今回のお題 株としての個性に差アリな家電量販大手


 最初に質問ですが、エアコンの「2027年問題」をご存じでしょうか?省エネ基準の変更(強化)によって、来年4月以降のエアコンは大幅な値上がりが予想されるという(消費者にとっての)問題です。新しい基準を満たさない低価格モデルは製造できなくなるため、今のうちに買っておこう!という駆け込み需要がすごいことになっています。

ここで知った方は、今のうちに家電量販店へ!では、家電量販店はどこが好きですか?結構好み分かれますよね。今回、郊外・ロードサイド中心に展開する業界トップのヤマダHD(9831)と、ターミナル駅の駅前に大型店舗を構えるビックカメラ(3048)の2社の株価を比べてみます。


ヤマダHD(9831) ビックカメラ(3048)
ヤマダHD vs ビックカメラ 家電量販大手 低PBRの典型的なバリュー株か、円安でインバウンド需要獲得力のあるグロース株か

ヤマダHD vs ビックカメラ 家電量販大手 低PBRの典型的なバリュー株か、円安でインバウンド需要獲得力のあるグロース株か

 両社の株価のポイントや株価データを見ながら、双方を比較し、皆さんの相場観で購入検討するならどちらにしますか?


銘柄A:ヤマダHD(9831)

ヤマダHD vs ビックカメラ 家電量販大手 低PBRの典型的なバリュー株か、円安でインバウンド需要獲得力のあるグロース株か
出所:筆者作成 日足チャート、年初来 ※2026年8月21日現在

ここがGOOD

ダントツ低いPBRの打開策に期待

 ヤマダHDの株を買っている投資家の多くは、家電量販店株でダントツ低いPBRに着目しているのではないでしょうか?8月21日時点でヤマダHDのPBRが0.75倍なのに対し、ビックカメラは1.68倍。ノジマ1.46倍、ケーズ1.19倍…業界大手では圧倒的な低PBR株です。これは、ヤマダがこれまで数多くの企業を買収し、莫大な不動産を抱えているため。一方で、それを利益に変える効率性(ROE)が低すぎる点が問題です。ビックカメラのROEは10.9倍ですが、ヤマダHDが2.3%…。


 ただ、ROEが低いからダメではなく、低いからこそ改善に期待し、今投資するのはチャンスではないか?と考えられます。実際、物言う株主として有名な旧村上ファンド系の投資会社シティインデックスイレブンス、村上彰氏の長女である野村絢氏が、保有割合で合わせて7%超まで買い増し続けています。「PBRが低過ぎるんだから、本業と関係の薄い資産(ノンコアアセットと言います)をどんどん売却してお金を作り、自社株買いなど積極的にやって株価を上げるように!」という圧力をかけている状況です。2022年に当時衝撃的な1,000億円の大規模な自社株買いを発表しただけに、”第二のバズーカ砲”に期待がかかります。


エディオンと統合で巨大連合爆誕!

 来年(2027年)10月、家電量販大手で業界5位のエディオンと共同持ち株会社を設立し、統合を予定しています。ヤマダHDとエディオンの合算で売上高は約2.5兆円と、2位のノジマや3位のビックカメラの約1兆円を突き放す巨大連合が誕生することになります。

共同持ち株会社に2社がぶら下がる形になるため、ヤマダHD、エディオンの1株に対し、新会社の株が何株割り当てられるか?(統合比率)が最大の関心事になります。ここでも、大株主のシティインデックスなどが関与してきそうですね、「ヤマダHDに有利な比率にすべきだ!」と。


 エディオンとの統合によるシナジー効果は様々考えられます。まずは家電量販各社が力を入れているPB(プライベートブランド)の開発や販売拡大が見込めること。そして、双方が郊外型ではありますが、全国展開のヤマダと、西日本に強いエディオンで倉庫や配送面を共通化することに伴うコスト削減が期待されます。この2社の統合は、価格競争が避けられない業界だけに同業他社にとって脅威だし、同業他社間での再編の動きが発展するかもしれません。


