「NISAで国債が買えるようになる?」という話題が注目されています。もし実現すれば、投資に慎重な層には魅力的な選択肢となりますが、一方で現行NISAの投資枠を奪い合う「劇薬」になる懸念も…。

実現の可能性や、私たちの資産形成に与える影響を整理します。


「NISAで国債」は投資家にとって得なのか?国会で議論される...の画像はこちら >>

個人向け国債がNISAで買えるようになる?

 ここ最近、「国債とNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」という話題が注目されています。


 7月10日に国民民主党はいわゆる「国債NISA法案」を参議院に提出しました。これはNISAで国債を購入可能にし、利息を非課税で受け取れることを目指したものです。さらに、相続時にも非課税とすることを検討するとしました。


 法案は未審議の状態であり、成立の可能性は低いわけですが、政府与党の関係者も「国債をどう国民に保有していただくか」を思案しているのは事実です。


 岸田文雄元首相が所属している資産運用立国議員連盟は、5月14日に「日本成長戦略を金融面から支える『資産運用立国』のアップグレード(提言)」を出し、個人向け国債の商品性の見直しを掲げています。


 これを踏まえて、7月21日の内閣官房公表資料「成長投資を促進するための金融戦略 - 資産運用立国のアップグレード -」では下記の表現が採用されています。


 ライフプラン、ライフステージ、資産・収支状況など個々人の状況は区々であるが、「金利ある世界」へと移行する中、個々人の多様なニーズに応えるため、国債の魅力を向上させていくことも重要である。このため、既存の個人向け国債の商品性の見直しや、新たな商品の設計等を含む更なる環境整備を行う。


 こちらは「個人向け国債の見直し」であって、資料の次に続くNISAの項目でも「NISAで国債」と直接的に記載はされていません。しかし、「NISAで国債」の可能性を完全に否定しきれない、雰囲気が漂っています。


昨今の個人向け国債は物価上昇率とほぼバランスしてきた

 銀行預金金利が上昇傾向にありますが、依然として物価上昇率に追いつく状態ではありません。キャンペーン金利は魅力的になってきましたが、これは一時的なものです。


 一方、物価上昇率のほうは、少々落ち着きを見せています。さすがにここ数年は「前年比+3%」のような上昇が続いたこともあってか、2026年6月の消費者物価指数(CPI)(生鮮食品を除く)は前年比+1.6%に落ち着いています。2%を下回る状況が5カ月続いた状態です。


 ここで個人向け国債に目を向けると、こちらは日本銀行の政策に応じて上昇の傾向が見られます。7月募集の個人向け国債は、以下の金利を提示しています(それぞれ税引き前)。


固定3年 1.56% 固定5年 1.95% 変動10年 1.80%

 足元だけをみれば、「個人向け国債金利>物価上昇率」となっているわけです。


 これは個人資産が銀行預金に預けていたら実質目減りしていくことへの対策として「個人向け国債」の保有に意義があることを意味しています。


高齢者の「休眠NISA」復活には向くか

 仮に、個人向け国債がNISAで買えるようになった場合をシミュレーションしてみましょう。活用の期待が寄せられるのは、「休眠NISA」口座でしょう。


 NISA口座数が2,820万を数えているとしても、休眠状態になっている口座が相当数あるとみられています。金融庁の資料によれば、2025年に買付額がゼロだった口座が1,000万はあるとしています。


 特にリスク運用から一度手を引いた高齢者が、再度NISAでリスク資産運用を行うとは考えにくいものがあります。


 だとすれば、「NISA再稼働」のためのカンフル剤として個人向け国債のNISA解禁(あるいはNISA向け国債商品の設定)は効果が期待できそうです。


「国債消化の受け皿」とよく言われますが、高齢者の資金が定期預金に回って実質的に目減りしていくことに比べれば、個人向け国債を保有しているほうがベターではあります。


 また「新規NISA口座開設」のカンフル剤としても期待できます。現状でNISA口座未開設の人は、高いリスクを選好してないと考えられますので、「国債ならNISA、あるかも」と動くかもしれません。


現役世代が「投資信託や株→国債」にシフトするなら劇薬となる恐れも

 国債のNISA解禁が劇薬となる可能性もあります。それは現在すでに投資をしていた人たちが、今後の投資資金を国債に回して、株式投信を購入控えしてしまう心配です。


 海外投資が国内投資にシフトするといえば聞こえはいいのですが、国民が資本家として海外企業の株主となっている流れを断ち切ってしまうのは、いかにももったいないことです(海外投資は数十年後には国内消費に回すわけで、流出するだけではありません)。


 また、「国内株式投資」が「国内債券投資」にシフトしてしまう懸念もあります。昨今の国内株価の上昇が、NISAでの国内株購入(特に成長投資枠)に流れる傾向があるといわれていますが、これを国債へシフトさせてしまうのは惜しいところです。


 これはNISA内で「枠の食い合い」が起こることを意味します。個人向け国債あるいはNISA専用国債商品が誕生したら、かなり強い力を持って、割り込んで来ることでしょう。


いずれにせよ、今後の動向を見たい

 現状として「NISAで国債」がどうなるかは分からない状況であり、実現可能性もあまり高いとは思えません。


 そもそも、現在のNISAに国債を含めなかったことには一定の合理性があります。株式投資、株式投信(100%債券運用の投信はNISAでは買えない)を通じた個人の投資に運用益非課税のメリットを与えることで、個人の投資の世界を変えてきた仕組みだからこそ、あえて国債は対象外とされてきました。


「NISAだからこそ、投資にチャレンジしてきた」という新しい世代の個人投資家が誕生してきたところに、あえて国債を割り込ませる必要があるのかは疑問もあります。NISA向け国債が「カンフル剤」となればいいのですが「劇薬」となっては困ります。


「NISAで国債」がどうなるか、今後の動向を見守りたいところです。


(山崎 俊輔)

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