ヘリと飛行機、相反する能力を1機でこなす謎

 滑走路がなくても垂直に離着陸でき、空に上がれば飛行機のように速く遠くまで飛んでいく。そんな一風変わった航空機がV-22「オスプレイ」です。

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 基本的に、垂直に飛び立てるのはヘリコプター、速く飛べるのは飛行機と、役割は分かれています。ところがV-22は、その両方の能力を1機でこなしてしまいます。

 その秘密は、左右の主翼の先についた大きなプロペラのような回転翼にあります。これは「プロップローター」と呼ばれます。オスプレイでは、このプロップローターと、エンジンなどを収めた「ナセル」が一体となって、飛行中に角度を変えるのです。

 離着陸のときは回転翼を真上に向け、ヘリコプターのように機体を持ち上げます。そして空に上がると、今度は回転翼をゆっくり前へ倒し、推力を前方へ向けることで飛行機のように高速で飛べるようになります。この切り替えこそが、オスプレイ最大の特徴です。

 真上を向いた状態が「ヘリコプター・モード」、前を向いた状態が「飛行機モード」であり、このようにローターを傾けて飛行モードを切り替える航空機を「ティルトローター機」と呼びます。

 離陸時はヘリコプター・モードで垂直に上昇し、十分な高さと速度を得たところで、回転翼を少しずつ前方へ傾けていきます。やがて完全に前を向くと、飛行機モードへの切り替えが完了します。この移行中の状態は「転換飛行」と呼ばれます。

 では、なぜわざわざ角度を変えるのでしょうか。そこには、ヘリコプターが抱える「速度の壁」が関係しています。

ヘリコプターが抱える「速度の壁」を打ち破れ

 ヘリコプターは、頭上で回るローターで「浮く力」と「前へ進む力」の両方をまかなっています。ところが前進速度が上がると、前へ進む側と後ろへ戻る側のブレードで発生する揚力の差が大きくなります。そのため、多くのヘリコプターは飛行機のような高速巡航が苦手なのです。

ヘリの弱点「速度の壁」どう越えた? 唯一無二「オスプレイ」の画期的なカラクリとは?
海上自衛隊の護衛艦「いずも」に着艦した陸上自衛隊のV-22(画像:陸上自衛隊第1ヘリコプター団)

 そこでV-22は、役割を分担させました。速度が乗る飛行機モードでは、機体を支える揚力の大半を左右の主翼が受け持ち、回転翼は主に前へ進むための推力を生み出します。こうしてヘリコプターの速度の壁を越え、巡航速度240ノット、時速にしておよそ440km/hという高速飛行を実現しているのです。

 その性能差は数字にも表れています。米海兵隊の公表値では、V-22の巡航速度は240ノット、自力展開距離(自己展開時)は2100海里(約3900km)とされています。従来の輸送ヘリコプターより速く、遠くまで飛べることが、V-22の大きな特徴なのです。

 垂直に離着陸できる柔軟性と、飛行機に近い速さや航続力。

この両立により、滑走路を使いにくい場所への輸送や、遠距離への部隊展開に使いやすいことが、軍用機としての強みとなっています。

 なお、こうした機体は、ヘリコプターとも飛行機とも違う独自の存在です。アメリカの航空規則では、垂直離着陸や低速飛行ではエンジンで動く揚力装置やエンジンの推力に主に頼り、水平飛行では固定翼で揚力を得る航空機を「パワード・リフト」と定義しています。

 つまりV-22は、ヘリコプターでも飛行機でもない「ティルトローター機」という独自のカテゴリーの航空機であり、両者の長所を組み合わせるために生まれた機体といえるのです。

 次にV-22を見かける機会があれば、ぜひあの翼の先に注目してみてください。離陸から加速へ移るとき、回転翼とナセルが少しずつ前へ倒れていく様子が見られるかもしれません。

【機長はドッチに座る?】これが「オスプレイ」の機内です。操縦席も(写真)

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