FRB議長のタカ派発言により、米国の早期利上げ観測が強まっています。例年9月は米国株のパフォーマンスが最も悪化する月として知られていますが、利上げ懸念や大型IPOによる需給悪化なども想定すると、今年も同様の展開となるでしょう。

また、配当・優待権利取り月でもあり、高配当利回り銘柄などへの資金シフトは進む公算です。


利回り4.8%超!出遅れ感強い「高配当・内需」厳選5銘柄の画像はこちら >>

米国の早期利上げ懸念後退などを背景にリバウンド基調へ

 8月(7月31日終値~8月28日終値)の日経平均株価(225種)は3.2%の上昇でした。7月29日の6万0,448円を底にリバウンドが続き、8月14日には一時6万9,608円まで上値を伸ばしました。その後、7万円大台を前に失速し、8月25日には一時6万4,609円まで下落しましたが、25日移動平均線を下値支持として意識、月末にかけ下げ渋っています。


 なお、8月28日までの7営業日、前日終値比で1,000円以下の騰落幅となっており、これはゴールデンウイーク明け後では最長となります。


 8月は日米協調介入を受けた円高反転下でスタート。米国や韓国の半導体株の上昇を手掛かりにして、人工知能(AI)・半導体関連株が反発を強める動きとなりました。雇用統計の下振れ、消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)などインフレ指標の落ち着きを受けて、米国の早期利上げ懸念が後退したことも買い材料につながりました。


 その後は一時、連日のストップ安に見舞われました。トランプ米大統領がイランとの覚書の延長を求めていないと発言し、中東情勢の先行き不透明感が再燃する形となったほか、日米での長期金利上昇が警戒感を強めさせる形となったようです。


 また、月末にかけ、注目された米エヌビディア(NVDA)の決算が発表されました。想定通りの好決算発表後に株価は買いが先行となり、効果は限定的であったものの、東京市場のプラス材料につながったようです。


 この期間、銅や金などの非鉄市況上昇を映して、三菱マテリアル(5711)、住友金属鉱山(5713)、AREホールディングスグループ(5857)、日鉄鉱業(1515)の非鉄関連株が25%以上の上昇となりました。


 また、4-6月期の決算発表が本格化する中、ヤマハ発動機(7272)、リクルートホールディングス(6098)、セイコーグループ(8050)、カシオ計算機(6952)は好決算の発表が評価材料となりました。


 一方で、メック(4971)、扶桑化学工業(4368)、リガク・ホールディングス(268A)、TOWA(6315)といったAI関連の中小型株が、下落率の上位に多くなっています。ファナック(6954)、富士フイルムホールディングス(4901)は決算内容がマイナス視され、DMG森精機(6141)は増資発表による株式価値の希薄化が売り材料となりました。


AI・半導体株のリバウンドの持続性が焦点に

 ジャクソンホール会合において米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長は、「基調的なインフレ率が、十分な速度で明確に目標へ向かっているという確信を持てないなら、まだやるべき仕事がある」と発言しました。


 FRBが重視するインフレ指標、個人消費支出(PCE)価格指数は直近で前年比3.7%の上昇、FRBの目標とする2%を大きく上回っており、早期の利上げ観測が高まる状況となっています。


 雇用統計の下振れ、CPIやPPIなどインフレ指標の落ち着きを受け、利上げ観測は後退していましたが、そうした見方は一変する形になっています。


 米国株の月別騰落率を見ると、9月のパフォーマンスは最も悪化しやすくなっています。長期的な平均騰落率では、12カ月の中で唯一、パフォーマンスがマイナスとなっています。米国の利上げ観測が強まっていること、中間選挙が接近して様子見ムードが強まりやすいことなどから、今年も例年の傾向が当てはまる可能性は高いと考えられます。


 さらに、過去最大の株式の新規公開(IPO)となる米アンソロピックの上場も早ければ9月に行われる見通しです。IPO資金流出のための換金売り圧力など、今後は需給の悪化も想定される状況です。


 米国株の先行き懸念が強まる状況となれば、連動性が意識される国内のハイテク株などには買い手控えムードが強まりやすいでしょう。グロース株からバリュー株へと短期的には資金のシフトを強めたいところです。

とりわけ、9月は、3月期決算、9月期決算の配当・優待権利取り月となるため、よりバリュー株優位の見方は強まるでしょう。


 9月15~16日にかけては、米連邦公開市場委員会(FOMC)が、17~18日にかけては日本銀行金融政策決定会合が開催される予定です。円安基調に変化が見られず、ドル売り・円買いの協調介入も実施している中、日本銀行の9月追加利上げの可能性は極めて高いと考えられ、これも国内株式市場にとっては逆風となるでしょう。


