血圧計や体温計などの健康機器で知られるオムロン<6645>が、M&Aを通じて健康を巡る事業領域を広げている。
傘下で産業保健・健康経営支援を手がけるiCARE(東京都品川区)は、パーソルビジネスプロセスデザイン(東京都港区)から健康診断支援事業と特定保健指導事業を2026年10月に取得し、企業向けの健康管理サービスを強化する。
オムロンは健康・医療機器メーカーの買収に加え、近年は医療データサービスのJMDCやiCAREを相次いで傘下に収め、健康機器から健康データ、企業の健康管理へと事業領域を広げてきた。
業績悪化を受けて進めた構造改革を2025年9月に完了し、成長投資へ軸足を移しており、M&Aを使った事業拡大の動きはさらに広がりそうだ。
iCARE、健診支援事業を取得
iCAREが譲り受ける健康診断支援事業は、複雑な人事制度や業務プロセスを持つ大企業に対するきめ細やかなカスタマイズ対応を強みとしており、今回の取得で大企業や単一・総合健康保険組合向けの健診予約代行への対応力を強化する。
iCAREはこうしたノウハウを取り込み、拠点が分散する企業や従業員の状況に合わせた健診メニューを必要とする企業への対応を広げる。
同時に特定保健指導事業にも参入し、企業と健康保険組合の連携を強化することで、従業員の生活習慣病や重症化の予防、医療費の適正化への貢献を目指す。
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今後のM&Aは制御機器を優先
一方、オムロンは健康分野で事業領域を広げながら、今後のM&Aでは主力の制御機器事業を優先する方針だ。
構造改革の背景には、2024年3月期に営業利益が前年度比65.9%減と大幅に悪化したことがある。
オムロンは業績の立て直しと収益・成長基盤の再構築に向け、2024年4月から2025年9月まで構造改革を実施した。
制御機器事業の立て直しやポートフォリオの最適化、人員数・能力の最適化、固定費生産性の向上などを進め、2025年9月末に一連の構造改革を完了した。
こうした構造改革を経て、2026年5月に公表した2026年3月期の決算説明資料では、今後のM&Aを制御機器領域で実行する方針を示した。
制御機器事業に関わるAI(人工知能)やデータセンターの需要拡大に伴う半導体関連投資や、EV(電気自動車)の普及に伴う二次電池関連投資の拡大が見込まれるためで、2027年3月期~2031年3月期の5年間の成長計画では、制御機器事業を重点投資先に位置付けている。
同期間では1兆500億円の投資原資を想定し、このうち約80%に当たる8000億円を事業再投資に充て、その約半分を制御機器事業に振り向ける。
M&Aの投資枠は明示していないが、顧客基盤の強化を目的とする案件を特に重視する方針だ。
買収と売却で事業構成を入れ替え
オムロンはこれまでも、成長領域をM&Aで取り込む一方、非注力領域を売却し、事業構成を入れ替えてきた。
2015年には米国の産業用ロボットメーカーのAdept TechnologyをTOB(株式公開買い付け)で子会社化し、2023年には医療データサービスのJMDCをTOBで子会社化した。
2025年12月には傘下のオムロンヘルスケアが、血圧計の腕帯などを製造する松屋アールアンドディを完全子会社化するTOB方針を発表し、2026年6月にTOBが成立した。
一方、2019年には車載電装部品メーカーのオムロンオートモーティブエレクトロニクスを日本電産(現ニデック)に売却し、2021年にはMEMS事業(微小な機械部品と電子回路を一体化したデバイス)をミネベアミツミ傘下のミツミ電機に譲渡した。
2026年3月には、電子部品事業を米投資ファンドのカーライル・グループに譲渡することを決めた。
こうした案件からは、オムロンが事業ポートフォリオの組み替えを進め、制御機器を中心とする成長投資に軸足を移しつつあることがうかがえる。
売上高の半分超を制御機器が占める
オムロンの2026年3月期の継続事業の売上高は7673億5100万円で前年度比7.3%増、営業利益は599億3500万円で同12.1%増と、増収増益だった。
部門別では制御機器事業が売上高全体の53.4%を占め、ヘルスケア事業が18.9%、社会システム事業が18.8%、データソリューション事業が6.7%だった。
M&Aの重点先となる制御機器は売上高の半分を超える最大事業で、2026年3月期は生成AI関連の設備投資需要が堅調に推移したほか、各地域の顧客ニーズに対応した新商品の投入効果もあり、売上高が前年度を大きく上回った。
売上高構成比が6.7%だったiCAREが関わるデータソリューション事業については、他部門のデータ活用型サービスも含めたデータサービス事業全体で、全社売上高に占める比率を2025年3月期の8%から2031年3月期に15%まで高める目標を掲げている。
オムロンはネブライザ(吸入器)を開発、生産するイタリア企業の買収などを通じて、ヘルスケア事業を広げ、さらにJMDCやiCAREを取り込むことで、健康データや企業の健康管理へと事業領域を拡張してきた。
今回のiCAREによる事業取得で企業向け健康管理サービスをさらに広げる一方、全社のM&Aでは売上高の半分超を占める制御機器を優先し、顧客基盤を強化する案件を狙う。
構造改革で収益基盤を立て直したオムロンは、今後、健康を巡る事業領域の拡大と主力事業への成長投資を並行して進める局面を迎えることになりそうだ。
文:M&A Online記者 松本亮一

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