2026年12月のiDeCoの限度額引き上げに続き、さらなる大改革の予兆が7月に示されました。投資助言のサービス導入についてや商品数規制の見直しといった具体策が盛り込まれています。
骨太の方針2026のその裏で「iDeCo骨太改革案」が示される?
本連載では、2026年12月の限度額引き上げを「iDeCo2.0」と銘打ち、活用方法などを解説してきました。しかし、実は「iDeCo3.0」となるかもしれない大改革の予言が7月に行われたことをご存じでしょうか。
「骨太の方針2026」が公表された同日、「成長投資を促進するための金融戦略 - 資産運用立国のアップグレード -」という資料が掲載されていました。そこでは、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)および企業型の確定拠出年金の改正を促す項目がかなり具体的に盛り込まれています。骨太の方針にはiDeCoの文字が見当たらなかっただけに、好対照です。
▼参考
内閣官房HP 新戦略策定のための資産運用立国推進分科会
もちろん、確定拠出年金法の所轄官庁は厚生労働省ですから、この資料だけで改正が実現するわけではありません。しかし、厚生労働省に対して「これこれの改正に向けた検討をしろ」と、かなり強く「圧」をかける内容となっており、その動向が注目されています。
今回は「iDeCo3.0」の予言を読み解いてみたいと思います。
予言1.投資助言サービスの導入
トウシル読者にも、iDeCoは「運用益非課税メリットを生かし、投資信託100%」と割り切って投資をしている人は多いと思います。NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を使っている人も、そもそも投資商品しか購入できない仕組みです。
しかし、「よく分からない」という理由で全額を元本確保型商品(定期預金や保険商品)に振り向けている人もいます。同資料では2割はそうした加入者であるとしています。
これはiDeCoおよび企業型の確定拠出年金の悩みの一つです。
なお、指定運用方法(運用未指図者が購入したこととなる商品)のルール見直しも検討内容に含まれており、運用判断が難しい場合も、投資信託を活用した資産形成につなげていくプロセスを確立していく流れを作る動きも見られます。投資信託でない場合の説明責任を企業や金融機関に求めるという考えです。
予言2.ロボアドバイザーなどの活用による投資一任
米国の401(k)プランでは、「マネージド・アカウント」と呼ばれる投資一任サービスがあります。具体的な商品の売り買い(といっても投資信託の売買が中心ですが)をお任せできるものです。
投資の助言が行われたとしても、実際に売買に「手を動かす」必要があり、そこで未実行にとどまってはどんな優良な助言も意味がありません。
米国では「ターゲット・デート・ファンド」も、解決策の一つとして人気です。リスク許容度の変化に応じた投資ウエートの引き下げを年齢を軸として自動的に行ってくれるものです。一つの投信を持ち続けていれば、投資割合が調整されるわけです。マネージド・アカウントはさらに個別カスタマイズが可能になる仕組みといえます。
日本ではすでに一定の普及を見ているロボアドバイザーの商品を活用すれば、個人のリスク許容度や年齢の変化などに応じた売買が可能になると期待されているようです。
これは確定拠出年金法の創設時には想定されていなかったので、どのような形で法・政省令などに盛り込んでいくかが注目されます。
予言3.商品数上限35本規制の見直し
iDeCoのラインアップがNISAと比べて限定されていることはご存じと思います。法令では35本以下に抑えることを要請しています(ターゲット・デート・ファンドは、複数のターゲット・デートが設定されても1本と数える)。
35本規制は、安易に商品追加が行われることは、むしろ一般個人の選択を難しくするという行動ファイナンスの見地を生かしたものです。
特に企業型の確定拠出年金の場合、本人が投資をしたいかどうかにかかわらず「新入社員はみんな確定拠出年金の対象」というようなケースが起こるので、投資理解が浅い人を優先した制度設計が重要視されます。iDeCoもNISAに比べれば投資初心者に寄り添う制度であるべきです。
その一方で、NISAを十分に活用できている個人にとっては35本の制約は窮屈に映ります。また、制約があるが故に、既存のファンドを除外し入れ替えるような問題も起き始めています。
本資料では、「商品ラインナップを35本以下とする現行規定を見直す」としています。
実は私は35本に規制することを議論した当事者の一人なので(確定拠出年金の運用に関する専門委員会委員を務めた)、安易な商品数増加には懸念があります。一方で、時代の変化の中で議論が必要なことは否定しません。
しかしながら、NISAと同様に100本以上の選択肢があっても、結局人気ランキング上位のファンドに偏ることは明らかで、好ましい方向性なのかは疑問があります。
本数上限規制がどう変化するか注目したいところです。
予言4.商品除外プロセスの見直し
商品本数規制がもし撤廃されれば、除外要件の見直しは不要になりますが、除外プロセスの見直しについても指摘されています。
具体的には、現在より除外要件を緩和してはどうか、という指摘です。
また、労使合意を含めて企業内で意見調整が完結できる企業型の確定拠出年金と、一般の方が全国津々浦々に口座を持つiDeCoを同列に扱うことが難しくなっていることも課題です。
除外の同意取り付けは一定のハードルとして必要だと考えますが、どのあたりまで緩和するか注目したいところです。
予言5.限度額の再引き上げ、キャッチアップ拠出の実現
本資料には、「様々な要因により一定の年代まで十分な資産形成ができない場合もあることも考慮しつつ、加入者の拠出実態や諸外国の制度、NISAとの関係等を踏まえ、あるべき拠出限度額の水準や枠組みについて、次期年金制度改革までに検討し、その結果に基づき必要な対応を図る。」という文言がありますが、これが限度額の引き上げを促しています。
また、途中にある諸外国の事例として、米国の401(k)プランが50代だけさらに限度額がアップすることを指摘しており、「キャッチアップ拠出を日本でも導入してはどうか」というメッセージとなっています。
こちらも実現すれば、月6.2万円以上の枠拡大ということになり、期待されるところです。
まとめ:実現は数年先だが、実現可能性はかなり高いか
さて、見直しの可能性をリストアップしてみましたが、厚生労働省は慎重に議論を始めたばかりで(確定拠出年金制度の運用改善等に関する有識者懇談会など)、所轄官庁の立場からすれば、一足飛びに実行を求められているような資料となっています。
一方で、厚生労働省が改正を希望しても関係各所(主に税当局)の了承が得られないケースを考えれば、内閣官房から出た文書は、改正実施の大義名分となります。
これらの見直しは、多くが法律改正を伴うと考えられ、具体的な検討は厚生労働省にバトンが渡った格好です。
法改正が必要でない箇所は、年末の税制改正大綱に載るなどして、最短で来年から可能でしょうが、これはあまり多くないと思います。
次の年金改正に合わせて議論をして法案を作るとすれば、法案が2029年、施行は2030年以降になると思われます。
いずれにせよ、「iDeCo3.0」の可能性が出てきたことを前向きに考え、動向をウオッチしていきたいところです。
(山崎 俊輔)

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