ここが心配

短期業績だけ見れば買う理由に乏しい

 2027年のエアコン省エネ規制強化を前に、今期はエアコンの駆け込み需要(特需)が発生しています。エアコンを買いに行くついでに、他の大型家電を買うような顧客も多いようで、家電量販の業界全体でその追い風を受けています。家電の中で高単価なエアコンの販売が好調なため、家電量販店各社が粗利率を大きく改善。その中で…ヤマダHDのデンキセグメントでは、第1四半期の粗利率は小幅ながら前年同期比で低下していました。


 その理由は、エアコンが他より売れていないとかそういうことでは無く…携帯電話販売を仕入化・総額計上に変更したためだそうです。どういう意味かというと、スマホを売った際にこれまで販売手数料を計上していたのを、スマホの端末代全体を計上する方式に変えたようです。これで、売上高は大きくなるけど、粗利率は落ちてしまった様子。

結果、第1四半期の営業利益はアナリスト予想を下回り、他社が好調なことと比べたネガティブな印象が広がりました。ということで、ヤマダHDの短期業績ということでいえば、上方修正なども含めたポジティブニュースに期待薄といえます。しばらく、株主還元の強化や統合比率など”業績とは関係ないこと”を投資家は関心事にしそうです。


ヤマダHD レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
ヤマダHD vs ビックカメラ 家電量販大手 低PBRの典型的なバリュー株か、円安でインバウンド需要獲得力のあるグロース株か
出所:筆者作成

銘柄B: ビックカメラ(3048)

ヤマダHD vs ビックカメラ 家電量販大手 低PBRの典型的なバリュー株か、円安でインバウンド需要獲得力のあるグロース株か
出所:筆者作成 日足チャート、年初来 ※2026年8月21日現在

ここがGOOD

今期の業績好調!来期も…

 今26年8月期の第3四半期(25年9月~26年5月)は、純利益が前年同期比31%増の198億円と、過去最高益に。ビックカメラといえば、駅前の一等地に大型店を置くことでインバウンド需要獲得を得意としています。今期はインバウンド向けの免税売上高が伸長。さらに、業界全体のエアコン特需も獲得したほか、スマホ販売も好調でした。第3四半期時点で純利益は、通期予想の184億円を上回っており上振れ着地は確実です。


 エアコン特需に目を向けると、興味深いことが分かります。気温の上がった7月、家電量販各社の月次売上が前年同月比で大幅アップしました。その主因がエアコン特需なわけですが、全店売上高でヤマダHDが前年同月の10.9%増、西日本のエディオンが15.6%増、Joshinが14.9%増など強かったのに対し…ビックカメラは7.8%増と弱めでした(これでも通常でいえば強いですが)。


 では、ビックカメラの7月の伸びが相対的に弱かった理由はなぜか?これは、エアコン依存度が低いからです(都市型店舗のビックカメラは、白物家電よりもスマホやインバウンド向け商品の比率が高い)。ビックカメラの次の決算発表は10月9日予定ですが、本決算発表のため27年8月期のガイダンスが注目されます。

エアコン特需が与えるインパクトが大きければ大きいほど、来期はその反動が発生。来期の反動減によるネガティブインパクトは、依存度が低いビックカメラが最も小さいといえます。


優待が人気、空売り残高多い

 予想配当利回りは、家電量販店では8月21日時点でヤマダHDの2.4%とビックカメラの2.4%はほぼ同等。大手5社ではケーズHDも.2.4%で、業界平均より高いといえます。また、小売株だけに株主優待に関心が向かうことでいえば…株主優待はかなり魅力があるのがビックカメラ。


