ドル円は中東情勢の緊迫や原油価格の上昇、米FRBのタカ派姿勢でドル高基調ですが、相場は動意に欠ける展開。来週の日米金融会合で原油高やCPI低下をどう評価するかが注目されますが、大きな変化がなければ、8月下旬のジャクソンホール会議まで膠着した「夏休み相場」へ突入しそうです。

高市政権の支持率低下という新たな政治リスクも注目です。


163円をじわり突破したドル円相場。さらなる円安を引き起こす...の画像はこちら >>

ドル高でも相場は動かず。来週の日米金融会合までは様子見?

 米国とイランの攻撃の応酬が続いており、原油も上昇傾向であるため、先週のドル円は162円台で推移しました。先週14日、ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は就任後初の議会証言で、インフレ抑制と物価安定への強い姿勢を示したこともドル高を後押ししているようです。


 ただ、ドル高になっていても相場の値動きは大きくなく、じりじりとドル高になっている地合いです。


 中東情勢は、20日、イラン高官から「仲介国が米国との緊張を緩和する提案をイランに伝達」と伝えられましたが、攻撃が続いている中では提案を受け入れる用意があるかどうかは不透明なため、材料としては決め手に欠けています。


 一方、イエメンの反政府勢力フーシ派がサウジアラビアの船舶に対して海上封鎖を行うと宣言したことから原油供給懸念が強まり、163円台に乗せました。


 このような情勢の中、来週は日米金融会合が開催されます。7月28~29日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が、30~31日には日本銀行金融政策決定会合が開催されます。


 現在のところ、FRBも日銀も政策変更なしとの見方が大勢ですが、以下の要因を踏まえてタカ派姿勢に変化が見られるのかどうか見極めるまでは動きづらいことが予想されます。


  • 現在の和平合意がほごになる可能性も浮上してきた米イランの戦闘激化
  • 70ドル割れまで下落した後、上昇傾向にある原油価格
  • 前月より低下し予想も下回った米6月消費者物価指数(CPI)
  •  原油価格については、イランのホルムズ海峡再封鎖に加えて、フーシ派の紅海の海上封鎖によってサウジアラビアからの原油供給が懸念され、原油が一段高になる可能性があります。


     米6月CPIの低下は、米国とイランの和平協議の進展期待による原油価格の低下が背景にありますが、7月の原油上昇を受けて金融当局者がどのような認識を示すのか注目です。

    6月米CPIによって早期利上げ観測が後退しましたが、来週のFOMCではよりタカ派になる可能性もあるため注意する必要があります。


     まずは今週22~23日に開催される欧州中央銀行(ECB)理事会に注目です。ECBは米イラン紛争以降、主要中央銀行として初めて6月に利上げを決定しました。


     今月は利上げを見送るとの見方が大勢ですが、日米よりも物価高リスクを警戒しているECBが原油価格の再上昇を受けてどのような判断や見方を示すのか注目です。日米欧の中で景気が最も低迷している欧州としては、難しい政策のかじ取りになりそうです。


    8月下旬までそのまま夏休み相場に?「高市一強」の潮目にも注目

     日本の材料にも注目です。


    「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)は、21日に閣議決定されました。金融市場が注目していた日銀の金融政策運営については、「適切な金融政策運営が行われることが非常に重要」とする一方、日銀の自主性の尊重を定めた日本銀行法第3条に脚注で触れ、「日本銀行法第3条※に基づき、金融政策の具体的な手法については日本銀行に委ねられる」と記載されました。


    ※日本銀行法第3条:日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない


     事前に予想されていた修正通りでしたので、特に市場の反応はありませんでしたが、もし、修正されていなかったら円売りに反応していた可能性がありました。ただ、「財政健全化」の文言は削除されたことから、積極財政による財政悪化懸念は払拭(ふっしょく)されず、日銀の独立性をうたっても金融緩和を志向する高市政権の姿勢は円安要因として継続しています。


     10日に片山さつき財務相が発言した年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国内金融資産へのポートフォリオ(資産配分)の見直し検討については、17日、高市早苗総理も衆院予算委員会で「GPIFをはじめとする年金基金による日本の金融資産へのさらなる投資を後押しする方策を追求することは重要だ」と言明しました。この発言を受けてドル円は少し円高に動きました。


     片山財務相の見解を高市政権として追認する形となったことから、今後、議論が本格的になれば、円高に動くことが予想されるため、GPIFのポートフォリオ見直し材料は今後も留意しておく必要があります。


     そして今後注目していきたい材料は高市総理の支持率低下です。報道各社の世論調査によると、6割を超えていた高市総理の支持率が1カ月前の調査に比べて下落し、5割を切ってきています。


     毎日新聞が18~19日に実施した全国世論調査では高市政権の支持率は、前回実施(6月20~21日)の51%から10ポイント減となり41%に下落しました。不支持率は44%となり、支持率を上回りました。テレビ朝日は支持率49.2%、時事通信は支持率49.0%と軒並み過去最低となりました。


     強気で推進してきた高市総理への求心力が低下してくる可能性があります。自民党内でも支持率低下を意識した変化が見られるかもしれません。支持率の低下が続くようであれば、政策運営にも影響を及ぼすことも予想され、積極財政による財政悪化懸念や日銀への利上げけん制による円安容認という構図にも変化が見られてくるかもしれません。


    「高市一強」の潮目が変わってくるのかどうか注目したいと思います。


     22日付の日本経済新聞によると、ゴールドマン・サックスのジョン・ウォルドロン社長兼最高執行責任者(COO)は同紙の取材に対して、円安が大幅なインフレを生み出し、円安が日本経済の成長や市場への最大のリスクと語っています。


     そして通貨安リスクは日銀の最大の関心事であるべきだとも語り、暗に利上げが後手に回れば、円安が進むことを示唆しているように聞こえます。


     約40年前の160円台は、デフレ進行下での円高局面であり、海外旅行は急増し日本経済に楽観的な見方が日本を覆っていました。現在の160円台は、インフレ下での円安局面であり、国民は物価高に苦しみ、日本経済の先行きに明るさはあまり感じられません。海外旅行は控え気味で、逆に円安で訪日外国人が急増しています。


     同じ160円台ですが、国民の心情は全く異なります。日本政府や日銀はこのことを理解しているのかどうか気になるところです。163円台に乗っても、円安けん制は示すも、その姿勢には切羽詰まった危機感がないように取れます。


     FIFAワールドカップ2026が終わり、為替相場が動き出すのかどうか注目ですが、今月の金融会合で大きな変化がなければ、8月下旬のジャクソンホール会議までそのまま夏休み相場に入っていくかもしれません。


    (ハッサク)

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