄をしています。


 また、利回りを上げるためにNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を活用して投資信託を購入しています。子どもが2人以上いる場合は年齢差によって入学時期が重なる年があるかもしれません。我が家も来年は3人重なるため一度に150万円ほどかかる予定です。


 支払い月についてもしっかり確認しておかないと学資保険で準備をしている場合は支払いタイミングと満期の時期がずれている場合があるので注意しましょう。


まとめ

 教育費は総額の大きさに怯える必要はありません。月々の学費は月々の収入(フロー)で賄い、進学時の初期費用は事前の貯蓄(ストック)で賄う仕組みさえ作れてしまえば、家計を大きく乱すことなく進学時期を乗り切ることができます。


 子育て支援制度は手厚くなっていますが、時代に合わせて変わるもの。制度はあくまで「ラッキーな上乗せ」と捉え、教育費の土台は自助努力でしっかり確保しておきましょう。まずは我が家の「逆算ロードマップ」を作ることから始めてみませんか。


(橋本 絵美)

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