 買い物優待券(1枚1,000円)を、例えば最低投資単位の100株の場合、2月末に2枚(2,000円分)、8月末1枚(1,000円分)で、年間3,000円分貰えます。また、1年以上、2年以上と長期保有した場合の優遇もあり、仮に2年以上保有すると100株で年間5,000円分に!ここまでいけば、優待の方が配当より金額ベースでは大きくなります。


優待人気が高いと、権利月の近くで信用売り残が強烈に溜まります。直近の8月14日時点データでは、信用買い残が信用売り残の何倍あるか?を示す信用倍率が0.08倍と超絶売り長。これは、優待クロスといって、信用取引を使った株主優待の(ほぼ)タダ取りを狙うポジションの分と想定されます。ただし、それを除いても、同社株の信用倍率は1倍前後が中心と低く、株価が上がり始めると売り方の買戻しを巻き込んで上がりやすい株。少なくとも、信用買い残が多くて上値が重いという需給構造ではない株と断言できます。


ここが心配

“グロース株”扱いが定着しているゆえに…

 家電量販店株の中で、8月21日時点のPBRがダントツ低いのがヤマダHDは0.75倍(典型的なバリュー株)。家電量販店大手5社の平均は1.24倍ですが、大手5社で最もPBRが高いのがビックカメラの1.68倍です。TOPIXのバリュー/グロースの振り分け基準は、PBRになっています。それでいえば、ビックカメラは家電量販株の中の”グロース株”として扱われている株というわけです。


 バリュー株のヤマダHDは、短期業績より株主還元策に関心が集中します。一方でグロース株のビックカメラは、短期業績が株価にとってかなり重要となります。 直近でも好業績を発表しても、グロース株ゆえに期待値が高く、株価の反応も厳しいビックカメラ。10月6日に発表予定の本決算は重要イベントですが、エアコン特需の反動減も踏まえ、コンセンサスは今のところ減益予想です。今26年8月期の純利益は前期比14%増の200億円がコンセンサス(会社予想は184億円)ですが、来27年8月期は6%減の188億円になっています。着地、そしてガイダンスがコンセンサスをそれぞれ上回れるか?に注目です。


ビックカメラ レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
ヤマダHD vs ビックカメラ 家電量販大手 低PBRの典型的なバリュー株か、円安でインバウンド需要獲得力のあるグロース株か
出所:筆者作成

あなたなら、どっちを買う?

 同じ家電量販店の株でも、この2銘柄のカラーは大きく異なります。郊外型で多店舗展開するヤマダHDは、低PBRの典型的なバリュー株。一方で、インバウンド需要の獲得力で他を圧倒するビックカメラは小売株の中でもグロース株扱いですし、インバウンド需要にとって重要な円安メリット株だったりもします。


 エディオンとの経営統合比率に不透明感もありますが、アクティビストの関与による株主還元強化への期待といった思惑が短期的にも乗りやすいのはヤマダHD。

ビックカメラは優待の長期保有メリットもある好業績株。NISAを使って2年以上じっくり持つなんて投資には向いているようにも見えます。ここから買うならヤマダHDとビックカメラ、あなたならどっちですか?


銘柄投票にぜひ参加してみてください

【銘柄を投票】ヤマダHD vs ビックカメラ 家電量販大手 低PBRの典型的なバリュー株か、円安でインバウンド需要獲得力のあるグロース株か


各指標の説明 予想PER 1株当たり利益の何倍(何年分)まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。 PBR 1株当たり純資産の何倍まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。この数値が1倍を下回る企業に対し、東証は「1倍を上回るよう頑張れ」と指令を出しています。 配当利回り 今期の予想配当金ベースの利回りで、高いほど配当妙味が高いと判定します。定義はありませんが、3%以上なら配当利回りが高いと認識されています。 流動性 1日の売買代金がどれくらいあるか?(表では25日平均)を金額で表示しています。同数値が高いほど、機関投資家も大口の個人投資家もストレスなく参加できると考えられます。

(岡村 友哉)

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