 特に植田和男日銀総裁の会見(18日)の後は5連休となることから、9月中旬にかけてはポジション整理のための換金売り圧力などに注意が必要となってきます。


 9月相場はやや厳しめの展開が予想されますが、逆に言えば、9月の調整場面は中期的な買い場になるということもできます。この点に焦点を当てれば、大型連休明け後はAI・半導体関連株の押し目買いを探る場になるでしょう。ちなみに9月下旬は、習近平中国国家主席の米国訪問も予定されています。


9月末配当権利をにらんで高配当利回り銘柄の押し目買いに注目

 9月は米国株のパフォーマンスが最も悪化しやすい月として知られていますが、ここにきて米国の利上げペース加速化も想定されつつある中、今年も同様のパターンが踏襲される可能性が高まっていると考えます。


 9月末は3月、9月決算企業の配当権利月ともなるため、現在はバリュー株を志向するタイミングといえるでしょう。高値からは調整が進んでいる9月末高配当利回り銘柄の押し目買いに注目したいところです。中でも、日本銀行の利上げも近く接近しているとみられ、為替介入の思惑も併せ、円高反転の流れも想定されます。より内需系銘柄に買い安心感が強いといえるでしょう。


(表)出遅れ感強い内需系の9月末高配当利回り銘柄 コード 銘柄名 配当利回り
(%) 8月28日
終値
(円) 時価総額
(億円) 年初来高値比
騰落率
(%) 海外売上高
比率
(%) 7148 FPG 5.54 1,673.0 1,402 ▲23.99 0.0 8584 ジャックス 5.19 3,850.0 1,734 ▲13.77 11.0 6417 SANKYO 4.95 2,021.5 4,649 ▲22.83 0.0 1878 大東建託 4.83 3,353.0 11,554 ▲12.86 0.0 8871 ゴールドクレスト 4.81 3,325.0 1,189 ▲13.64 0.0 注:配当利回りは会社予想ベースの9月末配当金を年換算したもの
注:決算期はFPGが9月、他はすべて3月
注:ゴールドクレストはスタンダード市場、他はプライム市場上場
注:▲はマイナスを示す 銘柄選定の要件
  • 予想配当利回りが4.0%以上(8月28日時点)
  • 9月末配当金(会社計画)を年率換算した配当利回りが4.0%以上(8月28日時点)
  • 時価総額が1,000億円以上(8月28日時点)
  • 決算月が3月、9月
  • 年初来高値からの下落率が10%以上(8月28日時点)
  • 海外売上高比率が50%未満
  •  楽天証券のスーパースクリーナーにおいて、上記要件で絞った銘柄を抽出しました。

    そこでリストアップされた銘柄群の中から、年率換算した配当利回りの高い5銘柄を取り上げています。


    厳選・高配当銘柄(5銘柄)

    1 FPG(7148・東証プライム)

     オペレーティング・リースを手掛けるリースファンド事業、国内・海外の不動産ファンド事業が主力事業で、リースでは、航空機リース、コンテナリース、船舶リースなどを手掛けています。不動産小口化商品については、2027年の税制改正以降も一定の圧縮効果継続で、相続対策としての有用性も維持される見通しとしています。


     2026年9月期第3四半期(2025年10月‐2026年6月期)営業利益は176億円で前年同期比8.6%減となっています。税制改正大綱の影響から国内不動産ファンド事業の販売がまだ回復途上にあったもようです。


     2026年9月期通期では、231億円で前期比8.9%減を見込んでいます。税制改正大綱の公表に伴って、3月に下方修正した数値を据え置いています。


     2026年9月期年間配当金は92.70円(3月末46.35円、9月末46.35円)を計画しており、前期比では37.70円の減配を見込んでいます。配当性向50%を目安としていることで、純利益の減益予想が減配見通しにつながっています。国内不動産事業の販売額は直近で順調に回復しているため、2027年9月以降の一段の減配懸念は限定的といえるでしょう。


     2025年以降の株価騰落率では、時価総額500億円以上で配当利回りが3%以上ある銘柄の中で最も低水準にあるといえ、株価の出遅れ感は極めて顕著ともいえます。なお、2023年9月末の実施を最後に株主優待制度は廃止しています。


    2 ジャックス(8584・東証プライム)

     MUFGグループの大手信販会社です。いち早くキャッシングの上限金利を利息制限法内の18%以下に引き下げるなど堅実経営で知られています。

    現在、クレジット事業における追加利上げやカードにおける各種手数料の引き上げなど、収益向上策を進めています。


     2027年3月期第1四半期(2026年4-6月期)営業利益は60億円で前年同期比4.1%減となっています。インドネシアを中心とする海外営業収益の減少、国内の調達金利上昇による金融費用の増加などが減益要因となります。


     2027年3月期通期では110億円、前期比46.1%減を据え置いています。金融費用の一段の増加などを想定していますが、第1四半期の段階で上期計画は超過しているため、上振れ余地は大きいと考えられます。インドネシアの赤字も着実に減少してきています。


