2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(40歳・以前は小林悠として活動)。

 20年間生活した東京をあとにして、故郷北海道で自然や犬との気ままなシンプルライフを楽しむアンヌさん。
本連載では、40代の今だから感じる日々のあれこれを綴ります。
 第91回となる今回は、あるお気に入りのTシャツをきっかけとしたエピソードを紹介します(以下、アンヌさんの寄稿です)。

『にこにこ、ぷん』のキャラクター・ぴっころのTシャツをゲット!

40歳、通販で即買いした「懐かしNHKキャラTシャツ」。六花...の画像はこちら >>
 私、私服だけは胸を張って言えます。「派手」です。

 ……といっても、いわゆるブランドで着飾るタイプではなく、どちらかというと、アメリカの小学生みたいな服装。真っピンクや黄緑のスウェット、古着屋さんで見つけた犬のイラスト入りTシャツ、特にゴールデンレトリーバーが描かれていたら迷わずレジへ直行。

 自分の「好き」がそのまま歩いているような格好をしています。

 そんな私のクローゼットに、この夏ひときわ特別な一枚が仲間入り。それが、『にこにこ、ぷん』のぴっころTシャツです。

 この名前を聞いて「懐かしい!」と思う方と、「何それ?」という方では、たぶん世代がきれいに分かれるでしょう。

 私が幼い頃の教育テレビ(現NHK Eテレ)といえば『にこにこ、ぷん』でした。じゃじゃ丸、ぴっころ、ぽろり。この3人を見て育った世代です。
今のEテレには今の子どもたちのスターがいるのでしょうが、私にとってはやっぱりこの3人が原点。

 特に忘れられないのが、富良野を舞台にした特番でした。じゃじゃ丸たちが北海道に来て、山小屋で夏や冬を過ごすような内容だったと記憶しています。当時の私は、それが本当に大好きで。

 私の中で『にこにこ、ぷん』は、単なる子ども番組を越えた存在。幼かった頃の安心感や、家族との時間の象徴なのかも。

ぴっころTシャツを着て友人とランチへ

 私は子どもの頃、本当にテレビっ子でした。

 ひらがなもカタカナも、親が教えるより先にテレビから覚えたくらい。『みんなのうた』の歌詞字幕を見て、「これで“パパ”って読むんだよ」と親に教えて驚かれたこともあったな。

 テレビと子どもの関係性についてはさまざまな意見があるでしょうが、私はテレビは素晴らしい教材だと思っています。

 そんな思い出の『にこにこ、ぷん』が、令和になって復活。平成レトロブームのおかげで、NHKキャラクターのグッズが発売されていることをInstagramで知りました。

 イラストではなく、着ぐるみそのままの実写写真がドーンとデザインされたぴっころTシャツはひときわ目をひきます。


「こ、これは買うしかないっ!」

 普段は通販で服を買わない私ですが、この一枚だけは例外。数日後、届いたTシャツを着て、小学校時代からの友人とルンルンでランチへ。案の定、友人は私を見るなり、

「えっ! 懐かしい! 何そのTシャツ!」

 もう大盛り上がりなわけです。この時点で、Tシャツ代の元は十分取れた気がしていたのですが。ところが、そのあともっと印象的なことが起きたのです。

六花亭のお茶屋さんでひと休みをしていると……

40歳、通販で即買いした「懐かしNHKキャラTシャツ」。六花亭のレジ前が一瞬で女子校のノリになったワケ
北海道神宮で茅の輪くぐり
 その日は6月30日。北海道神宮へ夏越の大祓に行った日でした。茅の輪をくぐって半年分の穢れを落とし、帰りに鳥居横の六花亭のお茶屋さんへ立ち寄った私たち。

 名物のお餅を焼いていた女性店員さんが、私の胸元をじっと見つめているではありませんか。六花亭といえばご存じ北海道の老舗お菓子店。しかも北海道神宮の敷地内のとんでもなく忙しい店舗。

 その店員さんがまさか「あの……懐かしいTシャツですね」と話しかけてくるだなんて誰が想像できたでしょう!

 普通に「ありがとうございます」と返せばよいものの、想定外に話しかけられ動揺した私は思わず、「あっそうですよね!! 世代なのでうれしくなって買っちゃいました!」と長々と返答。すると「えっ、本当ですか! 私も世代なんです!」と嬉しそうに声を上げる店員さん。


 さらに隣で箱詰めをしていた別の店員さんまで「私は世代じゃない……」となぜか会話に参加。気づけばレジ前で3人で『にこにこ、ぷん』談義。ここは女子校か?!

 北海道の人って比較的シャイで、知らない人同士が気軽に言葉をかわす文化は正直そこまでありません。なのに! このTシャツが初対面にもかかわらず楽し気なムードを演出してくれたのです。

 つくづく感じましたが、子どもの頃、一番最初に好きだったものって、人生の奥底にずっと残っているんですよね。一瞬で「うわー見てた見てた!」と時を子ども時代に戻してしまう不思議な力があります。

Tシャツが会話の扉を開いてくれる

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アンヌさん
 実は、この「面白Tシャツ文化」は父譲りでもあります。

 父はアイルランド系アメリカ人ですが、とにかくメッセージ性の強いTシャツが大好き。

 ジョークTシャツも着ますし、アメリカ大統領選挙の時期には応援する候補者の名前入りTシャツをアメリカから取り寄せ、何故か札幌市街を普通に着て歩いていました。

 アメリカでは、服は自己を表現するツールでもあり、コミュニケーションのきっかけでもあります。

「その靴かわいいね。」
「そのTシャツ最高!」

 知らない人同士でも、そんな一言から会話が始まるのは日常茶飯事。

 私もかつてアメリカで登りエスカレーターに乗っていた時に、下りエスカレーターに乗っていたご婦人にすれ違いざまに「NICE CAP!!! WHERE DID YOU GET?」と声をかけられあわてて大声で返事を返したことがあったっけ。


 でも日本では、知らない人に話しかける文化はあんまりないかも。むしろ不審者扱いされたらどうしようなんて思っちゃいますか?

 だからこそ、一枚のTシャツが会話の扉を開いてくれる瞬間って、とても貴重。

 ぴっころTシャツ、今年ありとあらゆるところに着ていこうと決意している私。そこのシャイなあなた、なにかを一歩踏み出したいと思っているなら、ぴっころTシャツ、ありですよ!

<文/アンヌ遙香>

【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram: @aromatherapyanne
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