     2027年3月期年間配当金は200円(9月末100円、3月末100円)を計画しており、前期比では横ばいを見込んでいます。配当政策としては、株主資本配当率(DOE)3.0%、配当性向40%を目安にいずれか高いほうという方針であり、この配当方針は、5月に中期経営計画を見直した際にも据え置いています。


     2027年3月期配当金計画はDOE3.0%の水準であり、2028年3月期以降の減配の可能性も低いとみられます。なお、株主還元は配当金による利益還元に注力するとして株主優待制度は実施していません。


    3 SANKYO(6417・東証プライム)

     パチンコ・パチスロ機の大手メーカーです。1980年に開発したパチンコ機「フィーバー」が大ヒットするなど、開発力の高さに定評があります。パチンコ機販売台数は4期連続でトップシェアとなっているもようです。

    キャッシュリッチ企業とも位置付けられます。


     2027年3月期第1四半期(2026年4-6月期)営業利益は104億円で前年同期比56.0%減となっています。パチンコ機、パチスロ機ともに販売台数が減少したことが要因ですが、おおむね計画通りの進捗(しんちょく)のようです。


     2027年3月期通期では560億円、前期比10.4%減を計画しています。パチンコ機では「eフィーバー機動戦士ガンダムSEED クライマックス」の投入とともに複数タイトルの増産対応を予定、パチスロ機でもヒットタイトル第2弾「Lパチスロ からくりサーカス2」を含む新規2タイトルの投入を予定、収益回復を目指します。


     2027年3月期年間配当金は100円(9月末50円、3月末50円)を計画しており、前期比では10円の増配となります。第1四半期決算発表時に配当方針の変更を発表、それに伴い、従来計画の80円から引き上げています。


     新たな配当方針は、配当性向50%またはDOE5%のいずれか高いほうとし、下限配当はDOE5%で原則期初配当予想としています。業績が上振れた場合は期末配当で調整するとしています。


     これまでは、配当性向40%方針で、下限配当は20円でした。株主優待は、3月末、9月末の500株以上保有株主が対象、群馬県高崎市にあるゴルフ場「吉井カントリークラブ」で利用できる優待券を贈呈しています。保有株数、保有年数によって、提供枚数、無料券贈呈の有無などが異なってきます。


    4 大東建託(1878・東証プライム)

     賃貸建物の設計・施工を行う建設事業、建設した賃貸建物の管理・運営代行などを行う不動産事業を展開しています。家賃ベース入居率は業界トップクラスの高水準となっています。7月にはTHEグローバル社を完全子会社化しています。


     2027年3月期第1四半期(2026年4-6月期)営業利益は393億円で前年同期比15.5%増となっています。建設事業における粗利益率の上昇、不動産賃貸事業における一括借上事業の大幅な拡大などが主因となっています。


     2027年3月期通期では1,420億円、前期比5.0%増を据え置いています。受注減少などで建設事業の売上高は減少見込みですが、粗利益率の改善などは継続する見通しです。また、THEグローバル社の買収や合併(M&A)効果は上乗せ要因につながるとも考えられます。


     2027年3月期年間配当金は163円(9月末81円、3月末82円)を計画しており、前期比では実質12.6円の増配となります。配当性向は50%をめどとしており、2027年3月期は6期連続での増配見通しとなっています。


     また、会社側では自己資本利益率(ROE)20%を重要な経営指標として認識しているもよう。現在実施予定はないものの、機動的な自社株買い取得などが行われることも想定されます。なお、株主還元は配当に注力するとして、株主優待制度は2022年9月を最後に廃止されています。


    5 ゴールドクレスト(8871・東証スタンダード)

     首都圏を地盤としたファミリーマンションの開発・分譲会社です。ハイグレードマンションにこだわり、「CREST」ブランドで展開しています。保有不動産の賃貸やマンション管理などのストック事業も行っています。自己資本比率は40%超と好財務体質になっています。


     2027年3月期第1四半期(2026年4-6月期)営業利益は88億円で前年同期比2.3倍の水準となっています。江東区の事業用地売却益86億円が計上されており、大幅増益の主因となっています。


     2027年3月期通期では159億円で前期比78.5%増を見込んでいます。第1四半期末の高水準のマンション契約残高から、業績計画に向けた案件は確保できている状況と想定されます。なお、物言う株主とされているストラテジックキャピタルが大量保有、株主提案なども行っています。


     2027年3月期年間配当金は160円(9月末80円、3月末80円)を計画しており、前期比では60円の増配となります。配当政策としては、安定した利益配当を実現することを基本方針としており、配当性向の目安などは公表されていないとみられます。


     こうした中、2027年3月期の増配幅はこれまでにない大きさであり、還元姿勢の変化とも捉えられるでしょう。予想配当金を基にした配当性向は56%の水準となります。なお、公平な利益還元のあり方という観点から、2022年3月を最後に株主優待制度は廃止しています。


    (佐藤 勝己)

    編集部おすすめ